第8章 トリガー

8章 トリガー


「ククク…どうやら記憶を順当に失ったようだな」


「なんの話をしてるんだ…ってかその前にどうやって入ってきたんだよ」


見るからに怪しい奴が急に部屋に乗り込んできた

この城のセキュリティが甘いとは思えない

つまりコイツはこのセキュリティを易々と破ってきたということだ

相当な手慣れだろう

とりあえずこの状況がヤバイだろうということだけはわかる


「貴様と私が出会ったのは初めてではない」


「は?…」


こんな怪しい奴と関わったことあったっけ…

バイトの客か?

よし…一旦様子見で口裏合わせてみるか


「あ、あー…!あのロマ君ね!はいはい!最近元気してる?どう?式神教徒の調子は?最近不景気だっていうけどちゃんと食べてる?」


「ククク…なんだ…そのあからさまに合わせてる感じは…そんな話ではない」


だろうな


「んで?急に当たり前のように入ってきてなんの用だよ。俺は明日バイトがあるんだ、手短に頼むぞ」


「クク…手短に言うと私の能力で貴様が式神教徒と発言すると私と関わった記憶が全て消えるという呪いを欠けた」


「おいおいマジかよ実はお前と良きライバルでしたとかいう急展開なのか?」


「ククク…それはそれで面白い話だがそうではない。しかし…こんなに面倒臭いやり取りをするくらいなら記憶を失わない方が良かったかもしれないな…」


「悪かったよ。それで?本題はなんだ」


「ククク…貴様にその呪いを掛けたのは私の存在を今日までカルラに知られたく無かったからだ」


な、なに、この怪しそうな奴とカルラは知り合いだったのか

いや、アイツは一応国王であり社長でもあったな。一方的に知ってるだけの可能性が高いか


「カルラと私はちょっとした知り合いでな」


「知り合いなのかよ!」


「クク…ああ…地元が一緒で…北の国アルトゥール」


「へー…ってマジかよ!カルラはアルトゥールの事なんて殆ど知らないって言ってたんだが」


「ククク…そうか…カルラはアルトゥールはどんな所と言っていた?」


「え?いや、そんな大した事は言ってなかったけど…強いて言えば《アルトゥールは飯がうまいらしい》と言う事は聞いた気がするな」


「なんの用だロマネスク」

「クク…だろうな」


!?

急にカルラが現れロマネスクの背後で剣を向けている


「ロマネスク…貴様がコイツと接触しそうな事は最初から読めていた」


「クク…だから予めトリガーを仕掛けていた…と…ククククク相変わらずだなぁ」


「お、おいおい一体なんの話をしてるんだ〜?俺を置いてけぼりにしないでくれ」


「ふふふ〜神楽とロマネスクが近い内接触するのは読めていた。だからトリガーを仕掛けた」


「さっきから言ってるトリガーってなんだよ」


「私の国では有名な能力の一つで、あるキーワードを発言するとそれがトリガーとなり自分の掛けた魔法が発動する。今回の場合だとお前が《アルトゥールは飯がうまいらしい》と発言すれば私が即神楽の近くにワープする魔法を掛けた」


「なんだそのピンポイントなキーワードは…それに俺がロマネスクと接触しそうな予感ってのもわかんねえ…」


「話は後だ。とりあえずこの胡散臭い輩を倒してからに…しようか!」


カルラがロマネスクに剣を振りかぶった


「ククククク…読めてるんだなぁこれがぁ!」


しかしカルラの振った剣は空気を切っただけで

ロマネスクが消えた

目には見えないがロマネスクの声だけ聞こえる


「ククク…私の狙いはカルラ…貴様を呼び寄せる事。貴様がトリガーを仕掛けてる事なぞ最初からわかっていた。だから敢えてこの男に発言させて呼び寄せたという事だ」


「ふふふ、だから最初になんの用だと聞いたじゃないか?」


「ククク…相変わらず面白い女だ。本題に入るが、貴様この戦争どうするつもりだ」


「当然の如く参戦予定だが?」


「クク…貴様は自国を裏切るだけじゃ飽き足らず歯向かう算段まで付けている…と?」


「……そんな話今は関係ないだろう」


「ククク…まあ今日は貴様の口からウチとコト構えると聞けて吹っ切れたぞ。覚悟するんだな」


「………」


ロマネスクの声が聞こえなくなった

姿も見えないしもうこの部屋には居なさそうだ


「おい…カルラ」


「すまない…今日はもう休む…」


「ああ、無理すんなよな。それと…助けてくれてありがとな」


「ふっ…そもそもこうなった原因は私にある、感謝など必要ない寧ろ私が謝罪しないといけないくらいさ」


「じゃあ時給300円アップな」


「…」


カルラがなんだコイツ空気読めよみたいな顔をしている

いやいや当然だよ

こうやって俺はのし上がってきたんだ

俺は感情に飲まれない。ピンチはチャンスなのだ


「明日もバイトだし、寝るぜ俺は」


「そうか、じゃあ…」


「あっ、そうだ、俺も万年フリーターはキツいからよ、今度正社員雇用も視野に入れといてくれよな」


「!」


「あんなヤベェ奴らと戦争するんだろ?バイトに戦わすんじゃねえよ。せめて正社員にして福利厚生充実させろよな」


「ふふふ…お前という奴は、わかった考えておく」


「ああ、じゃあおやすみ」


「おやすみ」



そうして濃く長かった夜を空け



翌朝

ちゅんちゅん


「うーん…ふぁあー」


「あっ!おきたね!おはようかぐらくん!」


「なんだよ朝から騒がしいな…しかしお前ら当然の権利のように俺の部屋勝手に入ってくるよな」


「うん、ちょっともんだいがあってね…」


「そうか、まあ逆にお前が問題起こさない日があったとしたらそっちの方が問題だよな」


「いや…わたしのもんだいじゃなくてね…」


「なんだ歯切れが悪いな」


深刻そうな顔をしたモニカが衝撃的な発言をした


「かぐらくん…バイト…クビだってさ…」


「は?」

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スーパーエリートかぐらくん あいす @ice3

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