十七話_虚言癖(終)

 霊得術の発動にはキーワードが必要だ。ただし、それは一度作った”魔法”を呼び出す時の話。

 俺の【魔人-ウィザードマン-】の場合、文字通り、人型の魔力をイメージした能力だ。故に知覚をもつ。

「お前の【二つ折りの夢-バッカーウィット-】はどういうイメージの能力なんだ?」

「さあ?」

「BackerとWit。”後向きの者”と”機転”。俺が思うにこれの意味するところは『不意打ち』だと思うんだよ」

「…」

「確かに『逆を向かせる』も通るが…」

「いくらなんでも死んだ人はこっちを向いたりしないだろ」

「納得してたでしょ」

「最初はな」

「花を凍らせたのは?」

「お前の花は”熱”。そしてそれは+だけじゃない。もしくは『バッカーウィット』で反転した」

「そっちはありえるんだ」

「そうだ」

「ふーーん」

「…」

「精霊を使ったとこで違和感があった」


 キーワードとはつまり、霊得術のルビの方だ。では、ルビじゃない方は?

「俺の霊得術の核心コア【魔人】はつまるところ”精霊”のことなんだよ」

「精霊使いも言っていたと思うが、精霊はずっと魔力を管理してきた」

「簡単に素人に力を貸したりしない。条件がある」

「だからなに?」

「でもお前はあの爆発を止めた」

「そうじゃん」

「お前の霊得術の核心『二つ折りの夢』これを俺なりに解釈するなら、”内面”だとか”ひた隠しの嘘”がちょうどいいと思う。解釈の幅が広いってのはいいよな。キーワードの作り甲斐がありそうだ」

「つまりだ。お前は、あの爆発の瞬間、新しい魔法まほうを作り上げたのでは? と疑っている」

「それはない」

「ある」

「おまえは無意識かもしれないが、あの時はっきり言っていた」

「聞き間違えだ」

「まあ俺とは逆で、キーワードの方を心で唱えていたが」

「だからしらないって」

「そうか」

「【二つ折りの夢ウェイトローズリーフ(Weight-Rose leaf)】」

「大事にしなよ」

 もしかして、浮遊する睡蓮ウェイトレスロータスから取ったのだろうか。あの瀬戸際でよい魔法を編み出したものだ。

「簡単に言うと、バッカーウィットを一秒に千回つかった時と同じように、エネルギーを無力化できる。そこだけを過剰に注目したイメージのスキル」

「宙を舞う葉に触れようとして、空気抵抗に邪魔されるみたいにね」

「それはわからん」

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転換後精霊世界解決役補佐員 早山アンク @Aunk_Sayama

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