星屑の星

トマトと鳩と馴鹿の煮込み物

第1話

ふと、授業中の窓から空を見た。

緑と青色の混じった空がどこまでも広がる不思議な光景。


ここはかつて地球と呼ばれた惑星では無い。


あの星はかれこれ100年前に宇宙人によって支配された。人類は無様にも星間戦争で負けたのだ。

そして今は伝説となりつつある科学者シリウスによって開かれたゲートを越えこの「新天地」にたどり着いた。

まあ、その人はその後…


「おいユウト!授業に集中しろ」


筋肉の塊みたいな先生からチョークが投げられる。半分考え込んでいた俺は避けられず見事に額に命中。絶妙な威力のチョークに悶絶する。


「おいおい情けないな最弱オールパーフェクト様よぉ」


隣の鈴木がニヤニヤ行ってくる


「うっせえ。強いのは能力だけだ。素手の喧嘩でお前らに負けるよ」


ネバーランド高等学校。

新天地最高クラスの学校だ。

その中でもここ《魔法科学科》は更にその上澄みの上澄み、魔法、科学を十代にして極めた者達のみが来ることを許される場所。

普通ならひょろひょろや陰キャ、もやしばっかなのに隣の鈴木はゴリラだ。なぜはいれたのだろう。


「てかユウト。お前もう単位持ってるわけだし出席したから帰っていいぞ」


先生が言ってくる。教師としてそれでいいのか


「あ、もししたら来い」


「了解ですよっと。じゃあなお前ら。真面目に勉強しろよ〜?」


ブーブーと羨ましそうなそれでいて妬ましそうな顔でクラス中から見られつつのんびりと教室を出た。




━━━━━━━━━



屋上の風切り音に混じって扉の開く音が聞こえる。


「なにやってんの?」


「昼寝」


声の方を見るとポニーテールの雇い主、優花がいた。


「あ、そう。私もそうするわ」


「はいはい」


暖かな日差しの中適当に昼寝する。


「ねえ」


「ん?」


「第23区が堕ちたって」


「へー」


「随分淡白ね。周りは騒いでるってんのに」


この新天地は100の区域に別れて

だがかつて人類を救った英雄は敵に回り、宇宙人は彼の作ったゲートを越え攻めてきている。残る区域はあと40ちよっとか。

まあ関係のない話だが。


「ねえ」


「ん?」


「なんで宇宙人を滅ぼさないの?出来るでしょ。さっきと滅ぼせばもっと多くの人が生き残ったかもしれないのに」


「なんで、か。別にどうでもいいからかな。勝手に戦争しかけて勝手に負けて勝手に逃げてた奴らを助ける気にはならんのだよ」


「そう。まあ私もどうでもいいわ。戦争なんかよりも今の昼寝の方が大切だし」


「それもそうだ」


ただ激しい風切り音の中、雲が流れる様を眺めるだけの時間が続いた。




━━━━━━━━




「こっちにも攻めてきたか」


「気がつくのは早いわねぇ相変わらず」


伸びをしつつ校庭の方を見る。ロボットに乗ったイグアナみたいなやつがゲートを開き大量にUFOから降りてくる。クラスメイトも何人か戦ってる。おーぶっ飛ばされてるな


『こちらアキマル。おいユウト早くこい。戦線が持たないぞ』


「行かないの?」


「行く必要ある?」


「まあ多少は。じゃあ命令するわ。《敵を殲滅しなさい》」


『力』のこもった言葉を優花が喋る。レイジストも容易だがあえてせず、なされるがままになる。


「具体的にどんなのがご所望で?」


「味方の目の前で殺しなさい」


「了解」


ニヤリと笑い、起き上がる


「じゃあ行くぞ。落ちるなよ」


手を掴み、言葉に力を込める。


「ひゃっ」


《Command./3.abj.jump》


その一言で俺らは戦場のど真ん中に降り立つ。


「やあ皆元気か?」


「apmgyrmhgmgmpddu" 」


「おいユウト遅いぞ!」


鈴木がボロボロになりながら叫ぶ


「ヒーローは遅れてくるもんだろ?」


適当にイキっておく。


「おいおいなんだよこのガキ。ヒーローって馬鹿かよ。早く宇宙人様に忠誠でも誓っとけ」


なんか宇宙人の間から人が出てきた。


「必要ないことはしない主義なんでな」


「はっ!どんな戦い方でも俺達には叶わん!」


イキってる馬鹿はなにがするらしいが遅い。


「そうか《Command./13.abj.Death》」


それだけで宇宙人は爆ぜた。

俺の能力は事象変換。《さーばーかきかえ》

言葉1つで世界の事象は一変する。


「じゃあ俺は帰る」


「おい!待てよ!なんで最初っから来なかった!お前が最初から来れば死人は出なかったのに」


「は?馬鹿かよ。じゃあなんでお前は鍛えてるんだ?魅せるためか?俺がいればいいならお前らは存在する価値はない」


「っ...」


「じゃあな。《Command./3.abj.jump》


「ユウトあれはさすがに...」


「言っただろう?俺からすれば宇宙人も人類も同じく平等だ。なんたってここは俺のサーバーなんだからな」


「だからって...あれは...」


定点カメラから見る男達は嘆いき悲しんでいる。中にはもちろん鈴木の姿もあった。


「はぁ…相変わらずさんは趣味が悪いわね」


「そりゃそうだ。どうせこの後リアルでも宇宙人に戦争ふっかけるんだ。こうなるだろうよ」


「だいたいなんのためにこんなサーバ建てたの?」


「そりゃ...」





「昼寝のためさ」

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星屑の星 トマトと鳩と馴鹿の煮込み物 @Hatomato_0101

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