第2話 友達の条件って何? 友達の作り方

「俺の絵をパクってんじゃねーよ。下手くそ」


と書いて、送信ボタンを押そうとしたとき、


「バカモーン!!」


なっなんだよ!


さっき消えたおっさんが戻ってきてる。


「自分が友達に望んでいる通りに、友達には振る舞わねばならぬ!お主には友達の条件も説明する必要がありそうじゃ!」


また、おっさんが現れた。折角、友達を作ろうとしたのに……


「おっさんに言われたとおり、返事をしようとしたじゃん!」


「いやいやいやいや。ちょっと待って!ちょっと待って〜お主がとわだったとして、俺の絵をパクってんじゃねーよって返信が来たらどう思う?ショックを受けないか?」


「うーん。確かに……せっかく、声をかけたのに、何だこいつって思うかも」


「そうじゃろ。自分じゃなく、相手の立場に立って、相手にとって良いこと振る舞いをしないといけない。それが友達の条件を満たすことにもつながるんじゃ」


「友達の条件?」


「そうじゃ。友達の条件その①友達にとって良いことを自分ができることじゃ」


「友達にとって良いことを自分ができること……」


「そうじゃ。友達の条件は他にもあるが、これが第一ステップじゃ」


「うーん」


「そんなに悩みこまなくても良い。例えば、このとわと友達になるためにはどうしたらいいか考えて行くぞ!」


「とわは今、お主と仲良くなりたいと思ってる。とわは絵を頑張ってる。そうなると、お主と仲良くしたい理由は、


その1 一緒にいると自分が成長できる友達

その2 一緒にいると心地いい友達

その3 一緒にいると利益をもたらす友達


のどれに当てはまるじゃろう?」


「一緒にいると自分が成長できる友達かな?」


「ふむ。そうじゃとしたら、条件その①友達にとって良いことを自分ができること考えると、とわと友達になりたいのであれば、成長できる何かを伝えないといけないな」


「成長できる何かか……とわはどうやったら、そんなうまく絵がかけるんですか?って聞いてきていたから、それに対して答えてみようかな」


「そうじゃない。それは友達が求めていることだと思うぞ。でわな……」


そう言うとおっさんは消えていった。


まだ、この部屋の中にいるんじゃないだろうな……監視されている気がする。

まぁ気にしてもショーがないか。


「とわが求めていることは、絵が上手くなるアドバイスだから……」


僕はツイッターで、とわに絵のアドバイスをする。


「絵は、その絵を見る人との対話だ。絵を見て、人の内部に眠る興味、個人的な好奇心、潜在的な疑問を掘り起こす。そして、それに対して、自分の考えをぶつけるんだ」


僕は送信ボタンを押す。


ピロリン。早速、返信が返ってきた。


「教えてくれてありがとうーなんとなくわかったわ!」


えっそれだけ……


もしかして、とわは、具体的なアドバイスを求めてなくて、ただ、興味本位で連絡していただけなのか……くそうっ期待した自分が馬鹿だった。


次の日の夜……


ピロリン


twitterの通知。


とわからだ!


僕は嬉しくなりすぐにtwitterの内容を確認する。


「ゆいとが言っていたことを考えて、絵を描いてみました!自分の考えを知ってもらうために、自分の内側にある興味や、自分のものの見方でものをとらえ、自分なりに絵を書いてみました!」


コメントともに絵が送られてくる。タイトルは「輪廻」


とわから、また連絡が来る。


ふふっ本当に連発で連絡してくる奴だな。


「輪廻転生したときの、前の人生で出会った人たちとの別れの悲しみと今の人生で再度その人たちに出会った時に、僕のことを忘れられてる悲しみを表現してみました!」


こいつ何言ってるんだ?僕は絵を見る。


今までの絵とは違うとはの思いが詰まっているように感じた。


……


僕が言ったことをすぐに出来てる。こいつすごいな。


くそうっなんだか悔しい。俺が絵を書いてたらもっといろいろな表現が出来るはずだ……


なんて返信しよう……僕はおっさんのことを思い出す。


「友達にとって良いことを自分ができること」


その考えからすると、とわは、絵を上達したいと思ってるから、絵が上手くなるアドバイスがいいんだよな……


それから、とわとのツイッターは続いた。とわは、ものすごく物知りで、僕が知らないことをたくさん知っていた。だから、僕も楽しかった。


何回も絵を書いてほしいと言われたけど、断っていた。


絵を書くのは忘れたいんだ。


僕は学校でも友達を作るために、おっさんに言われたとおりに、成長したいと思ってる友達には成長に繋がる言葉や行動を、心地よさを求める友達には、心地よさに繋がる言葉や行動を、利益を求める友達には利益に繋がる行動をしてきた。


そのような対応をしていると、僕にはたくさんの友達が出来て、学校の人気者になった。


そして、孤独じゃなくなった。これで休み時間もひとりじゃない。


でも、心はなんだかからっぽだった……


なんだか、自分というものがわからなくなっていた。


そんな気持ちのまま中学校を卒業し、僕は高校1年生になった。



新しい環境でも、僕はたくさんの友達を作ろうと思っていた。


だって、そうすれば、孤独にならなくて済む。


そんな僕に声をかけるやつがいた。


「俺、とわっていうんだ!よろしくな!ゆいと!」


図々しい奴。なんで、初対面で呼び捨てなんだよと思って振り向く。


「俺、とわって言う名前でtwitterしてるんだけど、もしかしてゆいともtwitterしてる?」


こいつっtwitterのとわか!!


