第314話 靴屋の倅は転生者? 20
「おはようヨコヅナ君」
「おはようだべ。早速来たんだべな」
俺はスモウ稽古に参加する為、朝早く教えてもらった訓練場に来ていた。昨日の試合で攻撃された箇所が痛むから、本当は一日ぐらい空けたかったんだけど…、
「ああ、クレアに叩き起こされてな」
「クレアもおはようだべ」
「おはようヨコヅナ。見学しててもいいでしょ」
宿に帰ってからヨコヅナ君の相撲稽古に誘われた事をクレアに話したら、自分も行くと言いだしたのだ。
「いいだよ。今日は他にも見学人がいるべ」
「あら、アル君にクレアちゃん。おはよう」
「あ!オリアさんおはようございます」
オリアさんだけでなく、ラビスさんとデルファさんもいる。
「アル君昨日裏闘で試合だったんでしょ、どうだったの?」
「なんとか二連勝しました」
「へぇ~凄いじゃない、アル君強いのね」
でしょ!と言いたいけどヨコヅナ君は5連勝してるからお世辞かな…
「いやいや、ヨコヅナ君に比べたら全然ですよ」
「危険な裏格闘試合で一回勝つだけでも大したことよ、相手は殺す気で攻撃してくるんだから。そんな裏闘で二連勝できたなら十分凄い事よ」
ですよね!!クレアと違ってオリアさんは分かっるな~、クレアと違って。
「アルを甘やかさないでくれない。直ぐに調子に乗るから」
「ふふ、ごめんなさい」
なんだよクレア、また嫉妬か?
「アル、直ぐに稽古始めるから準備するだよ」
…オリアさん達が見てる前で褌一丁にならないといけないのか、これはかなり恥ずかしいな。でも、褌一丁厳守って言ってたから仕方ないか…、
俺は服を脱いで褌一丁になる。
「……アル、褌似合わないわね。貧相すぎ」
言うな、自分でもそう思ってるから。
「貧相なのはヨコヅナ君と比べてるからだろ」
「あっちの男達と比べても貧相よ」
ヨコヅナ君が言ってたように訓練場には他に10人程褌一丁の参加者がいた。
確かに全員体格良いな…、
「あの人たち何者なんだろ?」
「一人を除いて軍人ですよ。一般兵から上級軍人まで、階級は様々ですが」
ラビスさんが説明しくれた。ヨコヅナ君も参加者に軍人が居るとは言ってたけど、ほとんどがそうなんだ。
除いた一人はちゃんこ鍋屋の従業員オルレオン、それはまだ分かるにしても…、
「何故ヨコヅナ君は軍人に相撲を教えてるんですか?」
「最初は教えるではなく、真似させてるだけだったんですよ。ヨコヅナ様のように強くなりたい人が真似しに集まってると言ったところです」
ヨコヅナ君のように強くか…、
「アル、初めるだよ」
「ああ、今行く」
「アル君頑張ってね」
オリアさんが声をかけてくれた。
「はい!」
よし、頑張ろ!
「ぜぇ~はぁ~、ぜぇ~はぁ~」
も、もう立つ事も出来ねぇ……、
足腰が限界で横たわる俺のところにクレアが来て、
「ヘバるの早すぎでしょ!ほんと情けないわね!」
痛っ、痛っ、踏むなよ。
「滅茶苦茶しんどいんだって…」
ほんと四股って滅茶苦茶疲れるし難しい。そもそもヨコヅナ君みたいに股が180°開かない。その後のすり足も滅茶苦茶辛い、足の裏の皮が破けて血が出てるし。ヨコヅナ君大岩待ちながらやるとか信じられない。
俺が離脱したすり足の後は張り手、次がブチかましと鍛錬が続くのを地面に横になって見る。
「…やっぱりヨコヅナ君は凄いな」
「ラビスが真似をしているって言ってたけど他の連中出来てないわよね。あの特大の木打ち柱もヨコヅナ専用のようだし」
そうなのだ、ヨコヅナ君の稽古は真似すら出来ない。
四股踏むと地面が揺れたんじゃないかと錯覚するほどの力強さある。すり足は一人大岩を抱えている。張り手は一回一回が特大木打ち棒を揺らしている。ブチかましなんて特大木打ち柱が壊れるんじゃないかって威力で何回も繰り返してる。
「アルもこれで分かったでしょ」
「…何が?」
「ヨコヅナが強いのは毎日厳しい鍛錬をしてるから、アルはヨコヅナに特別な力があると思ってるみたいだけど、そんなものは無いのよ」
「いや、鍛錬からして特別としか言えないぐらい別格なんだけど…」
「始めからああなわけないでしょ。アルと同じでヨコヅナも稽古の始めたばかりの頃は途中で立てなくなってた、ってオリアが言ってたわ」
オリアさんが言ってたなら本当だろうな。
「毎日続けて慣れたらさらに厳しい鍛錬にする、を繰り返した結果が今のヨコヅナの強さの根源よ」
「…継続は力なりってやつか」
「分かってるんじゃない。アルはちょっと疲れてるだけで鍛錬サボるから弱いのよ」
……今のあり様じゃ言い訳のしようがないな。
「王都にいる間は毎日この稽古に参加しなさい」
「え、えぇ~。毎日は無理だって」
「毎日しないと意味ないわよ」
「でも、稽古に参加したら働ける気がしないんだけど」
正直今日はもうまともに動ける気すらしない。
「昨日の稼ぎでしばらくの生活費はなんとかなるでしょ」
昨日の稼ぎ全部生活費に回すの?遊びに行ったりしたいんだけど…、
「遊ぶ金が欲しいなら稽古した後でも働けるようになりなさい」
うわっ、心読まれた…、
「サボるならパーティー解散するからね」
「……分かったよ。毎日稽古に参加するよ」
俺も強くはなりたいし、「弱くて努力もしないから」なんて解散理由は嫌だしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます