大学時代の部室に久々に足を踏み入れた三十代の男女が、自分の人生なぞりつつ、懐かしい青春の時代を思い出すお話です。
長く人生を重ねていると色々なことが起こるものですが、青春期の出会いと出来事は、なぜだか不思議と色褪せることはないのですよね。
結ばれたわけではないけれど忘れられない人、という二人の関係が切ないです。
『収穫物をいくら詰め込んでも重さの変わることないカメラ』
『ノイズ混じりのその音はプツプツと途切れてつっかえ、千鳥足で刻むステップのようで頼りない』
など、はっとするような表現が散りばめられていて印象に残りました。
読めば読むほど切なさが感じられる作品です。
『相手のことを知り尽くしている』というだけでは、人は結ばれないのかなと思いました。
人の縁は不思議です。