#31 声が聞こえる

 あぁ、消えてしまいたいと願う。


 私は頭を抱える。


 頭が痛いのか、重いのか分からない。


 部屋から出られない。太陽が怖い。


 ドアの先の世界を、想像できない。


 全てを恐れろという、声がして。


 全てから目を背けてしまえという、声がして。


 どこまでもどこまでも、声が聞こえる。


 そこにいるのは誰だろう。


 私? あなた? 第三者?


 声の主は一体、誰ですか。


 姿は見えないまま、声が私を取り込んでいく。


 …………けれどある日、私は変わった。新しい声がした。


 敵なんてどこにもいない。太陽はあなたの味方。


 ドアの先の世界は、明るいよ。絶対に絶対に、あなたを否定しないよ。


 大丈夫だよという、声がした。


 私は疑った。


 本当に大丈夫? 声を信じて良い根拠は、どこ?


 疑いすぎは、良くないよと忠告された。


 本当かなぁ。


 話しているのは、あなたでも私でもない。私たちの心の奥底にいるんだよ。


 この声を信じることが、あなた自身を信じることにつながる。そういう言葉が聞こえた。


 信じるしか、ないのかな。


 信じてみて、いいのかな。


 私は信じたい。この世界を、この先の未来を、信じたい。


 この欲求は、存在してもいいものなのでしょうか?


 私は涙を拭いて、前を向いた。


 下を向くのをやめる。頬に、太陽の光が当たる。


 あぁ、生きていたいと願う。


 *******


(一番下から読み返す)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る