第二十三話 第七の試練
「――なさいませ、起きなさいませ」
どこからか誰かの声が聞こえてくる。
――そういえば、あの後僕はどうなったんだっけ?
確か海ちゃんに身体を抱かれて……、
――海ちゃん?
「そうだよ、海ちゃんは? 海ちゃんはどこにいるの⁉」
「……」
僕の質問に対して、その時初めてリリーちゃんが目を泳がせた。
「リリーちゃん?」
リリーちゃんは唇をわなわなと震わせていた。
――そういえば、どうしてこの子以外誰もいないのだろう?
「ところでさ、ほかの子達はどこに行ったの?」
「……それは」
「それは?」
「……あのお方達は、皆脱落なさいました……あの広大で寛大な、いいえ、雄大な。とでも申しましょうか? その海様と供に」
「……」
「ごめん、流石に茶化すと本気で怒るよ?」
「いいえ、事実でございます。彼女達は皆、海様の手によって、それでこそ脱落寸前
まで追い込まれた貴方様を救うべく、その権限を放棄なさったのです」
権限、それはこの試練に挑み、達成していくというもの。それを放棄したという事はつまり、
――本当に、この子の言うとおり……、
「まさか春間も。とか言うなよ?」
「……」
どうやら図星らしい。僕はそんなリリーちゃんの反応を目にしてから、内心でこう
思った。
――この先どうなるんだろう?
そんな単純なことを思ったところで別にどうにもならないことは解っていた。だがそれでも僕は、いや、僕達は幾人もの仲間に加え、大切なパートナーを失っている。
だから物理的にも精神的にもダメージはとても大きい。
――まさか春間まで……。
「失礼ながら、ところで錬磨様、一つよろしいでしょうか?」
「何さ?」
「貴方様の手の甲をご覧くださいませ」
僕はリリーちゃんから促されるまま、その部位へと視線を向けてみた。
――これは、
そこには僕の紋章以外に、これまでこの試練で命を落としていった仲間達の想いが
詰まっているであろう、虹色の薔薇の紋章が刻まれていた。
「……行こう、何も言わずに、僕について来てくれ」
「御心のままに」
僕の、いいや、
僕達の試練は
もうすぐ終わる。
終わらせてみせる……。
闇夜の月 三点提督 @325130
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