赤い砂漠の地 水の塔のエアリス

のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます

水の塔のエアリス

とある惑星での御話


人々を救う為の一環で 作られた水の塔・・・


ここは 砂漠が広がる乾いた大地に

赤い砂 あるいは 白と砂金の砂が交じり合う美しい色合い  水晶の丘


不思議な生き物 砂の海を飛び跳ねる魚たち

黒い小さな泉 いわゆる石油


空には青みを帯びたラベンダー色の空

夜には3つの月が闇夜を彩る


水が絶え 全滅の寸前だった人々 


砂金に地下にあるレアメタルと引き換えに 

後に天空人(宇宙人)と呼ばれる

空の彼方から来た 公平で高度な科学力を持った者達によって


救われようとしていたが・・


洞窟内部 地下に建設された

水の塔のAIの声


煌めくような機械の壁からの声


「いやあ~ 調子は絶好調ですわ おほほほ~ふふふっ」


「空気中の水素から 化学反応で作る水だけどお

予定の2倍は供給中よん



東の2号 水の塔AI エアリスちゃんにお任せよん


あ、西の塔AI ビシュは 予定の半分以下ですってねえ

何やってのかしらん!」


「南の大陸の方は まだ建設中 

まあ 連邦が来る前に あそこの住人たちは全滅したし


移住の住人達の移動が済むまでは 後回しよね」



「はいはい エアリスたんは 今日も仕事もお喋りも

良い感じだね」

作業用スーツを来た 若い男は AIエアリスに話しかける


「でしょ、でしょ、でしょおおお うふふ」


ご機嫌な調子から 

今度は AIエアリスは 心配そうに話しかける



「ねえ 孝太・ユーリ・セシル

本当に私の人間体のボデイ作ってくれるの?」


「『ああ、予備回路に 移動用 修理用ボデイが必要だから』

と連邦の代表 官長であるクリストファル・エセファリスさんと

副長アオイさん


それと 副長アオイさんの恋人


現地人 惑星の代表者の一人ファリアスさんには

『根回し』して 2日後の会議で決定予定だよ


君が第一号さ」


何気に孝太の頭の中に

愛らしいメイドさんとか ゴスロリの衣装を着た

可愛い女の子の姿が浮かぶ


「うふふ!やったあ

ねえねえ 面白味のない無機質なボデイじゃなく


美少女よ 美少女のボデイ!


