第13話 蓮に問う者を見る

素の詩 Something dropped 作者 小鷹 りく

    第45話 蓮


 下記詩を受けて作った詩になています。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921997703/episodes/16816452218898628442


 上記詩は、下記物語と、小鷹りくさんの思いが、交錯こうさくしたものの様です。


 沈み鳥居の鬼 作者 小鷹りく


 弁財天べんざいてん神に仕える童子どうじ、世をおびやかす鬼と戦い、人々を救います。

 しかし鬼のはかりごとに掛かり、弁財天べんざいてん神は信仰しんこうを失い、童子どうじ達は力を失い、それまで救っていた人からうとまれます。

 一人力を無くさない生命せいめい童子どうじ、人々の身勝手さとその変貌へんぼう、そしておのが正体に苦悩くのうします。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054922535140




 の者が、その石に腰を下ろしましたのは、池が在り、はすが在り、花が咲くからです。

 背を丸め、片腕を腹に、他方のひじを、その手の甲に乗せ、ひじより上の手は、かたむいたほほ顳顬こめかみを支えます。


 山の稜線りょうせんが輝き、おごそかに世をあまねく照らす日輪にちりんが昇ると、一つ、二つと花弁が開きます。

 の者は、神聖しんせいで、雄弁ゆうべんで、救済をく花にいたいのです。



 傷塗きずまみれなのに、何故なぜ救いが無いのですか。

 痛いですかとい返します。


 みなと違いがあるから、救われないのですか。

 痛みから逃れたいですかとい返します。


 異形いけいの心を持つから、助けてもらえないのですか。

 痛みを知らない者達に、助けられますかとい返します。


 苦しみ無しに人は、さとれないとも花は言います。

 私のみの痛みだと、如何いかなる神仏しんぶつも、この痛みを知らないから救えないと。


 なれば、今知ったあなたのもとで、静かに眠りたいのです。

 疲れたなら眠りなさい。

 されど、56億と7千万年のち、再び目覚めざめます。

 痛みを知るがゆえに。


 数十億年、この地は灼熱しゃくねつとなり、生きとし生ける者は死にえます。

 さらにその先では、この地はないのです。


 何と言う不毛ふもう、私は今、この時この瞬間に救われたいのです。

 これが真理しんりなら、鬼にならねば、同じ痛みを知る者を増やさねば、救われない。


 が頭の上に来る頃、花は沈黙ちんもくしたまま、花弁を一つ、又一つと落とします。


 嗚呼ああ不毛ふもう、誰も救われない。

 姿形すがたかたちのない、誰も救わない神仏しんぶつを信じられるのに、

 目の前にいる、周りにいる、世の人々が、救済を必要としない世の中をつくれると、

 何故なぜ信じられない、何故なぜおとしめる、何故なぜ苦しめる、何故なぜ傷付け合う。


 の者には、る。

 孤独をいややせる人がいる。



 実際はの者が、何を話しているのか、そもそも声を出しているのか、私には分からないのです。

 私に見えているのは、石に座り、もう花をらせたはすを見るの者の姿です。


 私は臆病おくびょうです。

 知らなければ、通り過ぎればせきう事はないはずです。


 あらん限りの勇気をかき集め、の者が一歩いっぽみ出し、もう一歩いっぽみ出し、池に足を入れたなら、躊躇ためらわず声を掛けます。


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