第377話 ファザコン発言しとるの


『東方よりは紹介が必要ないぐらい参加者中トップ知名度!最名門軍属家系ストロング家のご子息!大将軍の血を継ぐエリート系イケメン!!スモウチーム副将!メ ガ ロ・バ ル・ス ト ロ ン グ!!!』


 メガロの登場に今までで一番の歓声が沸く。紹介通り上流階級の中でもメガロの名を知らない者はいない。忘れそうになる設定だが王族と遠縁であり大将軍が当主のストロング家は血筋・権力ともに近衛チームと比べても頭一つ抜けている。


『続いて西方よりは近衛騎士唯一の移転入隊者!戦場で叩き上げられた隊最強のおじ様系イケメン!近衛チーム副将!ラ ン ス・ジ ル・ロ ッ ト!!!』


 ランスにも劣らずの歓声が沸く、主に近衛騎士隊の隊員達だ。次こそ勝ち星を上げてくれるという期待が表れている。

 

『エリート系イケメンVSおじ様系イケメンとなりました副将戦、どう思われますか陛下?』

『そんなフリ方をされても言葉に困るのだが…』

『そうよね、この国で一番のおじ様系イケメンはお父様だものね』

『なるほど!これは失礼しました!』

『そんな謝罪は求めていない。本題に戻すが、メガロ選手とは何度か顔を会わせたことあるが以前より逞しくなったように思える、褌一丁だから際立っているだけではないだろう』


 事実メガロは身長とウエストのサイズは変わらないのに一年前の服がきつくなっている。特に下半身が鍛え上げられたことでズボンの類は買い替えたほどだ。


『次にランス選手だが移転前の実績をヘルシング元帥から聞いた事がある、近衛騎士隊に入隊させる際余の許可も必要だったのでな。経験だけで言えば選手十人の中で別格と言えるだろう』

『おぉっ!ロイド選手は陛下と元帥が認める実力という事ですね!姫様はどうお考えですか?』

『お父様が解説した以上の言葉はないわ、さっき言った通り私も注目の試合よ』

『つまりそれは姫様も結果を予想出来ない試合という事ですね、これは近衛チーム初勝利なるかもしれません!』


 

 闘技台では審判が改めてルール説明をしている。主に変更された模擬剣の許可の詳細について。


「寸止めでの判定はありません。戦闘不倒と我々が判断すれば割り込みますが、当たり所が悪ければ命の危険もあります。承知の上で試合に臨みますか?」


 模擬剣は鉄製なので当然素手より危険度は激高、審判陣はもしもの場合体を張って止める為防具を身に付けている。

 

「当然だ」

「そうでなければ闘技台に上がっていない」


 メガロもランスもその程度、ルール変更を伝えられた時から承知している。


「では両者選手、開始線へ」




「モグ……」

『まもなく開始です、皆様余所見厳禁ですよ!!

「っ!…ゴクン」

「ふふっ、ついつい口に運んでしまうわよねそのお弁当」

「選手が真剣なのに失礼な行為だな」

「別に良いと思うわよ。お弁当食べながら試合観戦なんて一般的には当り前のことだもの」

『ですが実況席で解説しながらお弁当は当り前ではありません!』


 うっかり拡声器を通してツッコんでしまうステイシー。


 そんな解説席のやり取りなど関係なく、


「王覧試合副将戦、はじめ!」『ドドンッ!!』


 審判の手が振り下ろされ、試合開始の太鼓を叩く音がなる。




 開始と同時にランスが一気に間合を詰め、上段から剣を振り下ろす。

 初撃からりにきているとしか思えないその一撃を、メガロは正面から受け止める。

 ランスは続けて二連の斬撃、それもメガロは的確に防ぎ横薙ぎの斬撃を繰り出す。後ろに下がってかわしたランスにメガロが追撃で喉を狙った刺突。

 ランスは突きを打ち払い返す剣で首を薙ぎにいく。メガロは屈んで剣をかわし下から剣を斬り上げるがランスの剣によって受け止められる。


 会場に剣と剣がぶつかり合う音が幾多も響き渡る。

 

『おおぉっ!!開始早々激しい攻防!これは本当に余所見する間などありません!!』

『模擬剣とて全力で叩きつければ怪我では済まない、なのに両者疑いようもなく全力。さすが軍人の試合だな』

『…ええ、見事な試合だわ』


 貴族の観客達も激しく見応えある剣の攻防に今までで一番盛り上がっている。




 国の上層部が集まる観客席。


「おい、どこが勝率八割なんだ、互角の勝負ではないか」


 周りが試合に集中している中、ケオネスが隣のヒョードルに小声でぼやく。


「…メガロ・バル・ストロングに才能があることは昔から分かっていた。才能を持つ者特有のスランプに陥っていた様子もあったが…、ヨコヅナ君と出会い徹底的に基礎から鍛え直した事で開花し始めてるようだな」


 焦燥を感じるケオネスとは反してヒョードルは笑みを浮かべている。


「似たような事を休憩中にも聞いた、今は若者の成長を喜んでいる場合ではないだろ」

「似たよう事なのは想定の範囲内だからだ、ランスの八割勝利という予想に変わりはない。互角に見えるのはランスが合わせているんだ」

「…手を抜いているということか?」


 ケオネスにはとてもそうは見えない。


「力を加減ではなく、合わせているのは戦い方だ」



 ハイネと使用人が座る観客席。


「今までで一番いい試合ではあるの、模擬剣可にしたことで多少は見ごたえある」

「メガロさんはよくやってます…が、ヘルシング元帥が認めた近衛騎士がこの程度のわけないですよね?」

「ロット殿とは昔、近衛騎士隊に移転する前に手合わせしたことあるが、そこそこ手こずったな」

「ハイネ様が手こずった相手ではメガロ様に勝ち目ありませんよ」

「まだ本気では無さそうだが…にしても昔に比べ動きが鈍いな」

「戦場を離れてボンボン共のお守りをしていては鈍っても仕方あるまい」

「メガロさんが勝つにはその隙をつくしかないですね…」


「期待薄ですが」だがな」じゃがの」


 ヨコヅナにあっさり負けるところばかり見てる三人は、メガロの勝率が二割もあれば良い方だと思っていた。







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