うふふ 孝太の頬にキスしてあげるわよ

それとも 孝太が私の足先にキスする?」


「こらこら 足先って あんまり」

苦笑いする孝太



「孝太くん 調子はどう?」

そこに一人の女性が話しかけてきた


淡い青の髪 手にはウロコが少々

水の惑星出身 先祖には人魚


エリュシュ・フナリア・アオイ


幼さが残る美しい娘だが 連邦代表者の副長の一人



彼女の傍には 見守るようにいる

砂の惑星の現地人である男


地球の古い時代を思わせる衣服に

頭には砂避けの布を巻いた被り物


鼻下には髭 黒髪

ちょっと年配のダンデイな整った顔立ち


人を引き付ける 穏やかな風貌でもある


ファリアス


この地の部族の長の一人 エセルの恋人


それと・・


小さな男の子

ファリアスと亡くなった妻との間の子供


フェレイラ


「こんにちは 副長 それに

長のファリアスさん お元気そうですね

息子のフェレイラ君は また身長が伸びたじゃないかい?」

孝太郎


にこやかに微笑むファリアス


「お久しぶりです 孝太郎さん」息子のフェレイラ



「僕たちは アオイさんの護衛として一緒に来たのです」



「これ どうぞ 一つ目の化け物の

目玉です


煮込んで調理済みです 温めると美味しいですよ」


瓶に入った エグイ感じの大きな煮込まれた目玉を

差し出した 


見た目はグロテスクであるが美味ではある


「あ、ああ、いつもすいません」

顔を引きつかせる孝太


この砂の惑星には 人を襲う危険な化け物のたぐいも多い


「砂魚の干したものも好きだったわね」

アオイから 砂の海で採れた砂魚の干物も渡される


「AIちゃんと楽しそうな会話だったわね うふふ

足先にキスするの? 孝太くん くすくすっ」


「いや~あはは」笑って誤魔化すしかない孝太



「私達はこの水の塔の奥にある

建設中の居住用地下都市の見学なの


身体の弱い年よりに小さな子供達 病人の為のもの

過酷な砂の地だから 彼等の為にも頑張らないとね

そっちも頑張ってね」  


「後、近くのレアメタル採掘場にもいく予定

たまに他惑星の民間商人の中に 異常に安く買い上げたり

現地人への暴力事件とか あってね いわゆる悪徳商人とか

そこもちょっと大変かな」


「大変 多忙ですね 副長」


「うふふ それはそっちもよ 

大規模なテラ・ホーミング(惑星改造)は大変よね」


「ここは以前あったはずの巨大な湖も

地下にあった水も消えて 

『水の塔』が作る『命をつなぐ『水』』がとても大事なものだから


そうそう

・・ファリアスさんも簡単に大きな化け物のたぐいは

倒してしまうだけど


まだ小さいけどフェレイラ君も強いわよ」


「東、水の塔第二号

AIエアリスちゃん あまり孝太くんを

からかってはダメよ うふふ」


「了解 マスター・アオイ」

突然 機械的な言葉に音階をとるAIエアリス


「孝太君もあまり無理はしないでね

また寝具を持ち込んで ここで寝ているのね

それにカップラーメンばかりダメよ


後で連絡して お食事を届けるから

ご希望は?」


「地球のジャパンの名産の一つ

ウナギのお弁当とお茶漬けが食べたいです

緑茶とコーラとポテチとか」


「もう、お野菜も食べなきゃ」


「ええと、野菜ですか ジャパンの『すき焼き』とか 

あれ、煮込み料理で野菜も入ってます」


「サラダもつけるわ 全く」



「エアリス 可愛くて素敵なボデイが出来るといいわね

じゃあね」

そう言って三人は立ち去る


「ああ、びっくりした」孝太


「うふ じゃあ水の調整作業に戻る?孝太」


「そうだね 人工の身体(ボデイ)も期待してね」


「ありがとう 嬉しいわ」


「移動可能な人工ボデイ 身体が出来たら

ちょっとしたデートしようか?」


「本当?孝太」


「AIのエアリスなら 水調整の大事な仕事を

こなしながら 幾つもの作業が出来る


その一部の機能を勉強用の見学という事にして・・」


「うんうん!」


「この砂漠の地は過酷な環境だけど

美しい場所も沢山ある


それに 先月に出来立ての小さなドーム都市では 金色の麦の畑とか

こっちも綺麗な場所がドーム内に沢山あるよ」


「すごく楽しみ」高揚した 嬉しそうな声



