草凪澄人の決断⑤~草凪澄と対面する澄人~

澄人が草凪澄と対面して言葉を交わします。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 彼の目は大きく見開かれ、俺の全身をくまなく観察してくる。


「お前は何者だ? なぜ、はざまの世界のことを知っている」


「草凪澄。俺はお前と話がしたい」


「ふざけるな!! 私にはもう時間がないんだ!!」


 草凪澄は俺の話に耳を傾けることなく、両手を頭上に掲げた。


「神器解放・草薙の剣」


 草凪澄が草薙の剣を出すのと同時に、俺も澄人の剣をアイテムボックスから引き抜く。


 お互いに同じ武器を持ち、向き合ったまま動かずにいた。


「お前も神器を持っているだと? どういうことだ剣の神器は俺が……」


 草凪澄は困惑しながら俺の持つ剣を見つめている。


 黄金の光を放つ剣を見て、一目で神器だと見抜いたようだ。


「俺は澄人……草凪澄人。四百年後の未来から来たんだ」


 澄人は自己紹介をしながら、草凪澄に微笑む。


 しかし、草凪澄は警戒を解こうとはせず、俺の隙を見つけ出そうとしていた。


「そんな世迷い言を誰が信じるものか」


 草凪澄は鼻で笑い、俺をバカにするような視線を向ける。


 だが、俺には草凪澄の反応が想定内だった。


 俺は笑みを崩さず、余裕の態度で言葉を続けた。


「信じなくてもいい。でも、俺は本気なんだ。草凪澄、俺と話をしよう」


「…………断る」


 草凪澄は俺と距離を開け、いつでも神器を振るえるように構えたまま動かない。


 俺はそんな草凪澄を無視するように自分の話を語り始めた。


「草薙の剣を使って異界で瘴気を払ったけれど、根本的な解決にはならなかった」


 ピクリと眉を動かし、草凪澄の眼光が鋭くなる。


 彼は神器を構えたまま、黙って話の続きを待っているようだった。


「焦ったお前は、はざまの世界で世界樹の苗木を植えようとしている。違うか?」


 草凪澄の額から汗が流れ、口が渇いているように見える。


 俺はそんな彼の行動による未来を知っているため、さらに話を続けてみた。


「はざまの世界にはお前が想定している以上の瘴気があり、世界樹の樹は侵食されてさらなる瘴気を生み出す」


「お前は何を言っているんだ!? そんなことがあるわけないだろう!!」


「あるさ、俺は見てきたんだ。世界樹が黒く染まり、黒い植物が地球へ侵略してくる未来を」


 俺はそう言って、自分が直接見てきた未来の光景を草凪澄に説明する。


 草凪澄は信じられないという顔をしているが、俺の話を遮ろうとはしなかった。


「……だからなんだというのだ。私はこの命と引き換えにしてでも、世界を救わねばならない」


「それがお前のやりたいことなのか?」


「そうだ。私はこの世界の希望なんだ」


 草凪澄は自分に言い聞かせるように力強く語る。


 その様子に、俺は思わず顔をしかめてしまった。


(こいつ……意固地になっているな……)


 俺は草凪澄を止めるために話をしているのだが、聞く耳を持ってくれない。


 草凪澄は目を閉じて精神統一を始めており、攻撃の準備を整えようとしていた。


(どうするかな……)


 俺は草凪澄の様子を見ながら、どのように説得するか考える。


 このような男の性格上、一度決めたら引かないタイプだろう。


(普通の説得は難しいかもしれない。とりあえずは……)


 俺は右手に持つ澄人の剣を消してから、草凪澄へ近づこうとする。


「何の真似だ……切り捨てるぞ」


「その剣は普通に使っても鈍器だろう? 神気を開放した一撃でなければ、俺を消せないぞ?」


 俺は草凪澄の注意を引くように挑発をした。


 案の定、彼は俺の言葉に反応して目を見開く。


「貴様ぁ!!!!」


 草凪澄の怒りが爆発する前に、俺は全力で走り出した。


 そして、一気に間合いを詰める。


「このっ!!」


 草凪澄は怒りに任せて、横薙ぎに草薙の剣を振ってきた。


 澄人はそれを跳躍して躱し、空中で体をひねりながら草凪澄の顔面を蹴り飛ばす。


「ぐあっ!」


 草凪澄は俺の攻撃に反応できずに、地面に倒れ込んでしまった。


 澄人は倒れた草凪澄を見下ろし、首を振る。


「はざまの世界のことを考えて神の一太刀を使えないか? 俺はここでお前を殺してでも止めるぞ?」


「それはお前も同じだろう!!」


 草凪澄は立ち上がって俺を睨みつけてくる。


 その目からは俺を殺すと言わんばかりの殺気があふれ出ていた。


「もう一度言う。お前に話があるんだ」


「黙れ!! 私の邪魔をするなら、たとえ誰であろうと容赦しない!! 草薙の剣よ!!!!」


 俺の言葉を聞き入れず、草凪澄は頭上に掲げた剣に意識を集中させる。


 すると、草薙の剣が濃い黄金色の光で輝き始めた。


「神器解放!! 俺を惑わす者は全て消え去れ!!」


 草凪澄は光輝く剣を俺に向け、上段から振り下ろす。


「神の一太刀!!!!」


 草凪澄が放った黄金の刃は地面をえぐり取りながら、一直線に俺へと向かってきた。


 俺は神器を使用することなく、神の一太刀を眺めている。


「死ねぇぇ!!」


 草凪澄は絶叫しながら、さらに力を込めた。


 さらに黄金の光が輝きを増し、辺り一面に黄金の光が降り注ぐ。


 体を覆う魔力に神性を付与した俺の前で、黄金の斬撃は跡形もなく消滅してしまった。


「なん……だと……」


 草凪澄は目の前で起こったことが信じられないのか、膝を付いたまま放心状態で固まっている。


「神の一太刀でも、神性属性を保有している者が相手だと威力が弱まる。今のお前は、対抗策を持っていないんだ」


 俺は呆然としている草凪澄に話しかけたが、返事はない。


 俺は俺はそんな彼へ手を差し伸べた。


「話を聞いてくれ」


 草凪澄は差し出された手をじっと見つめていたが、ゆっくりと俺の手を掴む。


 俺は草凪澄の体に負担をかけないように引き上げてから、再び同じ言葉を繰り返した。


「話を聞いてほしいんだ」


 しばらく経つと、草凪澄は俺のことを警戒しながら口を開く。


「お前は……いったい何者なんだ……」


 草凪澄は、神器を解放しても全く歯が立たなかった俺の正体を探っているようだ。


 俺は彼の質問に答えるため、先ほどと同じ内容をもう一度口にする。


「俺は四百年後の未来から来たハンターだ」


「……本気で言っているのか?」


「証拠を見せようか?」


 草凪澄は眉間にシワを寄せて、俺の言動を疑う。


 俺はアイテムボックスから自分のスマートフォンを取り出し、動画アプリを起動する。


 そして、とある映像を選択してから草凪澄へ差し出す。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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