第346話 靴屋倅は転生者!? 29
手合わせが終わったら王女様の
「まずレブロット」
「ははいぃっ!」
王女様の前で緊張するのは分かるけど、レブさんキョどり過ぎじゃね?
と、思ったんだけど…、
「まさかとは思うけど、今のが本気かしら?」
冷たっ!?王女様の目がとても冷たい!!この時期褌一丁でも暑いはずだのに鳥肌が立ってきた。
「いいいいいいいえいえいえ!!」
直で視線を向けられてるレブさんなんかガクブルだ。
「ア、アルは軍人ではなく素人なので、手加減して調子を合わせただけでして……」
「なら次は本気でやりなさい。ドジャー家の威信がかかってると思って」
「りょりょ了解しました!!」
次に王女様は俺に視線を向ける。でも冷たい目はもうしてなかった。
「アルだったわね」
「は、はい!」
「冒険者らしいユニークな戦い方だったわ」
お~、褒められた。てか王女様、俺が冒険者だってことも知ってるんだ…そういやオルレオンさんがちゃんこ鍋屋の接客員だってもの知ってたな。選抜の為に参加者の簡単なプロフィールをヨコヅナ君かラビスさんに聞いてたのかな。
「とは言え、チームに入れるには地力が足りてないわ。後は手合わせを見学するなり自身の鍛錬をするなり好きにしていいわよ」
不合格ってことか…。無理だとは思ってたしホッとしたけど、ちょっと悔しいな。
「なんだあれ…?」
信じられない手合わせに思わず声が出てしまった。こっちの手合わせではなく、離れたところでやってるヨコヅナ君の手合わせ、相手は知らない女性。
その女性もオリアさんや王女様に引けを取らないとびっきりの美人。てっきり王女様の護衛だと思ってた、一緒に来たし二本の剣を腰に提げてるし。
最初はこっちの手合わせを見てたんだけど、途中から何故か準備運動を始めてヨコヅナ君の基礎鍛錬が終わったところであっちに行って手合わせを始めた。
「ルルガさん、あっちでヨコヅナ君と手合わせしてる女性誰ですか?」
同じく不合格となり近くに居たルルガさんに聞いてみる。一応言っておくとルルガさんは決して弱くない、剣士として俺よりずっと上だ。でもここだと俺の次に小柄で素手だと勝つのは厳しいようだ。
「ハイネ様だ。将軍『閃光のハイネ』の噂ぐらいアルでも聞いたことあるんじゃないか?」
「…ヘルシング元帥の娘でアイドル将軍とか聞いたことあります。他にも親のコネで昇進して実力が伴っていないという噂もありましたが…」
「後半はハイネ様が若くして将軍に出世したのを妬む者が流したデマだな。実際は将軍の中でも屈指の実力者だ」
「そんな人がどうしてヨコヅナ君と手合わせしてるんですか?」
「…俺も直接聞いたわけではないが、ハイネ様はヨコヅナ殿を軍に入隊させたいらしい」
あぁ~、あんなに強いヨコヅナ君だ。軍がスカウトしない方が不自然に思えるな。
「でもヨコヅナ殿が断っているから力尽くで入隊させようとしてる、って話だ」
「力尽くって…、強引な人なんですね。……あっち見て来ていいですかね?」
「アルは軍人ではないから大丈夫だろう。王女様も後は好きにしていいと言っていただろ」
「はい、ではちょっと行ってきます」
「ようカル、一昨日ぶりだな」
今日はカルも訓練場に来ている、ヨコヅナ君の相棒なのにここで見るのは初めてだ。
「向こうは良いのかアル?」
「不合格になっちまったからな」
「アルの実力では仕方ないの」
「さらっと傷つく事言うなよ」
「言われたくないならより精進することじゃな」
これでも頑張ってるんだけどな~…。
俺の事は置いといて、
「今ヨコヅナ君が手合わせしてる相手、将軍『閃光のハイネ』って聞いたんだけど」
「アルはハイネとは初対面じゃったか」
「ああ、初めて見た。……で、俺には手合わせでヨコヅナ君が将軍にボコられてるように見えるんだけど?」
「うむ、見ての通りじゃな」
やっぱりそうだよな、ヨコヅナ君がボコられてるよな、あのヨコヅナ君が…。
「以前に比べればボコられ具合がマシになっておるがの」
これでマシになってるんだ!?
でも無理ないか…、
「将軍…ハイネ様が俺にはほとんど見えないんだけど、あれは魔法?」
見えないんだよマジで!?
