わたしの心に飛び降りて

over extended.

「おはよう」

「おはようございます」

「ごはん、できてるよ」

「いただきます。でもその前に」

「ん」

「んう」

「キス大好きだね？」

「あなたのくちびるも、わたしの大好物だから。あらためまして。いただきます」

「どうぞ」

「さて。俺は資料整理のために勉強するかな」

「大丈夫よ。あなたなら勉強しなくたって簡単だから」

「なんせ俺は、きみが一ヶ月かかった単位取得を一週間でこなした男だからな」

「いつの話をしてるのよ」

「飛び降りてさ。屋上から」

「あなたが勝手に思春期のアンビバレンスこじらせてただけでしょ。テレビつけていい？」

「どうぞ。通販は俺も見るし」

「勉強してなさいよ」

「勉強しながら見るんだよ。正義の味方は手も動かすし目も動かす」

「ん。う」

「口まで動かすのはむずかしいなあ」

「できたじゃない」

「同時に勉強してテレビ見てキスする人間なんて、俺ぐらいだと思うよ？」

「おいしい。ごはんも、あなたも」

「それはよかった」

　彼は正義の味方で。高いところから降りるのが好き。

　わたしも正義の味方で。通販で買い物するのが好き。

　そしてお互いに。

　大好き。