第148話 我のおかげじゃ
『金網闘技台から出ない『不倒』選手!どうやら本気で5連勝を狙うようだぁ!!』
『怪我も疲れもないのだから当然だな』
『このビックルーキーの快進撃を誰が止めるのか!!この先も目が離せねーぜぇ!!』
Bランクでの組み合わせはクジ引きではない為、二試合目予定の選手が出てくるわけではなく、連戦の可能性が高い場合、有力な選手に事前に声を掛けている。
「てっきり新人を瞬殺して連戦を希望する『拳人』が相手だと思っていたのだが……まさか逆に『拳人』を瞬殺した新人が対戦相手になるとはな」
ヨコヅナの待つ金網に次の選手が入ってくる。
「次は武器有りの相手のようね」
「あれは確か……『トンファー』だね」
その男は両手にトンファーを所持していた。
『2試合目の選手が登場したぞ!この男はぁ!!?』
『……妥当な相手だな』
『Bランクトップ選手の一人にして、武器有りの選手の中で最たる技巧派と呼ばれる男!トンファー使いの『トンファー』だぁ!!!』
「…………あぁ、そういう事だべか」
「デルファさっきの、相手の名前言ってたんだ……確かにカッコ悪い呼ばれ方ね」
「ちゃんとした登録名にして良かったねェ」
『やっちまった登録名の『トンファー』選手だが、Bランク戦績8勝2敗と実力は確か!』
『運営の考えとしては、『拳人』と『トンファー』を戦わせたかったのかもな。二人は戦った事はなかったはずだ』
これもヘンゼンの推測とおり、裏闘の運営は当り前の様に『拳人』が一試合目を勝つと思っていた。無傷で圧勝し連戦を希望する可能性もあると考え、まだ未対戦の『拳人』VS『トンファー』を本日の二番目の目玉試合にしたいと思っていたのだが……、
『新人がトップ選手に勝利して、更に連戦を挑むなんて誰も思わねぇよなぁ~』
『だが、この対戦も見モノだ』
『おっ!だったら見どころの解説頼むぜヘンゼン!』
『裏闘の選手の中では比較的小柄な『トンファー』だが、動きの遅い大柄な選手相手には毎回完封勝利を収めている』
『なるほど『不倒』も大柄な選手だな。小柄なだけに『トンファー』は動きも速ぇしな』
『素早い動きと卓越したトンファーの攻防一体技術、そして『トンファー』にはもう一つの強みがある』
『ん?もう一つの強みって何だよ?』
『…それを今解説するのは公平性に欠けるな』
『勿体ぶるなぁオイ!でも、つまり今回はヘンゼンでも勝敗が分からず、賭け札を買えないというわけだ!』
『いや、俺は『不倒』の勝ちに賭けている』
『賭けてんのかよ!?絶対お前『不倒』と知り合いだろ!』
『何度言えば分かる、知り合いではない』
『公平性って言うなら『不倒』についても知ってる事言えよ!』
『はぁ~……簡単に言えば、俺は『不倒』に路上の喧嘩で負けたというだけの話だ』
『オイオイオイ!何だよそれ、どう考えでも知り合いじゃねぇか!』
『どう考えたらそうなる?』
『よく言うだろ……喧嘩する程仲が良いって』
『何言ってるのだお前は……せめて、昨日の敵は今日の友、ぐらいは言え』
『ヒャハハ~!、知り合いじゃなくて友達って言いたかったわけだなぁ~』
『そうではない、あくまで物の例えだ』
『まぁ、知り合いだろうが、敵だろうが、友だろうが、客が知りたいことを解説出来るならオールOKだ!!……じゃあ早速『不倒』のことを詳しく……ん?』
ビックマウスにまたもメモが渡される。
『おっと~!!試合開始時間なのに話が長いと、運営が激おこプンプンみたいだぜぇ!!!』
賭け札を買った観客達も試合をする『不倒』と『トンファー』も、試合開始を待ちかねていた。
『それじゃ、第二試合『不倒』VS『トンファー』スタートだぜ!!』
「やっとだべか…」
今まで試合とは少しだけ違う構えをとるヨコヅナ。
試合開始の合図である銅鑼の音が、
グオァ~ン!!
と鳴らされた。
開始と同時に前に出るヨコヅナ。『トンファー』に向けて渾身の張り手を繰り出す。
「っ!?くっ!」
バギボギッィィ!!と耳障りの悪い音が会場に響いた。
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