こころに浮かんだ童話と詩と

風になる

こんもりした緑の山

ひのきの階段が続いている

吸い込まれる鮮やかな緑

山の上をめざしている

山の上に満開の桜

心地よい南風が吹いている

肩までのびた細い髪

花びらとともになびいてる

風を受けて広げた両手

わたしのからだをつたう

わたしの顔の頬のうぶげ

風のこどもが通り抜ける

どこからともなく聞こえる声

ぼくと一緒に遊ぼうよ

見晴らしのよい山の上

かあるい雲が浮いている

ときめき高鳴る心

遊びたいけど遊べないよ

風に舞う黄色いリボン

ねえねえ一緒に遊ぼうよ

空にさしだす白い手

風のかたまりがてのひらを押す

さしだすもう片方の細い手

風のこどもが握手した

大きく波打つ青いスカート

わたしの左足が浮き上がる

渦巻く桜の花びらたち

胸の思いとブラウスが膨らむ

空から聞こえるよろこぶ声たち

右足が地面からはなれる

目の前に広がる町

一瞬にしてからだが舞い上がる

ふわっと無重力のバランス

全身に風を受けて世界を見下ろす

いつのまにか頬つたう涙

ねえねえとっても楽しいね