夢見る月の夢物語
梔子
夢見る月の夢物語
・ルミ……おてんばだけれど、心優しい月の国のお姫様。結月の夢の中に住んでいる。
・結月……中性的な雰囲気の女の子。ルナに王子だと思われ行為を抱かれる。中学生くらい。
結月『私は探している。』
ルミ『この世界の片隅で、』
結月『心から分かり合えるその人を。』
ルミ『私は待っている。』
結月『私は求めている。』
ルミ『私を必要とする誰かを、』
結月『この手を遠く伸ばして、』
ルミ『そっと抱き寄せて、』
結月『私は』
ルミ『愛したい。』
結月「ここは、どこだろう……」
結月「痛くない。もしかしてここ……」
ルミ「ねぇ、大丈夫?」
結月「うわっ。」
ルミ「驚かせてごめんなさい。そんなところにしゃがんでいたら素敵なお洋服がお砂糖でベタベタよ。」
結月「えっ、ここ砂糖でできてるの?」
ルミ「ふふっ、地面がお砂糖で出来ているなんて当たり前じゃない。おかしな人。」
結月「君だって急に話しかけてきて人のことをからかうなんて、変わっていると思うな。」
ルミ「やだ、そんなに怖い顔しないで。私のお城に案内してあげるから。」
結月「私の、お城……?」
ルミ「ええ。知らないの?」
結月「知らないよ。だって僕ここの人じゃないし。」
ルミ「あらあら、それは失礼いたしました。私は月の国の姫、ルミって言います。よろしく。」
結月「お姫様?そっ、それはごめんなさい!」
ルミ「ふふふっ、面白い人。」
結月「むぅ………」
ルミ「ねぇ、あなたは?あなたのお名前は?」
結月「ゆづき、結ぶ月で結月。」
ルミ「まぁ……」
結月「どうしたの?」
ルミ「いいえ、とても素敵なお名前ね……」
結月「あぁ、ありがとう。」
(間 2秒ほど)
ルミ「結月は普段何をしているの?」
結月「何をか……んー、学生って言えばいいのかな。」
ルミ「学生?学校へ行っているの?」
結月「……うん、あんまり行けてないけどね。」
ルミ「学生なのに?」
結月「まあ、色々あって。」
ルミ「そうなの……大変なのね。」
結月「ほら、今の時間って皆学校に居るでしょ。でも僕は、ね。」
ルミ「そうね、学校に居るのならここには居ないはずだものね。もし学校に居てここに居るのだとしたら、そっちの方がよくないと思うわ。」
結月「あー、そっか……そうだね。」
ルミ「でも、何故学校へ行けないの?」
結月「病気になっちゃったから……」
ルミ「悪いところがあるの?」
結月「特別どこが悪いのか分からないんだけど……強いて言うならここ、なのかな……」
ルミ「まぁ……なんて悲しいの……」
結月「えっ、うそ、泣かないでよ。」
ルミ「だって、貴方みたいな素敵な子が傷付いているなんて、私……」
結月「こんな風に泣いてくれる人が居るだけ僕は幸せなのかもな……まぁ、夢なのかもしれないけど。」
ルミ「いいえ、誰かを想う気持ちに夢も現も関係ないもの。貴方が本当と思えば何でも本当なのよ。」
結月「ふふっ……ありがとう。」
ルミ「うふふ、どういたしまして。」
(間 2秒)
結月「うわぁ……立派な建物だね。」
ルミ「そうでしょう?私のお城は月の国で一番大きな建物なのよ。さぁ、私のお部屋はこっちよ。」
結月「か、かわいい……きらきらでふわふわ……」
ルミ「うふふ、私の世界へようこそ。」
結月「あなたはずっとここに居るの?」
ルミ「ええ、大きなお城に住んでいるけれど、ほとんどをお部屋で過ごしているわ。だってここには全てあるんだもの。」
結月「全て?」
ルミ「ええ、私の好きなもの全部。綿雲のベッドでしょ、オーロラのカーテンに、うさぎ座のぬいぐるみ。テーブルの上には星屑のお菓子もあるんだもの。」
結月「素敵だね。」
ルミ「ええ!結月も気に入ってくれたかしら?」
結月「うん、とてもルミに似合ってると思う。」
ルミ「ふふっ、結月もここに住めばいいのに。」
結月「え?そんなの無理だよ。僕がずっと居たら迷惑でしょ?」
ルミ「そんなことないわ。二人でいたらきっと楽しいわ、学校よりもね。」
結月「そうだろうけど……家族が心配するから……」
ルミ「……そう。」
結月「あぁ、ごめんね?」
ルミ「……ううん、いいの。それが無理なら、こうするのはどう?」
結月「ん?」
ルミ「毎日一度でいいから私に会いに来るの。このお部屋で、一緒にご本を読んだり、お茶をしたり、お昼寝もいいわね。ねぇ、どうかしら?」
結月「ずっと居続けるんじゃなければ。」
ルミ「本当に?」
結月「うん。友達にも会えない、いや居ないから、そんなことならルミと遊べたら良いんだろうなって思ったからさ。」
ルミ「やったぁ(結月に抱きつく→ギュッって言ったりしても良い。)」
結月「えっ!ちょっ!」
