第280話 本当に一切起こらなかったのじゃ
今回ヨコヅナ達が請けた依頼は護衛。
近隣の村に行く商人を同中襲ってくる魔獣・魔モノから守る。
朝出発して夕方に目的の村に着くので一泊、
「討伐数は断トツで私が一番ね!」
して、もうナインド町に戻って来た。そして今はナインド町の料理屋で打ち上げだ。
いつもの酒場でないのは、町に戻ったのが夕飯時だったのでそのまま手近な料理屋に入ったのだ。
因みにアルの想像するエロイベントは起こっていない。
「私の実力が分かったかしら?」
「エルフだけに弓矢の腕はさすがでした。ですが…」
「ほとんどデカブンなのー」
「魔獣と言えるかも微妙な小物じゃねぇか」
「カナブンとしては大きかったべな」
『デカブン』は20㎝近くあるデカいカナブンだ。噛んだり刺したりはしないのだが、飛んで来たのが直撃したら結構痛い。一応魔獣認定はされている。
商人の運んでる品にデカブンの好む匂いがあったのか、結構な数のデカブンが現れクレアが弓矢で射ち落とした。
「矢がなくなったらほとんど討伐出来てなかったしの」
「仕方ないじゃない!矢は消耗品だし、回収できない場合の方が多いんだから」
矢が尽きた後は、カルレインが魔法でデカブンを撃ち落としていた。
「ヘルハウンドを狩った私達の方が質的には上です」
「あなた達が暇そうだから譲ってあげたのよ」
「矢に余裕が無かっただけなのー」
「初っ端から「私の実力を見せてあげるわ」とか言って、バカスカ射るからそうなんだよ」
クレアと『龍炎の騎士』の三人の会話は喧嘩をしているようにも思えるが、初対面時のような険悪な雰囲気はない。
この討伐で少なからず仲良くなっている。何故なら、
「まぁ…今回一番の獲物はあの大型のオークだよな」
「一体を私達四人がかりで討伐しましたからね」
「デカいだけあって頑丈だったわね、急所は外れてたとは言え5本も矢が刺さって動きが止まらなかったわ」
「パワーも凄かったのー。ウィピの火魔法を棍棒の風圧でかき消されそうだったのー」
護衛中オークの襲撃もあった。エルリナ達が知る普通のオークはブクブク太った体で身長160ぐらい、力は強いが動きは鈍い。
普通のオークならエルリナ一人でも討伐できる。
だが今回の現れたオークは二回りはデカかった。
動きが鈍いのは同じだが、デカさに比例して力と頑丈さも増していた。
それを四人で協力して狩った為、少なからず戦友と認めているのだ。
「…まぁ、もう一体は大将が投げ殺してたけどな」
「オークを投げ殺すとか意味わかんないんだけど」
「しかもあの大型を」
「商人さんビックリして固まってたのー」
現れた大型オークは二体。
もう一体はヨコヅナが一人で相手をした。カルレインは何かあった場合に、どちらにもフォロー出来るよう備えていた。
「あのオークは大型で強い個体だったんだべか?」
「今の世ではそのようじゃの、我の知識ではあれが標準じゃが」
「期待外れだったべ。オークはスモウ相手にはならないだな」
ヨコヅナはオーク相手にスモウを取った。オークはスモウが強いかもと少し思っていたのだが、
棍棒を持っていたが大振りで出来た隙にブチかましを喰らわしたら直ぐ手放した。そこからはオークが立ち上がる度に地面に叩きつけ投げ殺した。
肉が厚いので重いし頑丈で力も強いが、あまりにも動きが鈍過ぎる。
ヨコヅナからすれば、大きく重いだけの人形を投げてるのと変わらない感覚だった。
「……オラ以前、オークに似てるって言われた事あるだべが…似てるだか?」
オークは人族からすれば醜悪な見た目だ。
ヨコヅナでもあれと似てると言われるのはショックなのだが、
「全然似てねぇよ」
「全然似てないわ」
「全然似てないのー」
「全然似ていません」
「そうだべか、良かっただ」
四人の完全否定に安心するヨコヅナ。
「ヨコとオークでは、元々腹が出っ張とることしか共通点は無かったし、今はそれも…の」
痩せた今のヨコヅナをオークと似ていると言う者はいないだろう。
話題は変わり、
「あ、そうだ。ヨコヅナとカルは一か月限定の冒険者って本当なの?」
「そうだべ。言ってなかっただか?」
「聞いてない!一緒に組もうって言ったら「分かっただよ」って言ったじゃない!」
「…今回こうして一緒に組んだだよ」
「私が言ったのは正式パーティーよ!」
早朝のゴゴの森で会った時は、クレアは正式パーティーを組もうと言ったつもりだったのだが、
「正式なパーティーを組みたい時は「一緒に冒険しよう」と言うらしいだよ」
ヨコヅナはエルリナから教わったので、クレアの誘いを臨時パーティーと思って了承したのだ。
「やれやれ、クレアはそんなことも知らないのか。まぁ新人だもんな~」
「仕方ありませんよ、クレアは新人ですから」
「そうなのー。クレちゃんは新人なのー」
「新人新人五月蠅いわよ!そんなの知るわけないでしょ」
ここぞとクレアをいじる『龍炎の騎士』の三人。
「王都の人気ある料理屋の店主ってのも聞いたわ。ヨコヅナは料理人になった方が良いと思ってたけど本職が料理人だったのね」
「お!、クレアも分かってんじゃねぇか。ちゃんこ鍋屋の厨房で料理作ってるところ見たらもっとそう思うぜ」
「そうなの?でも店は王都にあるのよね……」
顎に手を当てて考えるクレア。考えながら料理を口に入れる。
描写されていなかったが、料理は既にテーブルに並んでいる、皆料理を食べながら会話をしていた。
「モグ……厨房に立つところ見なくても、ここの料理と食べ比べるだけでもそう思うけどね」
「それは同感です。ヨコヅナ殿にこの時間から料理作ってもらうは悪いと思って手近な店を選びましたが…」
「ウィピも後悔してるのー」
「マジそれなー。私も一口食べて思ったよ」
「我は店に入る前から予想しておったぞ」
みんな口を揃えるかのように、
「ヨコが」「大将が」「ヨコちゃんが」「ヨコヅナ殿が」「ヨコヅナが」
「「「「「作った料理の方が断然美味しい!」」」」」
「…そう言ってくれるのはオラとしては嬉しいだが、そんな大声で言うのは店の人に悪いだよ」
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