第1章 魔法少女が見ている夢。10話
今日も2人は並んで歩く。
平和な日々はずっと続いていて。
穏やかに時間は過ぎていく。
みちるは魔法少女に変身するけれども。
ほとんどは人助けのためで。
今ではあさひもその手伝いをしている。
あさひ「平和だな」
なんとなくという感じで。
暖かな日差しを感じながら。
あさひはつぶやく。
あさひ「ずっと、ずっと」
あさひ「こんな日が続いてる気がする」
へちる「……?」
あさひの言葉にへちるは首をかたむける。
へちるにとっては……。
この世界の人にとっては……。
それはごく当たり前のことだから。
あさひ「ここ意外にも世界はあって」
あさひ「そこには嫌なことがたくさんあるって」
あさひ「ドミドゥが言ってたんだ」
少し前に聞いたこと。
あさひはずっと気になっていて。
もしかしたら……。
と思うこともあった。
へちる「嫌な……こと……って?」
あさひ「喧嘩とかいじめとかがあって」
あさひ「それに誰かが死んだりすような」
あさひ「そんな世界」
へちる「えっと……それは……」
へちる「小説の中……とかって……意味じゃなくて……?」
あさひ「うん」
あさひ「ここは夢のような世界だって」
夢のような世界。
なんだか凄く印象に残っている言葉で。
その言葉のせいで。
目の前の景色がふわふわと見えてしまっている。
へちる「でも……ここが……凄く……平和だから……」
へちる「それで……いいんじゃ……ないかな?」
あさひ「まぁそうなんだよな」
世界はたくさんあって。
ここじゃない世界はこことは違う。
ただ、それだけのこと……。
そう納得もできる。
あさひ「それにドミドゥが言ってることも」
あさひ「本当のこととも限らないしな」
へちる「うん……」
へちる「ドミドゥ……は……」
へちる「時々、いじわるなこと……言うから……」
あさひ「そんな感じだよな」
へちる「うん……」
へちる「でも……悪い子じゃ……ないよ……」
あさひ「それも分かる」
ドミドゥは口が悪かったりする。
でも、少し話しただけで。
悪いことを考えるような存在ではないことは分かる。
へちる「えっとね……」
へちる「たくさんの世界がある……かもだけど……」
あさひ「うん」
へちる「わたしはね……こうやって……」
へちる「あさひくんの……隣に入れて……」
へちる「幸せ……だよ……」
あさひ「それは俺も同じ」
へちるとは昔からずっと一緒で。
当たり前の存在ではあるけれども。
だからといって当たり前にいるわけじゃない。
それはこの世界についても同じで……。
ドミドゥはそういうことを言いたかったのかもしれない。
そうあさひは思いたかったのだけれど……。
あさひ「…………」
その日は珍しく一人で帰宅していた。
魔法少女たちは集まって何かをするようで。
あさひもそれを手伝おうとしたが……。
ドミドゥ「オマエハサキニカエッテロ」
そう言われたので帰ることにした。
1人で帰るといっても普段と変わりはなく。
ぼんやりとしたまま歩いていた。
あの家を見るまでは……。
あさひ「やっぱり気になるんだよな」
そうひとりごとを言いつつ。
あさひは足を止めて例の家を見る。
何度見ても普通の家にしか見えずに。
へちるはその存在を意識していないみたいで。
まるで見えていないような印象さえ受ける。
それでもあさひは気になっていて。
あの扉の向こうに何か大事なものがあるように思えるし。
なんだか夢の中にいるような。
ふわふわとした気持ちの正体を知ることができるかもしれない。
ドミドゥの言葉の本当の意味を知ることができるかもしれない。
そんなことを考えてしまい。
さらに気になってしまっている。
あさひ「……誰か住んでるのかだけでも……」
1人だったらそのまま通り過ぎていた。
しかし、今は1人。
あの家を調べるには今が一番いい気がした。
あさひ「行ってみるか……」
あさひはつぶやいた。
あの扉の向こうに。
何があるのかを知りたくなったから。
そして……。
ドミドゥはあさひにそうさせたかったのだと。
一歩目を見踏み出した時に気がついた。
魔法少女が見ている夢は? 原口もとや @ismotoya
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