第19話 18.蕗嫌ひダルメシアンの弁当箱

 ワード18「ダルメシアン」

 これは単純に、困るだろうと思って出したワードだ。

ダルメシアンとえいば「百一匹ワンちゃん」。とはいえ、僕はこの話を知らない。スパゲティー両側から食べてキスしまうのは、この映画だっただろうか? それともあれは別の犬種だったろうか。子だくさんの犬で心温まるストーリーを作るディズニーはやっぱりすごいものだと思う。

 そういえば、ショッピングモールのペット屋で、ガラス越しにダルメシアンの子供を見たことがあった。僕は飼うなら猫派なので元気だな、という印象をもったにすぎなかったが。

 ダルメシアンについて少し調べたら、「馬車」と「火事」に関係が深いということが分かった。猟犬ではないらしい。

 小学校の頃仮住まいをしていた本家の父、それは僕の父の兄なので、伯父ということになるが、当時は離れに犬舎があって、巨大なポインターを二頭飼っていた。手足が異様に長く、腹が巻きあがっていて、顔が小さく、金網にむかってのび上がるとごつごつした肋骨とぺちゃんこな腹が、僕の背丈を遥かに超えて立ち上がって恐怖を覚えたものだ。

 伯父は当時、猟とカメラが趣味だったようで、僕は散弾銃の空の薬きょうなどで遊んでいた。専ら雉や鶉を撃っていたのだと思うが、玄関には鷹やイタチやタヌキなどの剥製などもあったように記憶している。猟をみせてもらったことはないので、伯父が撃ったものかどうかは分明しない。

 さて、俳句か。

 飼ったことのない犬種をどうすればいいのか? ダルメシアンは絵や映画でも構わないだろう。写真を検索して「写真で一句」みたいにすればなんとかなるだろうか。しかし、通り一遍な句しか出てこない予感がする。


 ダルメシアン憶えし姪の春帽子

 チューリップ越えダルメシアン遠ざかる

 ダルメシアン山吹の前疾走す

 遠き小火庭へダルメシアン座る

 ダルメシアン庭に座りて遠き火事

 ダルメシアン舌靡かせて夏野原

 炎昼をダルメシアンの舌垂れて

 馬車道に紅葉かつ散るダルメシアン

 しやぼんだま尻尾真白きダルメシアン

 秋夕焼ダルメシアンのリード伸ぶ

 


『ダルメシアン』でなければならぬ必然性に乏しい句ばかりだが、これが今の実力である。

 表題句


蕗嫌ひダルメシアンの弁当箱


 子供時分、弁当に蕗がある日はハズレだった。自分で料理するようになって、蕗は面倒臭いということが分かった。母は料理があまり好きではなかったはずだが、なぜあれほど蕗を弁当に入れたのだろう。

 今回はこれで。

 

 

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