少年の、人間の、変わる外見と変わらない心。

 こちらの作品は、その外見から忌み嫌われ周囲から疎ましく思われていた少年に、自分とは正反対の上流階級の少女と出会ったことから様々な変化が生じていくという物語となっている。(以下若干のネタバレあり)

 結論から言うと、この物語は決して綺麗な「御伽噺」ではない。私がタイトルとその冒頭の内容から想像した内容は、少年が活発な少女と出会い人の温もりに触れ成長していくというようなものだったが、確かに終盤まで物語はそのように進んでいた。しかし突如描かれたエンディングは、そういったサクセスストーリーとは全く無縁の、人間の欲望が生んだ最後だった。押さえつけられていた少年の長年積み重なった歪んだ思想が、なんでも願いが叶うという状況においてただそのまま発揮されただけで、それはごく自然なことなのだと。それは私に、描写される少年の行動は少女によって確かに変わったが、少年の内面、心は超常的な欲望の前では大して変わっていなかった、つまり人間は、その外見はちょっとしたきっかけで変えられても、長年積み重なったその内面までは簡単に変えることはできないということを暗示しているかのように感じさせた。
 このような独特なタッチで描かれる小説は作者の特徴が色濃く反映されるもので、この作品でも作者様にしか描けない奇妙さや不可解さを、風景描写や心理描写から作り出すことができていると感じたので、これからの作者様の作品も非常に楽しみとなりました。
 さてこちらの作品、読む人によって異なる驚きと考察をもたらしてくれるような短編小説となっておりますので、そういった不可解な物語、ただのハッピーエンドが好みではないという方にはぜひ読んでいただきたいものとなっております。今回は作者様に見事に困惑させられたため☆3とさせていただきます。ありがとうございました。