「あっ驚いた顔した!!やっぱり、お前、ゆいとだ!」


こっちが全く喋ってないのに、喋り続けている…こいつはtwitterのとわだ……実際もウザそうだぞ。


「この学校。美術部があるらしいぞ!一緒に入ろう!」


まだ、一言もこっちはしゃべっていないんだけど……


「いこうぜ!」


そういって、僕の手を取り、強引に美術部につれてこられた。僕、まだ一言もしゃべってないんだけど……


……絵具の匂いがする。懐かしいな。


顧問の先生らしい人と、一人の女の子がいる。


「はじめまして!俺はとわで、こいつはゆいと!美術部に入るのでよろしくお願いします!」


「僕は絵は書かないって言ってるだろ!」


僕はとわに腹が立って、その場なら逃げ出した。


「おい!ゆいと!」


とわが追いかけてくる。


「なんだよ!!」


「どうして絵を書かないんだよ」


そう言って、とわは、僕の肩に手をかける。


「……絵は書きたくないんだよ!」


「ゆいと……」


「もうほっといてくれ!」


そう言って立ち去ろうとする僕にとわは言った。


「お前は俺と違って才能があるんだから、絵を描かないとだめだ。俺は、お前の絵がみたいよ……」


そんな声が聞こえた。げど、僕はかまわず逃げた。


その夜……


twitterの通知が来る。とわからだ。


「昼間は強引に美術部に誘ってごめん。でも、俺は絵を書かないゆいとのことを残念に思ってるんだ。こんなことは、おせっかいだとわかってる。けど、ゆいとは絵を描く楽しみを知ってるのに、それをしないのは不幸なことだと思う」


とわ……


中学校で出来た友達の中に、こんなことを言ってくれる友達はいたかな……


中学校で出来た友達のほとんどは、高校に入ったときに、連絡が来なくなった。あんだけ、人気者だったのに……


でも、たくさん友達ができた方がいいに決まってる。そのほうが価値のある人間なんだ。


そう思っていると、twitterの通知が鳴る。


「そんなものは友達ではない!」


アイコンを見ると、あのおっさんの顔が写っている。


twitterもやってるのかよ……


はぁーまた、あのおっさんか………


とりあえず、僕はブロックすることとした。


「なんでブロックするんじゃ!」


突如、僕の前におっさんが現れる。


このおっさん何でもありかよ!


なんか、泣いてる。よっぽどブロックされたのが悲しかったのか……


「友達の条件その② 自分がその友達に惹かれることじゃ!」


勝手に喋りだした……ほんと自由だな。でも、泣いてるし、相手してあげよう。


「自分が友達に惹かれること?」


「そうじゃ。自分自身が興味をもてない友達と友達になっても意味はないんじゃ。その状態で、相手の求めることを自分がしても、相手にとってはいいかもしれんが、それは、自分の時間を浪費しているに過ぎんのじゃ!」


「自分自身が興味を持てない友達と友達になっても意味はない……」


「そうじゃ」


確かに、相手が求めることをしてきたけど、なんだか虚しかった。それは、自分自身が相手に惹かれていないのに、友達になろうとしていたからだったのか……


「そして、条件③ 相手も同じことを考えているじゃ。条件①と②に関して、自分だけじゃなく相手もそう考えているということが重要じゃ」


「自分が友達と思っていても、相手にとってはそうだとは限らないということ?」


「そうじゃ。相手も、

条件① 友達にとって良いことを自分ができること

条件② 自分が友達に惹かれること

これらの条件がそろってなければ友達ではない」


「確かに、中学校でたくさんの友達を作った気になっていたけど、なにかむなしかった。それは、自分が友達に惹かれていなかったからかも知れない」


「そうかもしれんな……とわのことはどう思うんじゃ?」


「あいつは俺のことを心配してくれてるし、俺の絵に惹かれていると思う。だから、条件①と②を満たしている思う」


「そうじゃな。あとはお主がとわと友達になりたいと思うかじゃな。そう思えば、条件③を満たすことになる」


「じゃあ、とわは友達だと思う。友達を作るって難しいんだな」


「そうじゃな。でも、友達がいれば、それだけで楽しくなるぞ!友達を大切にな」


そういうとおっさんは消えていった……


とわはいいやつで友達だ。僕はすごく満たされた気持ちになった。


……でも、僕は美術部には入らない。

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友達いない ペンギン @penguin_family

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