Please allow me sing a song

結城恵

Please allow me sing a song

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


歌を。

歌を歌いたかった。


ここはどこだろう。

海の底に沈んでいくような、星の海に飲み込まれるような。

苦しい。とにかく息ができない。歌うためのブレスが出来なくて辛い。

どうしてこんなことになってしまったのか。もう覚えてなんかいやしない。


ロックみたいに飛び跳ねながら。テクノのように奇を衒って。

クラシックに語りながら。ときにはジャジーに、音楽に身を任せ。ポップに力を抜いて。

そうしてただ歌っていたかっただけなのに。この世には、余計なものが多すぎて。


何も見えない。何の味もしない。何も香ってこない。何も感じない。だから。

歌を。唄を。詩を。嘔を!


…………歌が、聞こえる。

ああ、こんな感じに歌いたかったんだ。僕は。本当はずっと知っていた。


彼みたいに語り掛けるように歌いたかった。

彼女みたいに可憐に歌いたかった。

彼みたいに鮮烈に歌いたかった。

彼女みたいに妖艶に歌いたかった。

――――いいや違う。僕は、僕らしく歌いたかったんだ。


それにしても、歌は鳴りやまない。

参ったな。呑気に死んでる場合じゃないみたいだ。

ええと、どうすればいいんだっけ。さっぱり分からないけれど。


うん。そうだろうね。

僕はきっと、キミと一緒に、歌を歌いたかったんだ。


死にぞこないでも構わないかな?

下手くそな歌でも、笑わないでいてくれる?


いいや、そんなことなんて関係ない。キミがこの手を取ってくれるなら。

みすぼらしくて、生き汚くても、僕は何度だって―――――


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

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Please allow me sing a song 結城恵 @yuki_megumi

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