追いかけて

あなたを追いかけて

精一杯ついていく


あなたの一歩 わたしの一歩

歩数は同じだけれど

歩けば歩くほどはなれていく


あなたが角を曲がると

わたしも同じ角を曲がる


あなたが次の角を曲がると

わたしも同じ角を曲がる


角を曲がりあなたが見えなくても

あなたの影が方角を教えてくれる


つぎのその角を曲がると

あなたの影は見えなかった


でもあなたの残り香が方角を教えてくれた


わたしはいつまでも残り香をたよりに

あなたを追いかけて角を曲がった


だんだんあなたの香りが強くなる

あなたにもうすぐ追いつく


次の角を曲がると

わたしの家だった


明かりの消えた部屋の鍵を開ける


ひとつの部屋 つぎの部屋

あなたが隠れていないか確認した


クローゼット

バスタブ

ドアの裏

ソファの下


あなたはどこにもいなかった


あなたの香りが消えていく


脱力してソファに横になる

あなたのぬくもりが微かに残っている


あなたのぬくもりを抱きしめて

わたしのからだにかさねる


あなた温もりが消えないように

あなたの温もりを思い出すように


あなたのぬくもりが消えないように

あなたを温める


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