草凪澄人の選択⑪~澄人の剣開放~
澄人が開放された草凪の剣を使用します。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(ここまでの剣になっているとは……収穫だ!)
今まで切れ味が全く無くて神の一太刀だけに使っていた神器の剣。
草薙の剣を【澄人の剣】にしてくれたことで、威力のある斬撃を繰り出すようになった。
それだけでも十分すぎるが、俺はまだしていないことがある。
剣の機能を開放するために神気を込める。
――キィイイン
金色の剣が光を帯び始め、剣身から柄、俺の全身へと金色の光が広がる。
俺とじいちゃんの戦いを見ている観客たちは、眩しいほどの金光に目がくらんでいるようだった。
自分の能力がどうなっているのか気になった俺は、じいちゃんの気配を警戒しながらステータス画面を開いた。
【名 前】 草凪澄人
【体 力】 240,000/240,000【3倍】
【魔 力】 300,000/300,000【3倍】
【攻撃力】 EXXXX
【耐久力】 EXXX
【素早さ】 EXXX
【知 力】 EXXX
【幸 運】 EX
【状 態】 草凪の剣による身体能力向上効果有
じいちゃんの矛と同じような機能をこの剣も持っていたが、澄人の剣になってからは初めて使う。
ステータスが軒並み上昇し、全能力がEX以上になっていた。
「澄人よ、なぜ最初からその剣を使おうとせんかった?」
じいちゃんが矛の穂先を下げ、俺へ問い詰めるように話しかけてきた。
その顔からは俺を責めるような雰囲気はなく、ただ純粋な疑問を口にしているように見える。
「……この剣を受け取ってから一度も使ったことがなかったし、最初は神器を持っていない平義先生が相手だったから、使わないでおこうと思っていたんだ」
俺は正直に答え、じいちゃんの目をまっすぐ見つめた。
じいちゃんは俺の言葉に耳を傾け、何も言わずに俺を見続けている。
「それに、じいちゃんがその神器を使って本気で戦ってくれたからこそ、俺もこの剣を使う気になれた。だから、ありがとう」
俺はそう伝え、最後にじいちゃんへ頭を下げる。
すると、競技場内が静寂に包まれた。
「……フハハッ!! 面白い!! それでこそわしの孫じゃ!!」
じいちゃんは高笑いをしたあと、矛を構える。
俺もそれに合わせて剣を構え、お互いの視線が交差した。
「次の一撃に俺のすべてを込める……じいちゃんが耐えたら俺の負けだよ」
「ほう……では、わしもすべてをぶつけるとしよう」
俺とじいちゃんはお互いに口角を上げ、静かにその時を待つ。
観客席からも物音が消え、俺たち二人だけが競技場内の空気を支配した。
「ゆくぞ!!」
「こい!!」
じいちゃんが先に動き出し、矛を振り上げる。
俺も呼応するように剣を振り上げ、矛と剣がぶつかる瞬間、俺の体が激しく光り輝いた。
「神の一太刀!!!!」
「草凪流!! 破天!!!!」
二人の叫び声が同時に発せられ、矛と剣から放たれた白と金色の光がぶつかる。
その瞬間、俺とじいちゃんを中心に衝撃波が広がり、世界が震えたような気がした。
「澄人ォオオ!!」
「じいちゃんんんん!!!」
じいちゃんが俺の名前を呼び、俺もじいちゃんの名を叫ぶ。
じいちゃんが放つ白い炎が矛を包み込み、俺の剣から出る金色の光と混ざってさらに大きな輝きを放つ。
その衝撃に耐えきれなかったのか、俺とじいちゃんを囲うように張られていた結界が砕け散った。
余波は競技場全体へ広がり、観戦していた人たちが悲鳴を上げる。
俺とじいちゃんはその中心で剣と矛を振り切った体勢のまま、動かずに相手の出方を見る。
――カランッ。
じいちゃんの手から矛が離れ、地面に落ちる乾いた音が響く。
それと同時に白い炎がすべて消えた。
じいちゃんの体から力が抜け、地面に片膝をついた。
俺は慌ててじいちゃんのもとへ駆け寄り、体を支える。
「大丈夫!? じいちゃん!?」
