瘴気の謎①~七色の樹跡地捜索~

澄人が瘴気の謎を解明するべく、七色の樹があった場所の周辺を捜索しております。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 俺が神器を使ったじいちゃんを越えても、生活に変化はない。


 いつものように境界を攻略し、異界の様子を見て、澄から与えられたミッションをこなす。


 世界ハンター協会からの依頼も簡単そうなのはすぐに達成した。


 そんな生活をしているにもかかわらず、未だに達成できないミッションがある。


【異界ミッション9】

 瘴気発生の原因を解決せよ

 成功報酬:???


(瘴気の正体を聞いていないから、原因って言われても……)


 もう一度草凪澄に会うことができれば簡単に終わりそうなこのミッション。


 それが叶わないため、俺は彼との会話を思い出して、手掛かりを探すことにした。


「ミュルミドネスがいたから、異界に瘴気が広がった……どこから?」


 マルタ大陸の七色の森があった跡地を歩きながらひとり呟く。


 瘴気の原因となっていたミュルミドネスが消えたからなのか、魔物にはほとんど遭遇することはない。


 これはこれで異界ビジネスには大打撃だなと嘆きつつ、目的地もないまま進む。


「瘴気ってやつが見えればいいんだけどな……そんなもの見たこともないし……手詰まった!」


 立ち止まって空を見上げる。


 相変わらず、紫の雲が渦を巻いたり、たまに消えていたりして不気味な雰囲気を出していた。


 こんな景色を見ても何も思い浮かばない。


「うーん……うん? 異界だからって受け入れていたけど、あの空はおかしいよな」


 異界の上空を漂う雲はおかしい。


 俺の知っている普通の雲は白色だ。


 しかし、この異世界では常に紫の雲が視界に入っており、慣れてしまっていた。


 改めてなにか瘴気的なものはないかと探した時、暗い緑色の空と紫色の雲は怪しく思える。


「そういえば……七色の樹が生えたとき、妙に辺りが暗かった気が……」


 空に瘴気が漂っているのだとしたら、最近薄くなってきた雲にも説明がつく。


(ミュルミドネスがいなくなって増幅するやつがいなくなったから……確認してみる価値がある)


 その仮説が正しいのか確かめるため、雷の翼を広げて空へと飛び立つ。


 風を切る音を感じながらしばらく飛び、紫一色の雲を正面に見据える。


「鑑定では何も視えない……瘴気ってなんなんだ?」


 当たり前だが、紫色の雲を触ろうとしても手がすり抜けてしまう。


 紫色の雲も水の粒子が集まってできているのだろうか。


「でも、紫色の雨なんて……雨の色なんて気にしたことなかったな……雨?」


 雨で攻撃をしてきたモンスターに身に覚えがあり、すぐに思い出すことができた。


(雷帝龍……雲に電気を付与して地上のモンスターを麻痺させていたけど……あいつはなにをしていたんだ?)


 今考えると雷帝龍が無駄に雨を降らせていただけではないと考えることもできる。


 俺は異界に住んでいるわけではないので、そこまで雨とモンスターの関係について詳しいことはわからない。


 ただ、それがわかれば、瘴気の正体に近づけるだろう。


「一度リリアンさんに相談をしてみるか……ヨルゼンさんやクサナギさんに聞いてみてもいいかもしれない」


 この場でできることは少ないと考え、一度地上に降りようとしたその時――。


「ギィイイイイイ!!!!」


「なんだ!? なにも……いない?」


 耳障りな鳴き声が聞こえてきたと思ったら、周りには何もいない。


 雷による察知にも引っかかっておらず、鳴き声だけが俺に届いてきていた。


「どこだ!? 永遠の闇みたいに何も感じない敵か? なにっ!!??」


 声の主を探していると、突然目の前に大きな口が現れた。


 咄嵯に体を捻って回避行動を取ろうとしたが間に合わず、右腕を噛まれてしまったようだ。


「ぐっ!!?? おらぁ!!!!」


 激痛が走る中、雷の槍を作り出して、相手の口を貫いたところでようやく解放された。


 痛みに耐えながら口が出た場所を睨みつけても、もうそこにはなにもいなかった。


「いったぁあああ!! 腕が! なんだったんだ!?」


 右手を見ると血だらけになっており、骨が砕けている。


 大きな口が現れたのが一瞬で相手についてほとんどわからなかったが、一つだけ確信を持てる事実がある。


(耐久力SSSもある俺の腕を噛み砕ける相手が異界のどこかに隠れている)


 そんな相手が雷の察知にも引っかからないまま異界にいると思うとゾッとする。


 自己再生で腕が完全に治るまで周囲を警戒しながら待っていたが、それ以上襲われることはなかった。


「ふぅ……雷の槍で向こうも負傷したのか?」


 腕の再生が終わり、感覚を確かめるように何度か手を握って開いてを繰り返す。


 手や腕にはなんの違和感もなく、完全に元通りになっていた。


「とりあえず、ここから離れよう。あれ? あれは……よし!」


 腕の怪我が完治した俺は首都を目指してワープをしようとした。


 しかし、眼下に懐かしい街を見つけて、そちらへ寄ることにした。


(アリテアス。モンスターの情報ならここでも聞けそうだな)


 俺が最初に開拓者の登録をしたギルドがあるアリテアス。


 あそこにはレックスさんなど、長年開拓者として活動してきた人たちが大勢いる。


 リリアンさんには通信で調べてもらいたいことを連絡しておき、先にアリテアスへと向かった。


 このアリテアスも一度は崩壊したが、建物の外見や周りの雰囲気は変わらないため、懐かしさを感じる。


 そのため、少し感慨深いものがあるが、今はそんな気分に浸っている場合ではない。


(久しぶりに来たけど……変わってないな。開拓者ギルドはどこだったかな)


 記憶を頼りに開拓者ギルドへ入り、俺がいたときにはいなかった受付の男性に声をかけた。


「すみません。聞きたいことがあるんですけど……」


「……えっ? その声は……もしかしてジョンか!?」


 開拓者としての俺の偽名である【ジョン】という呼び名で呼ばれ、知人なのかと思って顔をよく見る。


 開拓者ギルドの制服を着ていて気付くのが遅くなったが、俺が知っている顔だ。


「イアンさんですか?」


「そうだよ! お久しぶりです!」


 彼は俺と同じ時期に開拓者になった同期であり、異界の生活に馴染めるようにいろいろと協力をしてくれた。


 イアンさんと一緒にアリテアスにはいっていなかったら、絶対に困っていたと思うほど、彼に感謝している。


 開拓者になったはずの彼が何故か職員として働いていた。


 お互いに声を上げてしまい、視線を集めてカウンター越しに話し続けることがなんだか気まずい。


「ジョン、あっちで話をしよう。休憩を貰ってくる」


 空気を読んでくれたのか、イアンさんの方から場所を変えようと提案をしてくれた。


 俺が返事をするよりも早くイアンさんは奥の部屋へと入っていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は【本当に】未定です。

更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。

これからも頑張ります。

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