そんな ささやかな楽しみ事が叶うはずだった



彼方にある 連邦を巻き込んだ 星間戦争

連邦の崩壊と大混乱


幾つかの惑星が 戦争によって消え去る


また、この砂の惑星で起こった

沙漠の惑星の宇宙域の大規模な磁気嵐


沙漠の惑星もその影響下で 

暴風 地震などの大規模な災害が連続的に発生


それらの事情で

連邦の者達 商人たちなどの他惑星の民間人などが

一部の者達を残し 逃げ去るように 空の彼方へと飛び去ってゆく


宇宙域の磁気嵐 おもに宇宙船の装甲の弱い 民間船は

半分以上が壊れ 多くの命が失われた


「ドーム都市 AIステラ 磁気嵐の影響 暴風で 故障

修復の為の人員は確保困難

ステラの管理下のドーム都市98パーセント崩壊 


続いてドーム都市 AIマルタ 地盤沈下により都市ごと崩壊確認

AIマルタ 生き残った住民避難後 2分後 完全停止


磁気嵐の影響の地震、暴風被害 甚大


ドーム都市 AIアリッサ沈黙 詳細不明 全壊の可能性80パーセント

避難が間に合わなかった住民と連邦職員 及び他惑星の民間人

死者は・・・」


「水の塔のネットワーク・システム 破損 

現時点での修復不可能


東地区 西地区など 数基を残し 全AIの水の塔 完全破損

12分前 西の五号 水の塔AIアーテン及び

6分前 東の7号 水の塔AIアスラ 半壊 完全機能停止」


「・・・・孝太 貴方は逃げなかったの?」


「可愛いAIのエアリスを残して 行ける訳ないじゃないか

せっかく 麗しい美少女のボデイを数体も作ったのに

デートだって まだじゃないか」

厳しい表情から しばし 優しい表情になって微笑む


「完璧なる美少女ボデイ 細部まで作り込み 唇や胸の柔らかさを出す為に

特別仕様の素材 それぞれ お着替えするように

数体 お身体を作りました ふふふ


衣装も沢山 くくくっ」

孝太 目つきがちょっと 危ない


「胸の造形は 完璧を目指し 再現

大きさは 成長期の少女の幼い胸から 少し豊かなサイズもあり

なだらかな お尻の作りも 完璧


いつでも美少女アイドルを目指せます くくくっ ひひっ」


「美少女の隠された大事な下着類も 副長アオイさまの監修で

選び抜き 副長に外惑星からの通販での購入を頼み込み 手に入れました


清楚な白のフリル 淡いパステル系で花の刺繍 

ビターな大人な セクシー 黒に赤のバンツ いやスキャンテイ

ブラ等々 ぐふ」

目が血走ってる 笑みが怖い

鼻息も荒い ちょっと鼻血 完璧に怪しい人


だが すぐに真面目な顔になる


「・・・水の塔の多くが崩壊した

水が無ければ この惑星の者達は全滅だ」


「何年、あるいは数十年 それとも数百年


星間戦争と磁気嵐のせいで

補給艦は来ない」


「ドーム都市群は ほぼ全壊した」


「ドーム都市で始まっていた農業プログラムは崩壊

自給自足はご破算だ」


「この惑星は また過酷な状況に逆戻りした

せめて 水の補給


水の塔だけは 例え数基でも確保しないとね」


「・・・また多くの被害が出るとは思うよ

今後もね」


「僕は この惑星の風景が好きだよ

純朴で過酷な環境下でも笑顔を忘れない人達も」


「それに僕は 正義の味方 誇りある『連邦』の一員

まあ、末端の手下程度だけど」


「じゃあ 数日後に来るよ 可愛いエアリス

西の水の塔の修理に僕は行くからね」


それが・・

孝太を見た最後の記憶となった


モンスターに襲われ、大怪我を負い

更には 突然の地盤沈下で その身体は

地下深くに消え去ったという


数年後


機能の多くを失い、維持機能の一部を保つのが

やっとのAIエアリス


「エアリス」

話しかける副長のアオイ


「ハ・・・イ マスター・アオイ ア・・オ」

乱れた声


「ごめんなさい 貴方のAIを停止するわ

・・・水供給を維持する為には AIの記録回路の部品が

修理用部品として必要なの」


「了・・了解」


「・・・・せめて 一部でも貴方の記憶チップは 別にコピーして

残しておくわ


いつか誰かが 貴方を蘇らせてくれるかも」


大きなお腹をさすりながら アオイは作業を進める


「私のエリシュ 少し休んだ方が」ファリアス


「いいえ、すぐに済ませるから 大丈夫よ

