クヌギのあかとあお (3/3)


でもぼくはいっつもあかから

見守られているような気がするよ


そうだろ、あか

"・・・・・・"


初夏にウグイスに恋して話しかけようと

精一杯声を出そうとしていたことも


ムシたちに樹液を前のようにたくさんあげようと 

精一杯全身で振り絞っていたことも


力強く舞うオオムラサキを追いかけようと

精一杯枝や葉を揺らしていたことも

 

今ごろあかは何をしてるのかなあ

ぼくにはあかのことが見えないけど


でもよく分かるんだよ

なぜかなのかなあ

だってぼくとあかは友だちなんだから

友だちだよね


おーーーい、あか! そうだよね!

"・・・・・・"


ぼくの樹皮も少し剥がれて

あかの幹にも苔が目立ってきた

 

ぼくのところにクモの巣がたくさんできて

あかのところにフクロウが休みにきた 

 

でもねえ、あか

"・・・・・・・"

 

雨上がりのクモの巣ってとってもきれいなんだよ

"・・・・・・・"

 

知ってる? 知ってた?

"・・・・・・"

 

クモの巣に水滴が付いて宝石箱みたいなんだ

"・・・・・・"  


ぼく、いっつもあかのこと考えてたんだよ

"・・・・・・"

  

今度また一緒になりたいね

"・・・・・・"

 

土のぬくぬくが懐かしい

"・・・・・・"

 

ぼくたちのじいちゃんやばあちゃんがいるんでしょ

"・・・・・・" 

 

おーーーい、あか! そうだよね!

"うるせえなあ、ずっと聞こえてるんだよ"


(完)

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