第360話 転生したらゴブリンやった
ないわ~、ほんまないわ~。
なんでゴブリンやねん!
ワタシの名前は
沼で溺れたら思い出した、ワタシの前世の死因は溺死やわ。自殺や他殺じゃないで、それなりに幸せやったし殺されるほど恨まれてた覚えもないから多分事故死や。
だから前世のことはもうええ、大事なんは今世や。大事なことやから二回言うで、
なんでゴブリンやねん!
ワタシ人間ちゃうねん、ゴブリンやねん。
異世界転生っちゅうたら聖女とか勇者とか、せめて悪役令嬢やろ。
何よりチート貰ってへんし!ほんまシバキ倒すで神様!
てなことを記憶を取り戻してから百万回は思ったけど、何か変わるわけちゅうし頑張ってゴブ生を謳歌するしかないわけや。
ワタシが暮らしてんのはどっかの森の小さい穴蔵。
食う物は木ノ実や虫、蛙や蜥蜴、兎や鼠、狩れるなら猪。ゴブリンは雑食で森では食う物に困らんのは不幸中の幸やな。記憶思い出してから直ぐは若干抵抗あったけど。
でも罠使って狩るんは人間の知能あってこそやな、周りのゴブリンにも一目置かれるようになったし。
この森に生息する動物でゴブリンの天敵はおらん。狼はおるけどこっちからちょっかい出さんかったら襲って来ることはない、ゴブリンは不味いんやろな。
これは『転生ゴブリンのスローライフ』とか題名がつきそう、と思ったんも束の間。
ゴブリンの天敵はおった、冒険者や。
森に住んどるわけちゃうのにちょくちょく現れおんのよ。そんでゴブリン殺して耳だけ切り取って帰ってくねん。
異世界冒険モノにはありがちな設定やけど、平穏に暮らしてるだけのゴブリンからしたら酷業の限りやでこれ!
でも何でかゴブリンの方も冒険者に突っかかてく奴多いねん。腹が減ってるわけでもないのに。
聞いたらゴブリンには物欲があるらしく、冒険者が身に付けている物を奪い取りたいみたいや。人間を襲って物を奪う魔モノってのがゴブリンの認識なんやったらそりゃ討伐対象やわ。
聞いたら、と言ったけど別にゴブリン語があるわけやなくて、なんとなく意思疎通が出来る感じ。理屈は分からんけど異世界やからええやろ。
とりま冒険者を襲いたい奴には好きにさせることにした、ワタシより年上やから言うても聞かんし。でも同年や下には人間から逃げるよう言っといた、ついでに見かけたらワタシに教えにくるようにも。
ワタシは森に来る人間の情報収集に精を出した。
分かったことは大きく分けて三つ。
一つ目、この森に来る人間はほぼ冒険者。
一般人が来てもしょうもないんやろな。
二つ目、冒険者は森の中心部にある廃屋を目指す。
お宝でもある思ってんかな…?ないけど。
三つ目、冒険者がショボい。
ほとんどが若くて未熟って感じの冒険者や、ゴブリン討伐なんか新米冒険者の仕事なんやろな。
たまにおっさんも来るけど新米に比べたら腕がたつ程度にしか見えん。あと魔法を使う冒険者もおるんやけどちょっと炎を飛ばすとか強風を吹かすぐらいやねん。
正直ショボくてガッカリやわ。
異世界モノの冒険者つったら、目にも止まらない剣捌きでゴブリン数体を細切れにしたりとか、魔法で周りの木々ごとゴブリンを粉微塵にしたりとか、そんなん想像してたんやけどな~。今のワタシからしたら敵やから弱い方が助かんねんけど…。
ショボい言うてもゴブリンが正面から一対一で勝つのはまず無理や、今は逃げるしかない。冒険者の現れる方向や行動パターンは大体決まっとるし、森のゴブリンを駆逐しようつう気はなさそうやからなんとかなるやろ。
冒険者と遭遇しないよう気をつけながらのんびり暮らしてたある日、子狼を拾った。
親狼は死んでた。多分冒険者にやられたんやと思う、ゴブリンがやったんなら食ってるし。弱ってたから穴蔵に連れ帰ってエサあげてたら懐かれて一緒に暮らすようになった。犬は嫌いやないからええんやけど。
またある日、罠に冒険者がかかっとった。
足元の糸に引っかかると上から網が降ってくるメッチャ頑張って作った罠にやけど、人間の癖になんで絡まってんねんアホちゃうかコイツ。ワタシの方見てなんか言うとる、多分「ゴブリン如きが」とかやろな。どないしよコイツ…殺すか。適当に言うてんちゃうで、今後のこと考えたら討伐に来る人間躊躇なく殺せなあかんし、強い敵倒したら進化出来るかもしれん。このアホにはワタシの糧になってもらおう。
硬い木の棒に石をくくりつけたお手製の武器で頭を殴り回したら死んだ。
途中から命乞いしてるっぽくてちょっと心が痛んだけど、なんか目付き悪いしどうせゴロツキ上がりの底辺冒険者やろ…知らんけど。
冒険者を1匹で倒したら周りのゴブリン達から慕われるようになった。これは逆ハーレムか?全然嬉ないけど。
でもワタシの指示に従ってくれるのは助かる、1匹で出来ることには限界があるしな。
自分も冒険者を倒したいって言うゴブリン達には前世で漫画かなんかのうろ覚えな四人一組での連携攻撃を教えといた。
まぁ、うろ覚え知識のゴブリンがやるちゃちな連携なんて
えっ!
倒したわけじゃないけど冒険者は逃げ帰ったらしい。どんだけショボいねん。
それからは基本4匹一組で行動させるようにし、戦うか逃げるかは好きにさせた。
少し月日は流れワタシは気づいた、と言うか 希望はないことを悟った。
あるやん、異世界モノやとゴブリンが経験値積んだらゴブリンナイトやらゴブリンキングになんの。まぉ、ワタシやったらゴブリンクイーンやけど。
でも無いっぽいねん!同い年やとワタシが一番経験値積んでるはずやのにちっこいねん!力も弱いねん!
身体能力は生まれ持った個匹差。ゲームみたいなレベルアップとか、上位種族に進化とかはないみたいや。
因みに
狼に乗る姿が尊敬に値するのか、森のゴブリン達からボス扱いされるようになった、せめて
冒険者に関しては撃退率が上がってる。罠と連動して鳴子を設置したのが効果的やったんか、ゴブリンでも物量が圧倒的なら勝てんねん。
でもこれ……、ちょっと不味いないか…。
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