第345話 靴屋倅は転生者!? 28
早朝の訓練場は異様なほど緊張感が支配していた。その原因は整列した俺達の前に立つ一人の女性。
オリアさんに勝るとも劣っらない美人、ただ容姿が整っているだけでなくオーラと言うか存在感が一般人とは桁違い。
それもそのはず、
「初顔もいるから自己紹介しておくわ、私はコフィーリア・ヴィ・ダリス・ワンタジア、この国の第一王女よ」
一般人とは生まれながらの桁違い、正真正銘の王女様。
以前参加した王都闘武大会で遠目に見た事はあるんだけど、近くで見ると思ってたより小柄だ。でもそれを感じさせないのは王族としての覇気ってやつなのかな。
メガロ様ですら「話があるから皆を整列させてメガロ」「はい、直ちに!」ってやり取りしてた。
王女様の前で褌一丁の男達が整列してるって何プレイだよ、って思ったけど真剣な雰囲気だから話に集中した方が良さそうだな。
「稽古の邪魔をしてしまって申し訳ないけど、今日はあなた達に
あれ、「頼みたいこと」って聞こえたのに頭の中で「命令」に変換された…?王女様の特殊能力か?
王女様の頼み(命令)を簡単に纏めると、
ヨコヅナ君が王覧試合で近衛騎士と戦うことになったけど、5対5の団体戦なので相撲チームの残り4人の選手が必要。それを稽古の参加者から選びたいから、今日は参加者同士で手合わせして実力を見してほしい。
というものだった。
王覧試合って王様が見てる前で行う試合だよな。めっちゃ大事な試合じゃん!出たくないな~、まぁ実力的に選ばれないと思うけど。そもそも俺は四股やすり足だけしかやってなくて相撲技は一切使えない。選別に参加する意味なくね?
「質問がある者はいるかしら?」
どうしようかな…、王女様相手に「意味ないんで参加しなくていいっすか?」とか聞けないしな…、
俺が悩んでいると先に手を挙げたのが、
「宜しいでしょうか?」
オルレオンさん。周りが王女様相手に変なこと言うなよ!と目で訴えてる。
「ええ」
「選別基準は実力だけでしょうか?それとも地位や役職も加味されるのでしょうか?」
「実力だけよ。強ければちゃんこ鍋屋の接客員でも入れるし、弱ければ大将軍の息子でも外すわ」
「分かりました、答えて頂きありがとうございます」
オルレオンさんやる気満々って感じだな。ヨコヅナ君の弟子を名乗ってるぐらいだから、そりゃ相撲チームに入りたいわな。
俺も質問してみるか。王女と会話する機会なんてもうないだろうし。
控え目に手を挙げつつ、
「いいですか?」
「ええ」
「まだ相撲稽古に参加して日が浅いのですが、相撲らしく戦った方がいいのですか?」
「それは違うわ。褌一丁で無手、反則は目潰し・金的・噛みつき、ルールはそれだけ。あとは好きに戦ってもらって構わないわ。今日は地に足の裏以外が着いても負けにならない、本番もほぼ同じルールよ」
そっか、王覧試合が相撲ルールなわけないもんな。
「選ぶのはスモウが出来る者ではなく試合で勝てる者。スモウの使い手はこの国でヨコヅナ一人と明言しているから、あなた達がこだわる必要はないわ」
ということはやっぱ俺も選抜に参加しないといけないって事だよな、手合わせの相手が手加減してくれる人だといいんだけど。
それと気になる事がもう一つ……王女様の声、最近どこかで聞いた気がするんだよな~…?
相撲の基礎鍛錬はせず各自身体を動かしてから手合わせが始まった、ヨコヅナ君は一人で稽古してるけど。誰がチームメンバーになるか気にならないのかな?
「そこまでです~」
審判は王女様と一緒に来たメイドさんがしている。ラビスさんと違って黒くない普通のメイドさんだ、喋り方は独特だけど。
「では次~…レブロット様、アル様、前に出てください~」
早くも俺の番が来た、相手はレブさんか……。手合わせの対戦相手は事前にラビスさんが決めてたらしく、メイドさんはメモを見て名前を呼んでいる。ラビスさん自身はヨコヅナ君についてて手合わせ見てないけど。
俺はレブさんと相対する。
「コフィーリア王女が見てる前であまり手加減はしてやれないから怪我しないよう気を付けろよアル」
王女様の心証を悪くするわけにはいかないってことか、まぁ当然か。
俺もやるだけやってみますか。
「両者構えて~…始め~!」
レブさんは相撲の構えをとってる。実は俺、前世の知識でこの構えの攻略法を知ってるんだよ。
まず、ブチかましを喰らわないよう十分間合いをあける、土俵だと負けになる距離だけど今は範囲を決められてないから問題ない。そして相手を中心に円軌道で横に移動する。当然レブさんは俺に合わせて直ぐ体の向きを変える、あの構えは正面にしか対応出来ないから。そのまま一定方向に回り続ける。そうすると…、
「くっ…」
レブさんは耐えれなくなって立ち上がる。
「目が回りますよね」
「おいアル、真面目にやれ!」
「真面目にやってますよ」
回復される前に一気に近づき下段蹴りを喰らわせる。よし、ヨコヅナ君みたいに硬くない。でもレブさんは直ぐに張り手を繰り出してきた、それを後ろに下がってかわす。
レブさんはパワーはあるけどスピードがない、俺でも十分対応可能。回避しながらちまちま下段蹴りを喰らわせる。
「こんな蹴り効くかよ!」
俺もこんなので倒せるとは思っていない。
「さすがデブさん、肉が厚いですね」
「こっのガキがぁ!」
怒りで突っ込んでくるレブさん。今まで下段蹴りで意識を下に向けさせてた為顔を守ろうとしてない。
俺は魔法で作り出した水をレブさんにぶっかける。
「なっ!?」
驚いて動きを止めたレブさんの顎めがけて拳を叩き込む。
お!今までに無いほどの手応え……だったんだけど、
「捕まえたぞ、アル」
やっべ~。何とか逃げようとするがビクともしない。
「うぉらっ!」
天地がひっくり返り、背中から地面に叩きつけられた。
「痛ってぇ~、…ぐへっ」
さらに腹を踏んでくるレブさん。
「お、こら、誰がデブさんだ」
そのまま体重をかけてくる。お、重てぇ~、しかも褌デブに踏まれるとか精神にもダメージがある。
「そこまでです~」
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