この世なんかなくなってしまえばいい


この世なんかなくなってしまえばいい

この世にはなんの意味もない

どうせいつかはなにもかもなくなってしまうだろうし

いっそのこと全部吹き飛んでしまえばいい


でもなんにもなくなった世界を考えてみると

なんだかさみしいな

せめてなにかがあって欲しいな


ぼくひとり生きている世界はいらない

ぼくなんてどうでもいいんだ


せめてあなたにだけは生きていてもらいたいな

小さなパラソルの形をしたシェルターに守られて


でもパラソル一つだとさみしがるかな

だったらそこにロッキングチェアを置いてあげたいな


木でできたフローリングの床に

コップが置ける小さな丸テーブルがあって


椅子にゆられて心地よい風にカーテンが揺れて

窓とレースのカーテンも付けてあげないとね


その窓から外を見るとつばめが飛んでいて

空にはもくもくの雲


お日さまの光がケヤキの木の間からこぼれて

まだら模様の影が波のように揺れて


あなたは何か本を読んでいて

何が好きなのかな

ぼくはやさしい本が好きなんだ

たとえば

たとえばなんだろう

絵本

葉祥明の絵本かなにか


とっても透き通ってるんだ

青空も

星降る夜も

秋の紅葉も

花咲く緑も

空にかかる虹も

真っ赤な夕焼けも

すべてかとっても透き通ってるんだ


そんな本を読んでいてほしいな


どうせだったらもう一つロッキングチェアを置いて

ぼくが一緒にいられたらいいな


この世なんかなくなってしまえばいい

なんて言わなければよかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る