草凪澄人の決断③~草凪澄登場~
過去の異界で草凪澄が登場します。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「私は草凪澄! この世界を救うために天から遣わされた!」
草凪澄と名乗った男性は、周囲に集まった人に向けて堂々と語り掛ける。
背が高く、黒い髪を伸ばしている和服姿の青年は、草薙の剣を掲げていた。
人々は何が起こったのか理解できず、ただ呆然としているだけだった。
しかし、時間が経つにつれて、ざわめきが少しずつ広がっていく。
「おおっ! これが神のご加護か……」
「ありがとうございます。草凪様」
最初に反応したのは、草凪澄の剣を間近で見ていた周りの人たちだった。
感謝の気持ちを伝えようと、口々に草凪澄の名前を叫び始める。
それを聞いた草凪澄は満足そうな表情を浮かべ、もう一度剣を構え直した。
「これからこの地へ安息をもたらす!! 住人を集めてくれ!!」
草凪澄はそう言うと、後ろにいた二人の女性へ視線を送る。
弓を持っていた女性はうなずき、散り散りになっていた住民たちを呼び集め始めた。
逆に槍を持っている女性は懐から見覚えのある赤い石を取り出す。
(結界石……もしかして、今から結界を張るのか?)
俺が予想した通り、住民が全員集まったのを見計らって、槍を持った女性が結界石を発動させた。
石が発動すると、赤い半透明の壁が村全体を包み込む。
同時に結界の外から次々とモンスターが現れるが、草凪澄と二人の女性が撃退していく。
村人の中にもハンターがおり、三人を助けるというよりは、村が壊されないようにモンスターと戦っていた。
実力も今の開拓者よりも数段に強く、草凪澄たちと一緒に戦っている。
(この時代だ。この時代から干渉すれば瘴気を根絶できる【可能性】がある)
俺は時代に干渉するため、一歩踏み出そうとした。
【忠告】
時代干渉になります
見る以外のことをした場合、この時代に残ることになります
(ここで……)
俺は足を踏み出しかけたが、寸前で動きが止まってしまう。
この一歩を踏み出せば俺は確実に元の世界へ帰れなくなる。
決断をしたはずの俺の脳裏には、聖奈やお姉ちゃん、夏さんの顔がよぎっていた。
(このまま進めば俺はもうみんなに会えない……だけど!!)
彼女たちが辛い目にあわないために俺はここまで来た。
瘴気が根絶されれば、ハンターとして活動する人はいなくなるだろう。
(戦いのない未来のために、俺はここで戦う!!)
俺は力強く一歩前に足を出し、永遠の闇を発動させて姿を隠した。
【システムメッセージ】
時代への干渉を確認
時の回廊を終了します
(みんな……今までありがとう。さようなら)
覚悟を改めた俺は、目立たないように姿を隠しながら草凪澄たちを眺める。
すでに結界を定着させるための戦いは終わり、草薙澄が結界について説明をしていた。
その集団に近づいていると、草薙澄が俺にとてもよく似ている。
(神域で見たときにも思ったけど、本当にクローンなんだな)
見た目だけではなく、声まで似ているため、不思議な気分になる。
ただ、俺と違うところがあり、それは雰囲気だった。
自信に満ちた行動力に加え、どこか威厳のようなものを感じる。
「草凪さま、周辺にモンスターはおりませんでした」
「ご苦労だった。マコトも休んでくれ」
そんなことを考えていると、弓使いの女性が草凪澄に声をかけてきた。
マコトと呼ばれた女性は草凪澄に労われると少し頬を赤らめ、槍を持つ女性の元へ行く。
「お疲れ様、マコト」
「ヒジリも。順調に進んでよかったわ」
槍を持っている女性はヒジリさんというらしく、マコトさんと仲が良さそうに話をしている。
名前だけわかっても感じがわからないため、頭の中で似合いそうな漢字を考えることにした。
(マコトさんは……もしかして、真さんの子孫か!? ……和服にそれっぽい家紋入っているから確定だな)
それに、槍を持っている女性は真さんと同じように胸が大きい。
子孫だと抜きにしたら、説明ができないくらい似ている。
(草凪澄と同行していた女性は、水鏡と皇。こっちが水鏡なら、槍を持っている女性は皇か……あれ?)
槍を持っている皇の女性は聖奈とそっくりな容姿をしている。
真さんのように似ているどころの話ではなく、瓜二つだ。
身長や髪の長さくらいしか違いがない。
(俺の知っているは、こんなに小さくなかったはずだ……)
ヒジリさんは身長が150ほどしかなく、聖奈と比べれば幾分か小さい。
髪の長さも腰まで伸びており、大人びて落ち着きがあるように見える。
(二人の当て字も誠さんと聖さんでいいか……それにしても、皇の子孫と聖奈が似ているってどういうことだ?)
疑問に思っていると、弓を持っている誠さんがこちらを見た気がした。
俺の姿は永遠の闇で見えていないはずなので、気のせいだと思う。
「……おかしいわ。鏡の反応はあるのに」
「反応ってなんの?」
「私たちよりも強い存在の反応よ。近くにいるみたいなんだけど……」
しかし、誠さんの一言を聞いて確信に変わる。
聖さんが勾玉を使っていたので、誠さんは間違いなく八咫鏡を持っている。
八咫鏡は永遠の闇を使っている俺を感知できる。
(まずいな。近すぎたか?)
このまま捕捉されて警戒され続けるのはまずいと思い、その場から離れた。
人に紛れるため、草凪澄が説明をしている村人たちの中に入り、気配を誤魔化す。
しばらく様子をうかがっていると、話が終わった草凪澄が誠さんたちの方へ歩き出した。
「お待たせ、結界を張る作業はこの村で最後みたいだ」
草薙澄がそう言うと、二人の女性が安心した表情を浮かべる。
その後の行動は俺が知っている通り、女性たちは神器である勾玉と鏡を異界の人に渡した。
境界の地下に祭壇を作らせた草薙澄は、空間に神気を満たす。
神器の譲渡がここでしか行えないのは、草薙澄がこのような細工をしたのが理由みたいだ。
それらの作業が終わってから数日後、草薙澄たちは村人たちに見送られながら異界を後にしようとしていた。
「世界に破滅の音が聞こえた時、再び自分と同じ存在がこの世界へ来る。このことを後世へ伝えてくれ」
別れ際に草薙澄は、村人に向けて真剣な表情で語り掛けていた。
その言葉を聞いた人たちは涙を流し、感謝の言葉を口にしながら手を振っている。
俺はその光景に視線を奪われることなく、草薙澄たちが異界を離れる瞬間を待つ。
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ご覧いただきありがとうございました。
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