走って走って


ぼくはいつも全速力で走っていた

風を切り、時間を切り、空間を切って走った


ぼくは寂しい世界から全速力で駆けたら

そこは井戸がひとつある緑のない荒野だった


この荒野にたくさん水をあげようと全速力で水を撒いたら

そこにたくさんの花が咲いた


この花をたくさん誰かにあげようと全速力で摘んでいたら

そこに空まで続く階段があった


空にいる誰かにあげようと階段を全速力で駆けたら

階段は空の高いところで行き止まりだった


階段の先をたくさんの花を積み上げていたら

さらに空に続く階段ができた


どんどん積み上げて階段を上っていくと

強い南風に花の階段が飛ばされてしまった


ぼくは鳥のように空高く舞い上がりたいと願ったら

花にいたミツバチたちがぼくを支えてくれた


ミツバチたちが支えきれなくなっていたので「もういいよ」と言ったら

ミツバチたちは泣きながらぼくを見つめていた


またぼくは鳥のように舞い上がりたいと願ったが

ぼくはただ空を落下するだけだった


ぼくは遠くに見えるあの牧場に行きたいと手を広げたら

南風がぼくの行きたいほうに吹いてくれた


牛や羊たちと遊びたいと願ったら

牛や羊たちが空飛ぶぼくを見てあいさつしてくれた


急降下していくぼくは優しい風に身をゆだねていたら

意識がなくなってしまった


そっと目を覚ますと

ぼくの目の前に大きな牛の顔があった


周囲を見渡すとぼくはたくさんの花束のベットに横たわり

ミツバチが飛び回り、牛や羊たちがぼくをなめていた








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