もう 重病で動きが取れなくなった 官長と私しか

連邦の人間はいない

こうした作業が出来る者はいないもの


一部の残った民間人もいるけど」



手早い作業で エアリスの記憶の一部をデータ移行して

コピーする


「全データを移行したいけど この記憶チップの容量がそこまでないの

ごめんねエアリス」


壁の一部の機械の中に 記憶チップを そっとしまう


「目立つように 蛍光塗料を塗っておこう」


「さて じゃあ、貴方を削除するわ」ボタンを押す


ゆっくりと自我が消えてゆくエアリス


闇の中


そうして・・


「あれ、これ この壁に蛍光塗料が塗られて 印をしてある

数百年以上の長い年月が過ぎたから かなり薄くなって消えそうだけど」


「そうなのかレーヴ?」「うん そうだよファリ」



「何度も この復元された水の塔には来たけど

今まで 全然 気が付かなかった」


壁を操作して AI、エアリスの記憶チップを取り出した


「何が入っているのかな ファリ」「さあな」


ファリ 彼は この砂の惑星の住人

青い瞳 その青は現地人のものでなく 他の惑星の混血の証

まだ十代の少年 だがレーヴの護衛としてついて来てる


ファリの妹は淡い青の髪と手には少々のウロコがある

ファリアスとアオイの子孫であった


なおフェレイアとの子達とアオイの子は親族結婚している


水の塔で残ったのは 半ば壊れた一基のみ

それで 多大な犠牲と共に どうにか人々は生き延びた


磁気嵐が収まり


月日をかけて、連邦は蘇り 再び再来した人々によって 


第二次テラ・ホーミング(惑星改造)が始まりを

告げていた


新たにやって来た者達に

特に植物学に優れて 多方面にも万能 

優秀な科学者レーヴという少年も含まれている


「さて、後で帰ったら PCで中身を確認するか うんうん」

何とはなしにご機嫌なレーヴ 

大事そうに小箱に入れて記憶チップをしまう


「そろそろ昼ご飯にするか?」「そうだね」


ファリの方は 緑色の暖かい液体と地球から伝来した


ジャポニカ米を蒸して炊き上げたものを

保温機械から取り出して その上にピンク色の魚の切れ端をのせて 

緑色の液体 いわゆる緑茶をかけて 食している


孝太も愛した?由緒正しき「お茶漬け」である


なお ジャポニカ米と緑茶は砂漠にあるドーム都市で作られた


魚の方は品種改良したものを ドーム都市の大きな池で量産してる


他にも一つ目の化け物の目玉を煮込んだものと

飲み物 砂魚の干したもの 野菜サラダもあり


「・・ワサビとソイソース(醤油)に 

小魚やキノコから作った『だし汁』が入ったもの

忘れたな まあ、いいか」 


「だしのスープは ナギ・ナジュアリが作ってくれたのに

明日 忘れずに持ってこよう」


「ああ~ファリいい」涙を浮かべたレーヴ


「どうした?」「僕 お弁当を忘れたよお」


「愛しい ファリの妹 美少女アイドル並みの愛らしさの

リリーシュちゃんが作ったお菓子もあったのに」


「・・俺の可愛い妹のリリーシュは 俺のものだからな レーヴ」


「ファリ・・お腹すいた」


「・・・・・」「・・・・・」


「仕方ない 俺の分を分けてやる」「有難う ファリいい」


「何 いつもお世話になっている大事な科学者さまだ

ついでに お前のドジっ子ぶりにも慣れている」


「えへへ」


「その記憶チップ 中身が楽しみだなレーヴ」


「数百年前の誰かからの贈り物だよね」「ああ そうだなレーヴ」


地下都市の中の水の塔 


年月のせいで 古い遺跡のような趣(おもむき)がある


作られた当時のように 

半分以下の水量でなく 沢山の地下水路に 莫大な量の水が勢いよく流れている


沙漠には 幾つかの木々に囲まれた 小さなオアシスも出来た


上からの天上の光が差し込む 



砂漠の赤い砂 あるいは白と砂金の砂のグラデーションを描く砂漠  

光に煌めいた水晶の丘


不思議な生き物 砂の海を飛び跳ねる魚たち

黒い小さな泉 


空には青みを帯びたラベンダー色の空

夜には3つの月


天蓋から見える外の風景には 数百年前と ほぼ変わらず

不思議な沙漠の風景が広がっている

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