今日はまだ
ほほほさん
第1話
夏休みが明けたまだ少し気だるげな暑さが残る9月。午後2時、帰りの会、先生の話がやっと終わる。
早く、早く、早く---。
「はい、じゃー、日直さん挨拶おねがい」
「はーい。せんせー、さようなら。皆さんさようなら」
「「「さよーなら」」」
それがスタートの合図。一気に廊下に駆け出す。
「こら!走っちゃダメだってい、、、」
先生の声が遠くなる。
階段を飛び降りる。
踊り場で内履きがキュ!っと甲高い音を鳴らす。
あっという間にもう1階だ。
正面玄関を出た頃にはいつもの5人。
「今日はどうする!?」
「とりあえずいつもんとこ!」
「デュエマは?」
「もちろん!!」
「新しいデッキ持ってく!」
「ポケモンも持ってくね〜」
丘上の学校から、それぞれの家まで一気に掛け下りる。
一人、また一人家に着く。
1番遠いのが僕の家。まだ着かない。まだ着かない。
早く、早く、早く---。
着いた!!
「ただいま!!」
玄関を開ける。宙に舞う靴。階段を今度は駆け上がる。ランドセルをぶん投げる。
ゲーム、カードをカバンに入れる。
「いってきまーす!!!」
お母さんが何か言っていたけど聞こえない。聞いてる暇なんてない。もう皆きっと待ってる。急げ。さっき走った道をもう一度走る。もうすぐだ。
早く、早く、早く---。
「おまたせ!!!」
ついた、、、。息が上がってることに初めて気づいた。汗が滴る。
息を整えるようにゆっくり歩く。
皆の家から丁度真ん中らへんにある公園。その一番奥、ドーム状の遊具があるその場所が僕達のいつもんとこ。
「おせーよー」
「全力疾走だって」
「ちゃんとゲームとカード持ってきた?」
「もちろん」
「最初デュエマな!今日は負けねーから!!」
「今日も勝つよ」
「えー、ポケモンからしようよ〜」
「じゃー今日はポケモンからな」
遊具に腰掛ける。
大丈夫、時間はたっぷりある。
大丈夫、いっぱい遊べる。
大丈夫、あんなに走ったんだ。
大丈夫、
今日はまだ、始まったばかりだ。
今日はまだ ほほほさん @hohohosann
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