粉塵に帰す世界首都

1976年3月8日 ゲルマニア(ベルリン)近郊

 「…総員、ベルリンに向け、進軍せよ!」

 その声と共にフランス軍が一斉に進撃した。ドイツは必死の抵抗を行うが、粉砕され、崩壊していった。メインストリートに進撃したフランス軍はあらゆる建物を破壊し、ゲリラ戦をしようとするドイツ軍を潰した。フランス軍の軍民問わない無差別攻撃で民間人の被害も拡大した。さらに、ベルリン中央駅舎にフランス軍が突撃。激しい銃撃戦で壁には無数の穴が出来た。フランス軍が投げた手りゅう弾でホームは爆破された。列車内で徹底抗戦を行うドイツ軍には列車を倒し、ドアをこじ開けた。そして、その隙間からあらゆる毒ガスを投入。列車に籠っていたドイツ軍は苦痛の表情を浮かばせながら死んでいった。ホロコーストで亡くなった多くのユダヤ人のように。

 ベルリン中央駅の制圧後は、全軍でドイツの象徴とされているフォルクスハレへ進軍を開始。激しい砲撃戦や銃撃戦のど真ん中に立たされたフォルクスハレは崩壊寸前であり、それはドイツの現状を表しているようだった。南北を結ぶメインストリートを侵攻しているフランス軍は味方以外の全ての物に攻撃を加えた。そして、攻撃されたものは一瞬で瓦礫と化した。

 ドイツ軍は最後の抵抗としてフォルクスハレの中に立てこもり、必死の防戦を続けていたが、3月11日11時29分38秒にあるフランス軍砲兵の砲弾がフォルクスハレのホール部分に着弾。直後、轟音と共にフォルクスハレは崩壊。中にいた軍民合わせて30万人中生き残ったのは僅か5千。その五千人もフランス軍の無差別攻撃によって死んでいき、最終的に生き残ったのはたったの102人という有様であった。その後もドイツ軍は激しい抵抗を見せたが、時間稼ぎにすらならなかった。そして、16時59分35秒、ドイツはベルリンを放棄。ヒトラーの考えた千年帝国とゲルマニアは粉塵と化した。

 そして、12日にベルリン全域をフランス軍が占領。ドイツ首脳陣は港からの脱出を試みるも、それをフランス軍が察知。大量の爆撃機が残り少ないドイツの海岸線を攻撃。これに巻き込まれたドイツ首脳部は全員が死亡。そして、13日にウクライナ・ベラルーシ・西ウラルなどのドイツの同盟国が一斉に大ゲルマン帝国連合を抜け、両陣営と講和。味方にも裏切られたドイツ軍は3月17日に降伏。ヨーロッパ方面の残存部隊も20日までに降伏した。ドイツは取り敢えず東西に分断。東は上海条約機構の影響下。西は第五インターナショナルの影響下に置かれた。


 1976年3月28日 フランス・コミューン パリ

 「…そうか。ドイツを滅ぼした…か。」

 「はい。ヨーロッパ方面の残存部隊もすでに降伏。アフリカではいまだに抵抗しているが、もうすぐ制圧できるでしょう。」

 書記長とその部下がそういった話をしていると、突然、通信兵が部屋に入ってきた。

 「も、申し上げます!」

 「何だ?随分と慌てているようだが…」

 「は、はい。実は…カナダ軍が…」

 「あの英本土から逃げ出した負け犬どもか…それがどうした?」

 「カナダ軍が盟友イギリス連合領のインヴァネス近郊に上陸!アイルランドもこれに便乗し、宣戦布告しました!」

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