第318話 仲良しなのじゃ
シアンが集合場所に着くと、既に全員集まっていた。
「おはようございます」
「うぃーす」
「おはようなのー」
「間に合いましたか?」
「大丈夫だぜ」
「ウィピ達も今来たとこなのー」
待ち合わせの相手はエルリナとウィピ、だけでなく、
「久しぶりシアン」
「久しぶりじゃの」
「お久しぶりです。クレア、カル」
クレアとカルレインも一緒だ。
『龍炎の騎士』の三人が王都に来る日が決まり、手紙で会う約束をしていたのだ。もはや仲良し女子五人組である。
「シアンは王都ではエルリナ達と別に暮らしておるのじゃな」
「顔を見せに実家に数日泊まってるだけですよ」
「人族の貴族の家って、仕来たりやらなんやら面倒臭いイメージがあるわ」
「実際面倒ですよ」
シアンは冒険者になった経緯を簡単に話す。
「当主になることを認められなかったから冒険者にの……」
「男しか当主になれないとか意味分かんない。それで家が潰れたらバカなだけじゃない」
「ええ、クレアの言う通りです。弟が有能であれば納得出来なくもないのですが、これがまさに愚弟としか言えない男で……あれ、そう言えばアルは来ないのですかクレア?」
「来ないわ。ウザいから置いてきた」
この場にアルが居ないのは女子会だからではなくクレアの独断だ。
「相変わらずクレアはアルに酷いですね」
「いや、愚弟の話でアルを思い出したシアンも酷いだろ。私も居ない事に気づいてなかったけど」
「ウィピも忘れてたのー」
『龍炎の騎士』にとってアルは居ても居なくてもどっちでもいいクレアのおまけだ。
「4人とも酷いじゃろ。アルは最近ヨコのスモウ稽古に参加してるらしいの」
カルレインはまだアルがスモウ稽古に参加しているところを見ていないが、ヨコヅナから話は聞いている。
「へぇ~、大将の稽古なら相当キツいんじゃねぇか?」
「時間は短いがハードではあるの。並みの者ではこなせん」
「アルちゃんはどうなのー?」
「全然よ。ヨコヅナの稽古の十分の一もこなせてないわ。私が尻を蹴っとばさないとサボろうとするし」
「それでも強い冒険者になるために努力してる分、うちの愚弟よりマシですね」
立派な当主になるために努力しないイエロと一緒にしては確かに酷いかと思うシアン。
「そう言や大将にも姉がいるよな」
「そうなのですか」
「オリアのことよね。実姉じゃないらしいわよ、エルフとの混血だし」
「そっちじゃなくて清髪剤売ってる店の女店主も、大将は姉って呼んでるんだよ」
エルリナは清髪剤を買いにエネカの店に何度か行っており、ちゃんこ鍋屋にエネカが客として来店した時にヨコヅナがエネカ姉と呼んでいるのを聞いたことがある。
「エネカとも血は繋がっておらぬぞ」
正確には女店主でもないのだが、夫を尻にひいていて実質的には間違っていないのでカルレインは訂正しなかった。
「そうなんか!?似てたからてっきり…」
「我も最初勘違いしたのじゃ。痩せたらそこまで似ておらんかったがの」
今のヨコヅナとエネカが並んでいても実の姉弟と勘違いする者は多くはないだろう。
「ヨコちゃんに弟感があるとは思ってたの~」
「姉貴分だけでなく兄貴分も3人いて、ヨコは末弟的な立場らしいぞ」
「兄貴分もヨコヅナみたいに強いの?」
「いや、兄貴分のうち2人とは会ったことあるが普通じゃ、他のニーコ村の住人もの」
「ヨコヅナ殿のご両親は?」
「我が会う前から、すでに故人じゃ」
ヨコヅナについての質問をカルレインが答えているのはこの場にヨコヅナが居なからだ。
先に記述した通り今日は別に女子会ではないし、アルの様に置いて行かれたわけでもない。さらに言うとヨコヅナは割と近くには居る。
女性陣5人が集まった場所は、
「今からちゃんこ鍋屋開店しまーす!いらっしゃいませ」
ちゃんこ鍋屋の店前であり、店に入ると、
「いらっしゃいだべ」
今日から厨房にヨコヅナが立つこととなっているのだ。
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