クヌギのあかとあお (1/3)


ぼくはようやく真っ暗だった土の中から

明るいところに出られたんだ


地上に出るとこんなふうになってたんだ

陽の光がとっても明るくて気持ちいい


地面の下はぬくぬくだったけど

お空が見えるほうがもっとすがすがしい  


土の中ではゆっくりゆっくり背が伸びて

明るい世界ではぐんぐんぐんぐん背が伸びた


ずっとまっすぐ伸びるのかと思ってたら

ふたつに別れないといけなくなっちゃった


天の神様に

どうしてもふたつに分かれなければならないの?って聞いてみたら

どうしても分かれなければならないって


どうしてって聞いたら

どんどん高くなるとポキッて折れちゃうんだって


そんなものなのかなあ

ぼくのからだって変わってるなあ

 

ふと気がつくと、ぼくのとなりに

"もう一人のぼく"がいました

 

きみはだれ?


"きみなんて、よそよそしいね"   

"きみはぼくだし、ぼくはきみだし"


名前はなんていうの?


"あか、赤色のあか" 


ぼくの名前は?


"知ってるだろ"


そっけないねえ え? あお?


"そう"


青色のあお?


"そうだよ" 


ぼくの名前はあおだったんだ


"ほら、道が分かれるぜ"

"あおはどっちに行く?"


え? もうお別れなの?


"ああ"


いま知り合ったばかりなのに


"大丈夫"


大丈夫なんかじゃないよ


"大丈夫"


"ほら分かれるぜ どっちにする?"


じゃあ、右!  


"じゃあおれは左だ"



ぼくとあかは二つに分かれるとき

ぼくはあかに葉っぱで手を振ったけど

あかはまっすぐ前を向いて知らんぶり


でもぼくには分かるんだ

あかはとっても照れ屋さんだってこと


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る