透明な箱
虚な目で見ている真っ白な床に
あなたは何を思っているのですか
あなたは自ら進んで
この透明な箱に入ったのですか
あるいはどこかの誰かに
押し込まれたのですか
裸で膝を抱えて丸くなっているあなたに
わたしが差し出す手がみえますか?
あなたの手とくらべると
わたしの手はこんなに小さいけれど
あなたが手を伸ばせば
透明なガラスを通して
わたしの温もりを感じることができます
あなたの手に触れることができれば
あなたを引き寄せることができます
小石も小枝も何もないこの場所で
わたしひとりでこのガラスを
壊すのは難しいけれど
あなたがもどってくれるなら
あなたがかえってくれるなら
たとえわたしの
この皮膚が破れても
この血管が切れても
この筋肉が潰れても
この骨が折れても
うるさくてごめんなさい
ガラスがどうしても飛んでしまって
もう少しですから
わたしの血にも我慢してください
あなたの髪に絡まったガラスを取りましょう
あなたの肩に刺さったガラスを取りましょう
あなたの鼻で光るガラスを取りましょう
あなたの腿のガラスを取りましょう
そして散乱したガラス片を取りましょう
もうあなたは自由です
どうかわたしのこの手を握り返してください
あなたはどこにでも行けます
冷たくて動けなくても
わたしがずっと抱きしめています
あなたが虚な目で見ている真っ赤な床に
何を思っているのですか
あなたの青黒い唇に
わたしはそっと紅を引く
あなたの頬がぎこちなく動いたような
もしかして
あなたは少し笑ったかしら
倒れてしまいそうなわたしに
この笑顔でわたしは
どんなにか
どんなにか
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