草凪澄人の選択⑩~祖父の天之瓊矛~

澄人の祖父が神器である天之瓊矛の能力を開放しました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(これが天之瓊矛……見た目が変わっているけど、この力は……)


「この矛は神格を含めて使用者の能力を底上げする……命を削ってな」


「……え?」


 俺は聞き間違いをしたと思い、思わず耳を疑ってしまう。


 しかし、じいちゃんは真剣な顔で俺を見つめたまま動かない。


「わしが澄の字を継いだ時に一度使ったきりで、もう二度と使うことはないと思っていたんじゃが……おぬしの力を見極めるのにはこれくらい必要じゃろうて!!」


 じいちゃんが気合を入れた瞬間、矛の先端から白く輝く光が放たれた。


(速い!!)


 俺が目を見張るほどの速度で迫る白き閃光に対し、ヒヒイロカネの剣を構えることしかできない。


 じいちゃんが放った一撃はわずかに俺を逸れ、背後にあった競技場の壁へ向かった。


――ズドンッ!!


 壁に当たったことで爆発でも起きたような音が響き、競技場内の空気が震える。


 俺が放った雷の威力をはるかに超えており、壁一面にヒビが入っていた。


「我が全身全霊を持って、貴様の挑戦を受けよう!!」


 腰を落として俺を待ち構える姿は、まさしく世界最強のハンターと呼んでも過言ではない。


 鑑定で覗き見たじいちゃんの能力もそれを裏付けている。


【名 前】 草凪正澄

【年 齢】 59歳

【神 格】 10/10(+2)

【体 力】 300,000

【魔 力】 130,000

【攻撃力】 SSS

【耐久力】 EX

【素早さ】 SSS

【知 力】 S

【幸 運】 S


「ゆくぞ!! 草凪澄人!!」


 じいちゃんが気合を入れて叫んだ直後、目にも止まらぬ速さで突進してくる。


 あまりの早さに目を見張った俺は、咄嵯にヒヒイロカネの剣を構えた。


――ガキィィン!!


 金属同士がぶつかり合う甲高い音が競技場内に響き渡る。


 じいちゃんの振り下ろした矛を受け止めることができたが、想像以上の重さに足下が陥没する。


「ぐぅ!!」


「まだまだぁ!!」


 じいちゃんは叫びながら連続で矛を振り下ろす。


 俺はそれをヒヒイロカネの剣で防ぎ、弾き返すことに必死だった。


(なんて重い攻撃なんだ! まともに受けきれない!!)


 ヒヒイロカネの剣に雷を纏わせて反撃しても、攻撃に意識が向いているはずなのに、じいちゃんはこちらの攻撃を読んでいるかのように避ける。


――カンッ! キンッ! ドゴォンッ!!!


 競技場内で剣戟の音を響かせながら、俺とじいちゃんは戦い続ける。


 剣と矛がぶつかるたびに俺とじいちゃんを中心に衝撃波が広がり、地面をえぐり取る。


 試合場を囲む結界がヒビ割れ、いつ消し飛んでもおかしくない。


 それに対処をする余裕なんていうものは、俺とじいちゃんの間には存在しない。


 俺もじいちゃんも一歩も引かずに攻撃を続け、お互いの顔を見て笑みを浮かべる。


「澄人よ! 強くなったな!! この矛を使ったワシとこうもやり合えるとはな!!」


「これからじいちゃんを越える!! ハッ!!」


「ぬぅっ!?」


 じいちゃんの矛を横に弾いて体勢を崩させた俺は、そのまま切りかかる。


 その攻撃をじいちゃんは後ろに跳躍することで回避し、俺から距離を取った。


(勝機!!)


 俺は一気に駆け出して尽力の一撃を振り下ろす。


「はあッ!」


――カァアアンッ!!!


 じいちゃんが気合いを入れると矛にまとう白い炎が大きく燃え上がり、さらに攻撃力が上がった。


 俺はその矛をなんとか剣で受けることができたが、宙にいた俺は衝撃に踏ん張りきれずに吹き飛ばされる。


「くっ!」


「どうした澄人!? そんなものか!?」


 地面に叩きつけられた俺はすぐに起き上がると、じいちゃんが追撃のために間合いを詰めてきていた。


 俺は剣でその攻撃を受け流しながら、隙を見つけようと目を凝らす。


「まだまだいくぞ!!」


 じいちゃんが横薙ぎに矛を振るうと、俺に襲い掛かるように白い火の粉をまき散らす。


 それはまるで吹雪のように俺へと迫り、俺の視界を奪った。


 俺は飛び越えるように上空へ逃げると、白い火の塊が追撃をしてくる。


「はあああっ!!」


 空中にいる俺に向かっていくつもの火の玉が放たれたが、俺は雷の翼で急旋回して避けた。


 しかし、俺を追尾するように火の玉は軌道を変え、再び俺に迫ってくる。


「甘いわ!!」


 じいちゃんが叫んだ瞬間、矛の先端が輝きを増して白き閃光を放つ。


 それが俺の体を飲み込もうとする火球に触れた瞬間、激しい音とともに大爆発を起こした。


「ぐああぁ!!」


 爆煙に包まれた俺の悲鳴は競技場内に響き渡り、爆風によって体が後方へ投げ出される。


 背中を打ち付けたことで息ができなくなり、一瞬だけ意識を失いかけた。


 そして、俺に止めを刺そうと矛を構えているじいちゃんの姿が見える。


 俺がやられると思った時、観客席から大きな声援が聞こえてきた。


「澄人!! 立ちなさい!!」

「澄人さま!! 負けないで!!」

「お兄ちゃん!!」

「スミト!!」

「立って澄人!!」


 みんなの応援の声を聞いて、意識を失う寸前だった俺の心を引き戻す。


(まだだ……ここで負けたら一生後悔することになる!!)


 いつの間にか金剛の意思が発動しており、じいちゃんの突きを転がるようにして避けた。


 体中を襲う痛みに耐えながら立ち上がると、じいちゃんの目には強い光が宿っていた。


「良い目になったのう……それくらいじゃないとわしも倒しがいがないわい!!」


 じいちゃんはそう叫ぶと、猛然と俺へ向かって走り出す。


 それに対して、俺は持っている剣をアイテムボックスへ放り投げる。


「何をっ!?」


 俺が武器を手から離したことで、虚を突かれたじいちゃんは動揺してしまう。


 その間にアイテムボックスへ入れた右手を引き抜き、【俺の剣】を取り出す。


 自ら課していた神器を使わないという枷を外し、黄金の剣を握りしめた。


「はぁあッ!!」


「なんとっ!?」


 金色に輝く俺の剣がじいちゃんの矛を弾き、繰り出した剣戟がじいちゃんを襲った。


 じいちゃんは矛の柄を両手で握りしめ、渾身の力を込めて俺の斬撃を受け止める。


「これが!! 俺の剣だ!!」


「ぬぅううッ!! 澄人ぉおお!!」


 じいちゃんは歯を食い縛りながら俺の名前を叫び、受け止めている矛ごと俺を押し返す。


 その勢いで俺は後ろへ押し戻され、距離を取らされた。


 俺は剣先を下に向け、いつでも斬りつけられる体勢で構える。


 じいちゃんも矛を構えたまま俺の出方をうかがっているようだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は【本当に】未定です。

更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。

このペースがいつまで持つのか自信がありませんが、精一杯執筆を続けております。

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