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夏休みがこんなに憂鬱なのは初めてだ。
仲のいい子とは寝る間も惜しんでずっと連絡を取り合うけど、春川くんには会えない。
連絡先も知らないんだから連絡のしようもない。
スマホは持っているようだったけど、学校でスマホを見ている姿を見かけたことはない。他の男子はゲームに没頭していても、「容量少ないからゲーム入れれないんだ」そう言って、男子たちの姿を楽しそうに眺めているだけだった。本当に家族との連絡用として持たされているのだろう。
それを不満そうに口にしているのは聞いたことがない。本人も同意の上でのスマホの使い方ということだろうか。私なんてスマホを触っていないと落ち着かないのに。
春川くんに会えないだけで夏休みは倍以上に長くなったように感じた。いつもはずっと夏休みだったらいいのに、なんて思うんだけど、今年は早く学校へ行きたくて仕方なかった。
長い長い夏休みが明けて、気付いたことがあった。
春川くんの一人称が変わったのだ。
それまでは「僕」だった。まだ幼さの残る容姿に合った一人称だった。
それが「俺」へと変わっていた。男子が成長するにつれて当たり前の変化かもしれないけれど、少し気になってしまった。無理をしているようで。
夏休みという1ヶ月ほどの期間が開いて、その変化に気付いている人はいるのだろうか。
気付いているのか、気付いていないのか、誰も一人称のことには触れない。
桜が散る前に、君と 笹原 巳波 @mmm_5284
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