中東戦争―後
1975年5月26日 エチオピア アディスアベバ STO前線司令部
「この度の戦いは優秀なる我々が勝利を収めた。これでドイツを中東から排除できた。それから、つい先ほどイランとナイル連邦が我々の陣営に入ることを表明した。そこでインド洋と地中海をつなぐスエズ運河の攻略を開始したいと思う。詳しくは近江中将が説明する。」
「はっ。まず、イラン国境から親独国のイラクへの侵攻を開始。そのままの勢いで伊領シリアを占領します。その後、ベイルート・ダマスカス・アレッポに大規模飛行場を建設し、そこから常時スエズへの爆撃を行ってください。また、ナイル軍にスエズへの攻撃を仕掛けさせます。」
「それでは質問は?」
「はい。飛行場建設のための資材はどうやって用意しますか?」
「本国から輸送する。他は無いか?内容だな。それでは明朝5時半に作戦開始だ。」
1975年5月27日 イラク首都バグダート
イラク軍前線を突破したS.T.O軍はバグダードに到着。駐留イラク軍と交戦に入る。
「オラオラ!止まるんじゃねえ!」
「支那共にチグリスを渡らせるな!」
激しい戦闘の末に歴史的建造物は破壊しつくされ、バグダードは更地になった。その後、バグダードをイラン軍が占領。また、南部の主要都市のバスラも陥落し、抵抗する力を失ったイラクは降伏した。その後、STO軍は伊領シリアに侵入し、駐留するイタリア軍を容易く撃破。ベイルートを占領し、シリア方面を完全に制圧した。
6月7日 ベイルート
「いやー、わざわざ何でこんなところに大規模飛行場を立てようとするんですかねえ。ナイル軍の奴を借りればいいのに。」
「ほんと。上層部は何を考えているんだ。さてと、後はここをやれば…完成だ!」
「お、早速戦闘機が来たぞ。…にしても多いな。大規模とはいえ、こんなに入るものなのか?」
ベイルートの飛行場が完成した翌日からベイルート・ダマスカス・アレッポの飛行場から毎時戦闘機や爆撃機が飛び立ち、スエズを爆撃していく。しかし、ドイツ軍の対空戦闘が凄まじく、大きな戦果を挙げることができなかった。
6月12日 中国占領下シンガポール
「現在、スエズへの爆撃を行っているが、効果は微妙だ。何か決定的な案は無いか?」
「はい。」
「なんだ?言ってみろ。」
「先日の戦闘で鹵獲したレーザー砲で宇宙空間から攻撃します。」
「一見無理そうだが……本当にできるのか?」
「我々はロケットを作れます。それを使えば行けるはずです。」
「うむ…そうか…ならばやってみよう。」
6月17日 日本領 樺太 某所
ここではスエズ攻撃用の人工衛星「黒龍」が発射されようとしていた。
「発射まで5、4、3、2、1、発射!」
その声と共にロケットは遥か上空へと旅たった。
「さてと、後は本部の仕事だな。」
同日 19時32分 筑波宇宙センター
「現在、黒龍はアンマン上空を飛行中。スエズ到達予想時刻は…1分後です。」
「うむ。ではレーザー砲射撃の準備をしろ。」
「レーザー砲発射まで残り15、14、13、12、11、10、9、8、7、5、4、3、2、1、撃て!」
同時刻 紅海 中国海軍戦艦「劉邦」
「そろそろ着弾のはずだ…」
「艦長!スエズの方を!」
船員が指した方向には白い光の筋が空から地上に降りていた。
「ん?おお!作戦は成功だ!直ぐに連絡を!」
この射撃により、ドイツスエズ軍団は壊滅。要塞は破壊しつくされ、人員も半減した。
6月18日
夜明けとともに大量の兵士がスエズへ突撃する。要塞を破壊されたドイツ軍は人海戦術に勝てず、僅か30分で西岸が陥落。残る東岸も激しい攻撃により、降伏した。これにより、ドイツ中東方面軍は完全に壊滅した。ドイツの滅亡は秒読みの段階に入った。
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