「澄人……お前は強くなったな……」
じいちゃんは満足そうな笑みを浮かべ、俺の頬に手を当てて祝福をしてくれる。
俺は支えながらじいちゃんの顔を見ると、目尻には涙が浮かんでいた。
「……わしの完敗じゃ。澄人……すごいな……」
「じいちゃん……!!」
じいちゃんは俺の返事を聞く前に目を閉じて気絶してしまい、俺はじいちゃんの体を抱えて救護室へ運ぶ。
地下にあるはずの競技場へ日が差し込み、どういうことかと見上げたら大きな穴が開いていた。
神器の衝突により、競技場の天井に大穴を開けていたらしい。
それでも、観客たちが大きな怪我をしている様子もなく、無事でいてくれたことに胸を撫で下ろす。
俺の体はじいちゃんの一撃を受けて傷だらけになったが、自己再生でもうじき元に戻る。
じいちゃんを支えながら救護室へ行こうとした時、俺の勝利を称える歓声が聞こえてきた。
「澄人!! よくやったわ!!」
「お兄ちゃん!!」
「澄人様!!」
その中にはお姉ちゃんや夏さんの姿もあり、特に聖奈は涙を流しながら拍手を送ってくれている。
「澄人……この矛を持つ正澄さまに……よく勝った……」
その声とともに、師匠は俺の反対側からじいちゃんを支えてくれた。
俺はお礼を伝えようと顔を向けると、師匠の目にも涙が溜まっていた。
そんなことをしている間にじいちゃんは担架に乗せられ、救護室に運ばれる。
俺は師匠と一緒にじいちゃんを見送った後、師匠が口を開く。
「澄人……この矛を完全に開放してしまい正澄さまは……」
師匠がじいちゃんの落とした矛を拾い、悲しそうに眺めている。
その矛は輝きを失い、元の無垢な形に戻っていた。
なんとなくじいちゃんの言わんとしていることがわかり、俺は安心させるように剣を見せる。
「あの矛が使おうとしていたじいちゃんの生命力の代わりに、俺がこの剣を経由して肩代わりしたので何の影響もないよ」
「……それは……本当なのか?」
俺の言葉を聞いても信じられないといった表情をしており、俺の剣を凝視している。
「じいちゃんのステータスを確認したけど、健康状態に問題はないと思う」
「……本当に澄人は規格外だな」
苦笑いをしながら俺の頭を撫でてくれ、師匠はゆっくりと歩き出した。
「では、私もそろそろ行かないと……澄人はみんなに応えてやれ」
「はいっ!」
そう言い残して師匠が俺に背を向け、じいちゃんを追いかけるように競技場を出る。
俺は師匠の後姿を見送り、卒業生が全員見渡せる場所へ移動した。
「卒業生のみなさん!! 俺と祖父の戦いはどうでしたか!?」
「澄人くん!! ありがとう!!」
「最高だったぜ!!」
「澄人!! 感動した!!」
観戦してくれていた卒業生に向かって問いかけると、全員が口をそろえて賞賛してくれていた。
(本気で戦ってよかった)
最後に、危険ながらも戦いを見届けてくれた卒業生へ俺から贈り物をすることにした。
俺が部活で好き勝手していたのを優しく見守ってくれた卒業生へこれくらいしても問題ないだろう。
異界ミッション8の復興度100%を越えたことで手に入れた
「みなさんの今後に幸あれ!!」
俺は神気を込めてから大神実命を持っている手を掲げた。
災厄を取り除く大神実命から放たれた光が上空へ伸び、空から黄金の粒子が降り注ぐ。
その粒子を浴びた卒業生たちは神々しい光景に言葉を失っていた。
「一年間ありがとうございました!」
俺は笑顔を作り、卒業生を見送るように手を振った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は【本当に】未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。
このペースがいつまで持つのか自信がありませんが、精一杯執筆を続けております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます