第14話【正義の門】を褒める

正義の門

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917654996


 宗教戦争というものを話の中心に据える時、どこに目線を据えるかで見え方が大きく変わってくる。 正義の門はその目線が一人の人間に落とし込んで描かれているので、しっくり来る形となって読み進められる。

 神に仕えるものとして、限られた世界で触れる宗教の対立、無宿者として生き抜く中の知恵として教養として知る経典からみた力関係、読者の印象をうまく操縦して話立てが出来ている。

 非暴力を貫く穏やかな教義を持っているような宗教でも、全ての教徒が納得するわけとはいかないのは分かることではあり、争いの火種は残り続ける。

 そして下々の飢えに苦しむ状況を救ってくれるものが何なのかも難しい所ではあるが、国家と宗教が密接に絡む時、確実に異教に対する締め付けが強くなる流れが生まれるもので、平和の世を作るという大義の前に暴力は排斥は肯定され突き進む時代の流れを見るに、あるものの終末は同時に始まりに過ぎないのだと考えさせられる。

 何にしても一度でも特定の宗教を国教として認めてしまうと、その後はずっと宗教をばらまき続ける存在になり果てるのは確かで、その時に出来る壁のようなもので封鎖された世界は、容易に他の考えや思いを弾圧する。


 今はまだ始まりに過ぎない、誰かの終末は始まりに過ぎない、果て無く続く布教の流れは、いつかたどりつくのだろうか? 信じるに足りるのか?


 いつの日か見極める日が来ると信じたい。

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