お互いにそわそわしながら日曜日を過ごした。思いを伝え合ったからといって生活の何が変わるわけでもなく。かと言って心の中では大きなうねりが起こったりしていて。

 正直、『よいではないか』とか言いながら欲望の赴くままにあんなことやこんなことをする未来も妄想したりしていたが、実際はそんなわけにもいかず、俺は悶々としていた。

 そしてそれぞれの部屋で黙々と過ごし、夕方、このままではいけないと思った俺は彩明の部屋のドアをノックした。裏返った声で返事が返ってきた。

「彩明、散歩でもしない? また小学校まで」

 そう呼びかける俺の声も裏返っていた。

 昨日は出来ていたはずなのに何故か今日は手も繋げなかった。黙々と小学校までの道を歩く。なんだかくすぐったいような、痒いような、よくわからない心のざわつきを感じながらひたすら歩く。そうして結局無言のままグラウンドに着くと、またブランコに並んで腰かけた。

 しばらくの沈黙の後、彩明がそれを破った。

「一番星」

「……本当だ」

「綺麗ですね」

「うん」

 そんな月並みの感想を述べ合って、また黙る。

「五朗さん」

「ん?」

 彩明が手を差し出してきた。

 しかし俺はあえてその手を取らず、彩明の正面に回りしゃがんだ。彩明は小首をかしげる。

「……へへっ」

「な、なんですか?」

「なんか、俺たちおかしいなーって思って」

「それは、私も思ってましたけど」

「だろ? はははっ」

「はははっ」

 それから少し笑い合って、このぎくしゃくした感じを溶かしていった。そして笑いが収まると、今度はお互いの目をまっすぐ見つめ合った。

 そのまま唇を重ねるのに、そう時間はかからなかった。

 一瞬触れて一瞬離れ、また重ねる。今度は一秒。また一瞬離れて、今度は二秒。そうして三回キスを繰り返して、顔を離すと、彩明は切なげで恍惚とした表情を浮かべていた。きっと俺も同じ顔をしていたんだと思う。

 なんなんだろう。この体が宙に浮かぶような、燃えるような感覚。世界がいつもと違って見える。どう違うのかは、説明できない。でも、明らかに違うことはわかる。

 俺は照れ隠しにひとつ伸びをすると、靴飛ばしのリベンジを申し出た。結果はまたしても惨敗だった。



タイトル:お久しぶりです

本文:Aと墓参りに行ったり靴飛ばしで負けたりした。

   最近とても楽しくて、更新おろそかになってます。

   ごめんなさい。

   学校でも色々あって、話すと長くなる。

   取りあえず言えるのは、

   俺は一人で生きているわけじゃ無いんだってこと。

   やっとわかった。

   このブログの訪問者の皆様にも感謝。

   あいつの負債は、五百万くらいにしといて、

   そろそろ請求書でも出そうかなw


名前:いおり

タイトル:無題

コメント:長い遠回り、お疲れ様です

     しのぶさんのこれから、応援しています

     大変なこともあると思うけど、もう大丈夫だよね

     靴飛ばしw(意味深)

     脱いだAちゃんの靴の匂いを嗅ぐしのぶさんを妄想


名前:しのぶ

タイトル:いおりさんへ

コメント:ならされた道ではなかったけれど

     遠回りでは無かったです。

     いおりさんと会えて、良かったです。

     Aの靴はジャスミンの香りでした。



 出会いというものはいつだって唐突だ。俺の人生の流れを決めている見えざる大きな力があるのなら、俺はそいつに伝えたい事が山ほどある。しかし色々考えた末結局『ありがとう』としか言えないのは目に見えたので、この件は考えるだけ無駄という結論が出た。頭の中で。

 出会いとは唐突だから面白く、そして唐突だから愛おしいんだ。俺はそう思う。大きな力は感じることは出来ないけれど、出会った人の手を大切にすることはきっと出来る。

 そう思いながら、夕焼け空の下隣を歩く彼女の手を握った。笑顔がよく似合う、俺の生活に彩りと明かりを与えてくれた少女の手を。


 さて、今夜は何を作ろうか、彩明。





 終わり。

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夕焼けリーベ 紙袋あける @akemi12mg

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