主人公が恩恵で授かったのは、掃除機魔法⁈意外性の詰まった物語。

【物語は】
明るいコントのようなプロローグで始まっていく。全体に明るいのかと思いきや、本編に入ると場面は暗転。主人公は、八歳にして大好きな母を過労で亡くす。どれほど母が好きなのか伝わってくる、涙なくしては読めないシーンである。母への想い、後悔、どうしたら母を救えていたのだろうかと、思考する。そんな主人公に不穏な影が差す。母との別れもそこそこに主人公はその人物により、何処かへ連れていかれてしまう。
一体、この先何が待ち受けているのだろうか。

【世界観・舞台の魅力】
母の葬儀の後、あるおじさんに連れてこられたのは大きな屋敷であった。そこで、彼が領主であることを知る。彼に一五歳まで、ここで暮らすように言われた主人公。何故、母は領主に自分のことを頼んだのだろうか。その理由が分からぬまま、ここで暮らすこととなる。

母が過労で亡くなったという事は、あまり裕福な暮らしではなかったと推測する。そういう境遇から、突然裕福な家に連れて来られた。しかも、秘密の部屋に押し込められ、メイドを一人つけられたことから、自由とは決して言い難い環境なのではないだろうか。
食事の心配や、衣服の心配もいらず、生活に関しては不安の要らなそうな環境である。風呂が、用水路で水浴びというところから、そこまで通常の気温が低い地域ではないのだろうかと感じた。いろんな想像の広がる物語である。

【物語・登場人物の魅力】
この物語では心情が丁寧に描かれており、モノローグ調で分かりやすく、全体的に理解しやすいので、感情移入がとてもし易い。
主人公は母想いの少年。母を亡くし、新しい生活を強いられる。母との思い出の詰まった家さえ奪われ、半強制的に領主の家で暮らすことになった。
しかし、全く救いがないわけではないようだ。まだ子供である彼の世話をしてくれるのは、笑顔の優し気な女性。彼女が優しく屋敷でのことなどを教えてくれる。二人のちょっとしたやり取りから、主人公が笑顔になる場面もある。

しかし、一年後。メイドであるサラの激変に驚くこととなる。

一年前には想像もつかないほど、彼女はスパルタだ。勉強を通して、この物語の世界観なども分かってくる。魔力についてはオリジナル要素。意外性のある設定である。
勉強という過程の中で世界観が分かってくる為、とても理解しやすい。その内容の中で、主人公が暮らす場所についても詳しく語られるが、ここはどうやら複雑な場所(土地)のようである。

【物語の見どころ】
プロローグではとても明るく、どんな物語なのだろうとワクワクしたが、一変という始まり方だ。物語は序盤は悲しい部分もあるが、段々と明るくなっていく展開。
本編は最愛の母を亡くすところから始まっていく。悲しみに暮れている暇もなく、ある屋敷に連れていかれる主人公。そこで、一五歳まで過ごすこととなる。しかも、専属メイドのサラと二人きり。

その中で、年数の使い方や話の流れがとても巧い物語であると感じた。勉強の内容は世界観の説明に繋がり、主人公と共にいろんなことを理解していく。そして閉じ込められている間、ずっと安全とは限らないのだ。ピンチに陥ることもあるし、強く逞しく成長していかねばならない。

辛い始まりだったこの物語は、段々明るくコミカルになっていく。とても面白い展開である。意外性の沢山詰まった物語だ。
果たして彼が”恩恵”で授かった”掃除機魔法”とは、一体どんな魔法なのだろうか?

あなたもお手に取られてみませんか?
”こんな魔法は、見たことが無い!”というかたが多いのではないかと思います。独創的で、テンポのよい物語でもあります。それなのに、心理描写などがとても丁寧で読みやすく、分かりやすい作品。
彼がこれからどんな人生を歩んで行くのか、その目で是非確かめてみてくださいね!お奨めです。

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