35話
自殺には、
例を挙げてみよう―――じわじわ死ぬ、キッパリ死ぬ、よくわからないまま死ぬ、周りが死んだので自分も流れ的に死ぬ、老衰。選択する
今回の自殺は、バリエーションで言うと―――
行き当たりばったりで死ぬ、といった所だろう。
◆
【0 Damage】
【0 Damage】
【0 Damage】
幾つもの文字が視界をチラつき、現在俺のうなじに押し当てられた包丁?が何の意味もなしていないことを教えてくれた。チッ流石に切れ味がゴミ過ぎたか……悪態をつく。この文字列群はメニューから設定画面を開いたらあった『ダメージ数を表示』設定をオンにしたら出てきた奴だ。さっきから俺の視界を埋め尽くして延々と分かり切ったことを伝えてくれている……イヤあの、0ダメージを当然のように申告してくるのは100歩譲ってもうアリってことにするぜ?一応検証に役立ってると言えなくも無いしな。
【0 Damage】
【0 Damage】
【0 Damage】
でもサァ……俺は放物線を描く包丁?の影を何の気なしに目で追いながら頭を抱えた―――このヴヴォヴヴォヴヴォヴヴォみたいなその……ユニークな通知音を消すことってできないんですかね?設定画面を再度開いて確認して閉じる。できないようだな……OK。俺は早めに話を打ち切って自分の首を絞めた。
【0 Damage】
【0 Damage】
【0 Damage】
ノーダメージなのはともかく、これ
ワンルーム型デスゲームにおける大きな問題の一つに
まあそういう訳なんだが、このゲームは肺が存在するタイプのようだ……じゃあ換気扇あるかな?見回すが無い、通気口も無いしエアコンも無い。フーム……まあアバター1人が最大3日しか生活しないことを考えればその辺も要らないかァ~~~。脱出コースはちょっとキツそうだぜ。
次、落下音を背にテーブル?に向かう。流石にクッキングシミュのテーブルがただの箱、だなんてことは無かったらしく、よく見れば
虚無が燃え始めた。
……なんというかその、アレだ。虚無が燃え始めたとしか言いようのない自称が起こった。俺はこの箱の上にはガステーブルの一つとして見られないという事実から何かを察することだったのかもしれない……或いは、そもそもフライパンも鍋も見当たらないという事実から。イヤほんとに虚無が燃えてる、明らかに不自然な感じで炎が立ち昇って周囲を照らしている……ついでにポリゴンの裏側も照らしたらしくテーブル?の表示がバグり始めた。とはいえ物理演算的には問題なさそうだ……ちょっと触ってみよう、火傷ダメージが出るかもしれない。俺は人差し指を火の中に突っ込んだ。
【-3 Damage】
【-3 Damage】
【-3 Damage】
いや何で回復してるの?俺は困惑した。痛覚は滅茶苦茶に仮想人差し指の危険を訴えて来るし、UIにも「状態異常:火傷」とかおどろおどろしいフォントで表示されてるのに、なぜか結果的に発生するダメージは回復だ。ガチでなんで????と、とりあえず人差し指を抜こう……しかし抜けなかった。
【料理中:食材を移動しないでください】
アナウンスが告げる。あ、そういう……俺は察した。さてはコレ人差し指が「料理中の食材」だと思われてるな?????ンで多分……「料理中は回復が掛かる」みたいな仕様がついでにあるんだ。クッキングシミュにおいて料理は
【-3 Damage】
【-3 Damage】
【-2 Damage】
代わりにそう―――考え事をしよう。ふと天井を見れば、そこは何十もの
……そう、見覚えだ。デスゲームをプレイしていると常に見覚えを抱く。どこかで聞いたことがあるSE、恐らくアセットであろう豪華な衣装、無限個の何の変哲もないシンプルな天井。何もかもが繰り返しで……それこそ
【-2 Damage】
【-1 Damage】
【-1 Damage】
―――例えば、ゴミ共がツクールで自給自足してたアレは……確かに既視感に濡れていたが、一方でどこか新鮮味があった。俺は地球そのものが敵となって立ちはだかるデスゲームを一つしか知らないし、血濡れの観覧車がギュルギュルやるデスゲームもやっぱり一つしか知らない。これは作者が意図を持ってるかどうか―――いや違う、
【-1 Damage】
【-1 Damage】
【0 Damage】
どうも眠いな、瞼を閉じる。喧しい数字群が消え去り、真の暗闇が―――いや、何かの弾みで焼き付いたのだろうか?光が一点、こびり付いて離れない。まるで答えはもうすぐだと俺に手招きするがごとく、静かに瞼の一部を占拠している。いいだろう―――掴んでやるよ、回答を。ヴヴォヴヴォと通知音が鳴るが無視、どうせ回復してンだろ?ほんと設定でオフにできないのかなぁこれ……とにかくだ、既視感が意図的に設定されているとして……それは何を目的としている?そもそも既視感を覚えるってのはどういうことだ、すなわち脳に沈んでる記憶ライブラリから諸々を掘り起こしてきて照合した後に意識に浮かび上がらせる、っつー手段を経て「似てるなあ」と感じることだ。じゃあ、その―――
それで?
俺は詰まった。いやもォ~~~~~ちょっと考えればわかる気がするんだよな……俺は気分転換に散歩にでも行こうと目を見開いた。しかし見開けなかった。なんだ?体に全く力が入らない。お、落ち着け……とりあえず視覚自体は働いてるっぽいぞ、さっきの焼き付いた光はまだ、見えて……
『GAME CLEAR!!』
俺が手招きしていると思っていた光は、実際の所巨大化アニメーションの最中にある黄金文字だった。
俺は一酸化炭素中毒で死んだ。
デスゲームを求めて @G_EALAZ
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