となり町


昔からとなり町の人間は酷いと教えられた

自分のためだったら何でもする

なんだってする


 誹謗

 中傷

 威嚇

 脅迫

 欺瞞

 搾取

 窃盗

 毀損

 傷害

 殺人


白く高い煙突からはたくさんの有害物質が出ていると教えらえれた


でもいつもぼくは丘の上からとなり町を眺めるのが好きだった


 きれいな建物

 速く走る電車

 かすかに聞こえる音楽

 時折り聞こえる笑い声

 たくさんの緑

 色鮮やかな花々

 飛び交う鳥たち

 整然と広がる田んぼと畑

 すがすがしい空

 雨上がりの虹

 まぶしいほどの夜景


どれもぼくの町にはなかった

どれも悪いことだと教えられた


ぼくはとなり町から飛んでくる鳥たちに聞いてみた


 となり町って本当に酷い人たちなの?


鳥たちは何も聞こえなかったように飛んで行ってしまった


 あんなきれいなところに住んでいる人の心が

 汚れているとはとても思えなかった

 なんど考えても思えなかった


夜明け前

家のひとが寝ているときにこっそり家を飛び出して

となり町との境界に行ってみた


そこには大きな金属の柵が張り巡らされていた

それに触ると指が切れた


 どうしてだろう

 だれが作ったのだろう

 

 昔のぼくの町の人たちが作ったのだろうか

 昔のとなり町の人たちがつくったのだろうか


ぼくは柵の向こうに見える遠くに焦点を合わせた

そこには日の出の太陽に照らされて

キラキラしてまぶしいほどの町が見えた


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