今までも速くて見えないことあったけど、それは瞬間的な動きで常時見えないって意味じゃない。でもハイネ様は逆で瞬間的にしか見えない、残像で四人に見える瞬間もあるけど。目の前で見てても意味が分からん。
「それは速過ぎて目で追えてないだけじゃ。魔法は使っておらん」
魔法使ってないのか…、本当か~?。
閃光って二つ名がついてるからスピードに特化した将軍なのは分かるけど速過ぎだろ!これはもうチート確定だよな。
「魔法じゃなくても何か特別な力を使ってるんじゃないのか」
「ハイネは武において天才と言えるが、特別な力という言い方は違うの。才能にかまけず強くなる努力を惜しまず続け、軍人として多く実践を乗り越えている。あれはそうして手に入れた力じゃからな」
努力して実践を乗り越えた天才か……。チートと呼べるかは議論が分かれそうだな、議論できる相手いないけど。
いずれにしろ、
「ヨコヅナ君より強い人はいるんだな」
「そりゃいるじゃろ」
「いや俺、ヨコヅナ君が負けるとこ見た事ないから。今日初めて見ることになるかな」
手合わせを見るに…と言ってもハイネ様の動きはほとんど見えてないんだけど、そんなスピードゆえ、ヨコヅナ君でも防御だけで精一杯。それでも完全に防ぐことは出来ていない、真剣なら既に死んでるな。
「それはどうじゃろうな。確かにハイネはヨコより強いが、ヨコが手合わせで負けたことはない」
「え、それじゃいつもは勝ってんの!?」
「いや、いつも引き分けじゃ。制限時間内にヨコが膝を着いたことがないからの」
その後ヨコヅナ君はボコボコにされても膝を着く事はなく、カルの「そろそろ朝飯の時間じゃぞ」という声に二人は動きを止め手合わせは引き分けとなった。
「…ハイネ様の持ってるの剣、実は柔らかい素材で出来てたり」
「鉄製の模擬剣じゃよ」
「…速いだけで痛くないとか」
「そんなわけないじゃろ。メガロ達なら一撃で立てなくなっておる」
「ヨコヅナ君頑丈過ぎじゃね!?」
「ハイネが『閃光のハイネ』ならヨコは『不倒のヨコヅナ』じゃからの」
ヨコヅナ君は将軍じゃねぇだろ!!
ヨコヅナ君の手合わせも、相撲チーム選抜の手合わせも終わり、再度王女様の前で整列となった。
チームに選ばれた四人は前で並んでいる。
選ばれたのは、メガロ様、レブさん、オルレオンさん、ログルスさん。ヨコヅナ君との手合わせではいつも素手で戦ってる人達だし、身分もバラバラだから本当に格闘の実力で選んだのが分かる。
「選んだのはこの四人だべか」
ヨコヅナ君は整列せず普通に王女様の隣にいる。カルとラビスさん、ハイネ様、メイドさんも整列はしてないけど四人は女性だから良いとしても、ヨコヅナ君はこっちで並ぶべきじゃないのかな?メガロ様も並んでるんだし。
「ヨコは他にメンバーに入れたい者がいるかしら?」
「オラも姫さんが選んだ四人で良いと思うだよ」
んん、ヨコ?姫さん?何その親し気な呼び合い方!?てかヨコヅナ君王女様相手にタメ口だし!?
王女様がヨコヅナ君の支援者みたいなことは聞いてたけど、実はただならぬ関係だったりするの??
「今日中にも四人の長所短所、重点的に鍛えるべき点をまとめて書類で渡すわ、明日から稽古の参考にしなさい」
これは選抜メンバー四人に向けられた言葉。
「「「「はいっ!」」」」
「ヨコは四人の指導を頼むわ」
「それはいいだが…基本の稽古内容と時間は変えないだよ」
四人と違い、王女様の
「ええ、手合わせの際に指導する今までのやり方で構わないわ」
王女様もそれを当り前のように受け入れてる…ほんとどういう関係なんだろ?……考えても分かんないから後でメガロ様かレブさんに聞いてみよう。
その後、王女様は日時や会場は後日連絡すると伝え、
最後に、
「言っておくけど、私は五戦全勝以外認めない。皆もそのつもりで試合まで鍛錬しなさい」
「「「はははいっ!」」」
「はい!」
王女様の威圧感ほんとハンパないな~、オルレオンさん以外ガクブルだよ。
俺不合格で良かった。
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