ルミ「うふふ……明日も明後日もその次の日も私に会いに来てね。」
結月「……うん。」
ルミ「約束よ。」
結月「約束……」
結月『その日から私は』
ルミ『一人じゃなくなった。』
結月『二人で過ごす時間は夢のようで』
ルミ『それは確かに本当だった。』
結月『二人しかいない世界で、一人と一人。』
ルミ『二人っきりで私たちは』
結月『私はこの世界に溶け込んでいった。』
ルミ「お姫様は王子様と結ばれて、いつまで仲良く暮らしましたとさ。」
結月「その話大好きなんだね。」
ルミ「ええ、とても素敵なお話だもの。結月もそう思わない?」
結月「そう、だね……でもさ、王子様はもしかしてお姫様の友達になりたかっただけだったら?」
ルミ「どういうこと?」
結月「いや、ルミがいつも読んでくれるから僕も僕なりにお話について考えてみたんだよ。恋人として結ばれることだけがハッピーエンドなのかなって。好きってそういう好きだけじゃないでしょ?」
ルミ「そう、なの?」
結月「そう、だと思う。僕はね。僕が王子なら、このお姫様とは結婚しないで、ずっと一緒に遊べるだけでいいなぁって思ったから、もしかしてそんな終わりもあるのかなって。」
ルミ「ないわ!絶対ない……」
結月「ルミ……?」
ルミ「何故そんなことを考えるの?結月は私のこと嫌いなの?」
結月「え、どうして?そんなこと言ってないし、嫌いじゃないよ?」
ルミ「……そうよね。ごめんなさい、急に怒ったりして。」
結月「ううん。僕もおかしなことを考えていたから、ごめんね。」
ルミ「結月。」
結月「何?」
ルミ「私は結月のことが好きよ。」
結月「うん、僕もルミのこと、好きだよ。」
ルミ「うふふ……ずっと一緒に居てね。」
結月『住む世界が違えば考え方は違うけれど、』
ルミ『私の世界で生きているのならば同じ心で居られるはず。』
結月『なんて傲慢さを引き金に、世界はズレていく。』
ルミ『私たちの知らない内に、歪み(ひずみ)は大きく深くなる』
結月『はじめは見えないほどの隙間だったのに、底の見えない谷になって』
ルミ『私たちを』
結月『二つに分かつ』
結月「んん……何か眠たい。」
ルミ「ふふ、それはいつもそうでしょ?」
結月「いや、最近ね、あんまり眠たくないんだ。」
ルミ「そうなの?」
結月「今まで眠っていないと苦しかったのに、良くなってきてるみたいで。」
ルミ「へぇ……良かったわね。」
結月「これもルミのおかげだよ。ありがとう。」
ルミ「えへへ、どういたしまして。」
結月「僕は眠っている間しかここには居られないみたいだから、その内ルミに会えなくなっちゃうのかな。」
ルミ「…………」
結月「……ルミ?」
ルミ「いやよ……」
結月「え?」
ルミ「何で会えなくなるとか言うの?私たちが会えなくなるはずなんてない!だって私たちは結ばれる運命なんだもの!」
結月「どうしたの急に?結ばれる運命って何?」
ルミ「私はあなたのお姫様で、あなたは私の王子様なのよ。」
結月「それは違うよ。僕は女の子だよ。君の王子じゃない。」
ルミ「…………え?」
結月「もしかしてルミ、僕のこと男の子だって思ってたの……?」
ルミ「いえ、違うわ……ただ、私は結月のことが好きだっただけで、そんな……」
結月「……いいよ。よく間違われるんだ、僕。君には分かってもらえているって思ってたけどね。」
ルミ「でも、結ばれるのに性別なんて関係ない……あなたが男の子だろうが女の子だろうが、私の王子であることには変わりないわ。」
結月「人の役割を決めつけないで。」
ルミ「っ……。」
結月「僕は君の友達だよ?そう思うことは全部不正解なの?」
ルミ「…………そうよ。両思いでずっと幸せに暮らしていける終わりじゃなきゃハッピーエンドじゃないわ。」
結月「ルミ……」
ルミ「私はずっと、ずーっとここで結月と一緒に居たかったよ。」
結月「もう帰らなきゃ……」
ルミ「そう……さよなら。どうか幸せにね。」
結月「こちらこそ、君の幸せを祈ってるよ。君と過ごした時間、楽しかったよ。」
ルミ「もしも生まれ変われるのなら、君の世界に生まれたいな。」
結月「それじゃあ、またね。」
ルミ『私は求めている。』
結月『同じ世界で、』
ルミ『一人ぼっちの私に光をくれる誰を。』
結月『いつまでも待っている。』
ルミ『私は探している。』
結月『いつしか愛された記憶を、』
ルミ『その面影を、』
結月『開かない箱に閉じ込めて、』
ルミ『時に口づけをして、』
結月『あなたの居ない未来へと、
ルミ『連れて歩いていきたい。』
夢見る月の夢物語 梔子 @rikka_1221
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