第二十二話 海

「キミにこんな苦しみを与えてしまって、本当にごめん。でも、もう大丈夫だから。

僕達がキミをこの後悔から救ってあげるから!」

 僕が召喚した少女は今、海ちゃんの切り札であるその大鯨とドンパチやり合ってい

る。という言い方はかなり美しくないけれど、事実、僕のほうも手加減せずに殴り合っているわけだから、あながち否定もできない状態だ。

「へえ? その子、なかなかやるじゃないか。いいね、強ければ強いほど、僕の相手としては打って付けだよ!」

 ニヤリ。と笑った海ちゃんは、「それじゃあ最後の大航海に出ようか」と呟いた。

その瞬間、僕の第六感が、「来る」と、何かを察知した。

 ――海ちゃんが仕掛けてくる!

「僕の大好きなものすべて、大切なものすべてを、奪ったキミを、僕は、僕は――」

 一瞬にして姿が見えなくなり、気づけば僕の目の前にいた。

「――許さない!」

 海ちゃんが僕を抱きしめた。それと同時に、薄い膜状の『何か』が僕を包み込んだ

かと思うと、

 ――なん、だ?

 ゴボボ。

 ゴボボボボボ。

 ――あ、死んだ。

 そんなふうに諦めかけた僕は、しかし、せめて他の子達にすべてを託そうと思い、こう祈った。

 ――リリーちゃん、春間、ごめんね。

 海ちゃんを強く抱き締め、僕は瞼を閉じた……。

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