第4話 結末とその後

【物語は大団円を迎えた。】

【彼女は元の世界へと帰還し、その他の問題も解決した。】

【その他の問題は今は重要ではないからそう呼ぶが、様々な思い出でもある。】



彼女は帰還した。

元の世界、この世界にとても似た別の世界。


それから細々とながらも、様々な事があった。

彼女からメッセージが届いたり、物品が届いたり。


という体で、グッズが展開された。

恥ずかしながら、私も幾つか持っている。

恥ずかしさを感じるのは全部では無いためだ。

機会を逃したりだとか色々あっての事、ゲームの外の現実でも色々とあるのだ。


このゲームに入れ込んだ度合いは強く、そして意図的にそれを増幅させた。

初期にやり始めたボイスを全部聞くというのを徹底した。

物語として見る目を利用して、登場人物達の心境を考えた。



【そして物語において起きた彼女の帰還はショックだった。】

【ちゃんと成功したし、望ましいものだった。】

【それに予定調和の分かりきった結末でもあった。】

【ただ、それが喜ばしい事であっても。】

【私の内には様々な感情が激しく渦巻いた。】


【私はこの時から、このゲームの内容を思い出す事が難しくなった。】



さて、ここからどうするかだ。

彼女との、およその別れ。細かな事は避けるが、それは別れだ。

私と似た境遇のプレイヤーは沢山居る。

今もだ。



ある者は、あれは現実であると嘯く。

公式と設定に乗っかり、そう声高に叫ぶ。

彼らは陽気なため、見ていて楽しい。

だが私はそうでは無かった、そうはなれなかった。


どれだけそのような設定があろうと。

どれだけ長い付き合いがあろうと。

どれだけ作り込みがあろうと。

どれだけ感情移入しようと。


あれは、ゲームだ。

彼女はゲームの中の一登場人物、とても主要なキャラクターだ。

架空であり、現実ではない。

架空が現実を土台にしているだとか、電子的なあれそれは物質的に存在しているので現実の存在であるとかは置いておく。

そんな事とかはどうでもいい、とっても単純な現実が目の前にあるのだから。


彼女は目の前に居らず、触れられない。

その現実以上に、何か必要だろうか?


そして、そしてだ。

その空想のキャラクターである彼女に。

そうであると分かっていながらも惚れているとしたならば。

どうしたらいい?



【彼女はある事に取り組み始めた。】

【世界をどうにかして渡る方法だ。】

【設定上、不可能では無い。となればだ、】

【親睦の深い、あるいはそれ以上な私に会いに行くためだと、そう言って。】



【だがそれは、とても残酷なリップサービスだ。】

【彼女がゲームのキャラクターである以上、それは不可能だからだ。】

【代替に近いものは用意できるかもしれない。】


【だが最も望むもの、彼女自身は不可能なのだ。】



私は、どうしたらいい?

私は、何ができる?


その答えを探る事しか、私にはできない。

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空は七つも穿てない。 田島春 @TJmhal

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