本屋さんの本
あなたよ
苦しみ悩むあなたよ
どうかわたしを手に取ってください
わたしには分かります
今この瞬間
あなたがわたしを必要としていることが
わたしは隣の本とは違います
いえ、この本屋さんのどの本とも違います
わたしのご主人様は
あなたと同じような
もしかしたら
あなたが直面している苦悩よりも
激しい経験をしてきました
もしかしたら
あなたには耐えきれないほどの
試練を乗り越えてきました
わたしのご主人様は
恥も外聞もかなぐり捨てて
そのことを克明に記しました
わたしの体は
こんなに小さいけれど
きっときっと
あなたの胸を締め付けるほどの思いを
少なからず和らげることができます
だからどうか
この小さなわたしを
手に取ってください
そして表紙だけでもめくってください
そして少しでも読んでみてください
1章でも
1ページでも
1行でも
店員に気付かれないように
栞をはさんでください
わたしはまさに今のあなたのために存在しています
わたしに足があるなら
あなたの前に走って行きたい
わたしに翼があれば
あなたの前に飛んでいきたい
わたしに念力が使えれば
あなたに送り続けたい
でもわたしにはどうにもできない
だから
あなたは自力でなんとか
わたしを見つけて下さい
そうしたら
わたしの手足の文字たちを思い切り振動させ
あなたの意識に飛んでいきます
手に取るだけであなたは気づくはずです
あなたがわたしを必要としていることが
どうかわたしを見つけて下さい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます