草凪澄人の決断①~瘴気の侵略~
澄人が目を覚ましてある決断をします。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
聖奈から引き留められる言葉を投げかけられていたが、遮断をするように通話を終了させた。
使い終わったスマホを机の上へ置き、椅子の背もたれに体重をかけて天井を見上げる。
(ごめん、聖奈。おそらく戻ることはできないんだ)
考えなければならないことは色々あるけれど、まずは今の状況を整理しようと思う。
はざまの世界から生還し、寝込んでいた俺が起きるとそこは見慣れた自室だった。
そして、目を覚ました俺が最初に見たものは、これらの【通知】だ。
【システムメッセージ】
瘴気が異界と地球に侵略してきました
人類が滅亡する前に《異界ミッション9》を達成してください
【異界ミッション9】
瘴気発生の原因を解決せよ
成功報酬:???
失敗条件:人類の滅亡
異界ミッション9に表示されていなかった失敗条件が追加されていた。
これはおそらく、ミッションを出している草凪澄が慌てて付け加えたものだと思う。
(こんなことができるなら、どうすればいいのかヒントをくれればよかったのに)
ミッションの報酬がヒントだと考えた俺は、まだ使っていない二つのものを見た。
【世界樹の苗木】
【時の回廊への鍵】
おそらくこの二つが瘴気を解決するために必要なアイテムなのではないかと思っている。
世界樹の苗木をはざまの世界に植えても、瘴気に染められて被害を余計に酷くするとミュルミドネスが言っていた。
(それで時の回廊への鍵を使ってみたら……これだからな)
【時の回廊への鍵】
未来や過去をみることができます
注意:干渉する場合は元の時代に戻れなくなります
この鍵を使って、瘴気が万延する前にはざまの世界で瘴気を根絶するしかない。
どの程度で干渉と判断されるかは不明だが、過去に飛んで歴史を変えようとしている時点で、戻れる可能性はないだろう。
(このまま瘴気に抗うって手段も取れるけど、ただの時間稼ぎにしかならない)
瘴気の広がり方は異常で、地図機能で表示される地域がどんどん少なくなっていっている。
見えなくなった地域には瘴気が万延し、黒い植物が侵略を始めているはずだ。
「テレビやネットでもこの話題しかない……世界中で同時に起こっている……俺と聖奈だけじゃ対処できない」
スマホを操作してニュースサイトを流し見ても、どこも黒い植物に関する内容ばかりだった。
(俺にしか解決できない……俺だけが実行できる……それに……俺がやりたい!)
根本的な解決をするにはこの鍵を使うしかないと判断し、みんなへ別れのメッセージを送信していた。
聖奈以外からの返信はないが、ハンター協会で黒い植物について説明をしているとのことなので、それを聞いているのだろう。
「あ、お姉ちゃんから電話だ……止めておこう」
聖奈の電話に出るだけでも後ろ髪を引かれる思いをし、これ以上家族との時間を作ってしまうと、決心が鈍りそうだ。
そんなことを考えながらテレビをつけっぱなしにしていると、緊急速報が流れた。
『緊急ニュースです!! 本日正午過ぎに、アメリカのホワイトハウスが巨大な黒い植物によって破壊されました!!』
その映像では複数のカメラマンが撮影したと思われる動画が流れており、ホワイトハウスの入口付近を映したカメラの映像だった。
警備の人たちがバリケードを作り、中ではハンターが黒い植物と戦っている。
その様子を上空から撮影しているためか、まるで映画のようなシーンになっていた。
『覇王ギルドのハンターを中心に戦闘を行っておりますが、黒い植物はどんどん増えており、このままではここも──』
ホワイトハウスの玄関前にある噴水の前では、五十人以上の人が黒い植物を相手に戦っているようだ。
しかし、弱ってきた人から植物の蔓のようなものに巻き付かれて、体の自由を奪われてしまう。
そのまま地面に何度も叩きつけられているのを見て、画面外から悲鳴が聞こえる。
今度は別の場面が映し出されると、そこには息絶えたハンターたちが倒れていた。
(覇王ギルドが応戦していてこれか……壊滅するのに時間はかからないな。行こう)
俺がニュースを見ている間中ずっと震えていたスマホに手を触れることをせず、時の回廊への鍵を握る。
【システムメッセージ】
時の回廊の使用が可能です
使用しますか?
《はい》《いいえ》
この鍵は場所を選ばずに使えるのか、握りしめただけで使用確認の画面が表示された。
──ガッシャーン!!
《はい》を選択するために視線を動かした時、玄関が思いっきり開け放たれた音が聞こえてくる。
開けたどころか、壊れてしまったのではないかと思うくらい全力で開けたようだ。
「澄人!!!! まだいるの!!??」
「澄人さま!!!!」
廊下を走る足音に続いて、お姉ちゃんと夏さんの声が家中に響き渡る。
その声を聞いた俺は、会う前に鍵を使うために手を動かした。
「澄人!!」
「澄人さまぁあ!!」
勢い良く部屋の扉を開けたお姉ちゃんに続き、夏さんが泣きそうな顔でこちらへ来る。
しかし、もう鍵を使用した俺の体を青い光が包み込もうとしていた。
「行ってきます。挨拶がろくにできなくてごめん」
俺は二人に微笑みかけながら言葉をかけ、光に包まれて視界が青く染まった。
そして、次の瞬間には見慣れない場所に立っていた。
【システムメッセージ】
時の回廊へ入場しました
願った時代の風景をみることができます
「願った時代ね……一年先のホワイトハウスを見せてほしい」
直前までニュースで見ていた風景と比較をするため、一年後の同じ場所を思い浮かべる。
すると、すぐに周りの景色が変わり、街が黒い植物に飲み込まれた街並みになった。
ホワイトハウスの跡地なのか、崩れ落ちた建物が多く、地面がひび割れて黒く変色している。
空は異界と同じように紫色の雲がかかっており、今にも雨が降り出しそうな雰囲気だ。
「一年でこんなになるのか……これは?」
近くに落ちていた新聞を手に取ろうとしたら、赤色の画面が表示された。
【忠告】
時代干渉になります
見る以外のことをした場合、この時代に残ることになります
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は【本当に】未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー&いいね】をよろしくお願いいたします。
これからも頑張るので応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます