第129話 それは○○だからじゃろ 4
「ヒャッハー!!待ってたかぁヤローどもぉ!!血が舞い骨が砕けるスリル満点の裏格闘試合がまもなく開始だぜぇ!!」
ワァァー!!と会場を埋め尽くす観客達の声が響き渡る。
「今回の一試合目は新人が登場だぁ!その名はぁ~ 『不倒』!!! 」
登録した名前を呼ばれたヨコヅナは、緊張と困惑のまじりあった顔をしながら金網で囲まれた闘技台の上に立っている。
「なんでオラ、こんなとこにいるだ?」
「それはヨコが裏格闘試合に登録された選手だからじゃろ」
はじまりは今日の昼までさかのぼる。
「裏格闘試合、それが今日の仕事だべか?」
「その試合で勝つことがボーヤにやってもいたい本当の仕事だよ」
事前に今日は本命の仕事をしてもらうとは聞いていたヨコヅナ。
「試合だべか……オラが前に出場した格闘大会みたいなものだべか?」
「あんな盛大なモノじゃないけど、観客の見てる中で一対一で戦うって意味では同じだね。だたしこっちは違法だけどね」
「違法なんだべか?」
「裏ってついてることから分かるだろ。レートが高い賭け試合だし死人も出ることが多いからね」
想像していたのと違う仕事に顔を顰めるヨコヅナ。
「……仲間を守る為に協力して欲しいとか言ってただが、結局は賭博で金を稼ぎたいだけだべか」
ヨコヅナとしては、混血を差別する連中が暴力を行使してきた時に対抗する為に雇われたのだと思っていたのだが、今の話を聞く限りでは、混血を守る為の仕事とは思えない。
「くくくっ!半分正解だよ……金は力だからね、財力が多ければ仲間を守れるんだよ」
デルファの言葉に嘘はなく、混血を守る為に金が必要なことは間違いなかった。
「混血は何かと悪者にされやすいからね、問題が起きた場合金で解決するのが最もスムーズに事が進むんだよ……それに養うのにも金がいるしね」
「養う?従業員をだべか」
「………まぁそれもだね」
「?……もう半分はなんだべ」
金を稼ぐのが半分正解と言ったデルファ、つまり半分は違うということだ。
「双方が同意すれば賭けるのは金品以外でも良くてね。土地、人材、または、強制的に約束を守せるということも可能なんだよ」
「……例えば、人族至上主義の相手に混血の差別をしないように約束させるとかだべか?」
「分かりやすく言えばそうだね。そんなストレートな約束をすることはないだろうけど」
「う~ん……意味あるようには思えないだな」
金の受け渡しは見れば分かるが、継続的な行動制限の約束を守っているかなど分からないし、仮に守ったとして裏格闘試合に参加している一部の人間に約束させたところで混血の安全が保たれるとは到底思えない。
「裏格闘試合は歴史が古くて規模もデカいんだよ、このワンタジ王国が建国される前からあるからね」
「違法なのにだべか?」
「違法なのにだよ。だから勝負の上での約束は絶対で、反故にすれば誰にも信用されなくなる。貴族の決闘みたいなもんだよ、実際貴族や大商人も参加してるしね」
「違法なのにだべか?」
「違法なのにだよ。逆に言えば違法だからこそ、位が高い者と同じ土俵に立て、拘束力のある約束を取り付けるとが出来るということだよ」
「………あぁ~、偉い人に約束させて、その部下にも約束を守らせる訳だべか」
「大きい勝負は組織同士、戦うのは組織の代表者って形なんだよ」
個人はなく組織に約束させることが出来るなら効果もあるだろう。
「何より勝ち続ければロード会を大きく出来る、強く大きい組織になれば混血だからと簡単に文句も言えなくなるわけさ」
「……違法なのにだべか?」
「違法なのにだよ」
先の二回と違い真剣に問うヨコヅナに、真剣に返すデルファ。
違法で在ろうと金は金、捕まらないのであれば組織を大きくするのに必要なことだという考えのデルファ。
「もちろんヨコヅナにも十二分に見返り用意するつもりだよ」
「オラが何でロード会に雇われてるか忘れただか?」
今度の言葉は明らかな怒りが籠られており、デルファを睨みつけながら聞くヨコヅナ。
「……違法な仕事で金を得るのがそんなに嫌かい?」
「飢えて死んでしまう状況なら、オラも法なんて気にしないだよ。でもここで仕事をした限りそんな切羽詰まった状況とは思えないだよ」
確かに混血だから暮らしていくだけでも辛いことは多いだろうし、ロード会を設立した当初はもっと酷かったと想像はできる。
だが今はその努力が報われ生活する分には十分の金銭を得ている。
デカく儲ける為違法に手を出すのは、今までの努力を無にする可能性が大きい。
ヨコヅナからすれば、デルファの考えに同意は難しかった。
「………ふぅ~、オリアの言う通りだね」
「オリア姉が何か言ってただか?」
「ボーヤは簡単には納得しないだろうから先に行って待ってるとさ」
「待ってる?…何処でだべ」
「今から連れて行くよ。外に馬車を止めてある」
ヨコヅナはデルファについて馬車に乗り、ある場所へと向かった。
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