草凪澄人の選択⑧~一年特別試合~

一年の特別試合が始まりました。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(神の祝福)


 紫苑さんが完全回復するように神の祝福を発動させる。


 すると、黄金の光が紫苑さんの体を包み込み、落ち着いた顔になった。


(さすがにアラベラさんでも体の中に残った水は取り出せないからな)


 紫苑さんが立ち上がり、俺へ感謝を伝えるように頭を下げる。


 真友さんと握手を交わしてから競技場を降り、悔しそうに両膝を抱えて座り込む。


(真剣だったんだな……最後の試合だし、本気を出すか)


 このまま平義先生の横にいたら、馴れ合いの試合になりそうなので、この場を離れることにした。


「すみません。ちょっとウォーミングアップに行ってきます」


 平義先生へ断りを入れて、外のグラウンドへ向かう。


 体を全力で動かすためにストレッチを行おうとしたら先客がいた。


「フッ! ハッ! フッ!!」


 聖奈と戦う予定になっている朱芭さんが銀色に輝く剣を片手に持ち、素振りをしていた。


 声をかけようか迷ったけれど、集中を乱してはいけないと思い、離れたところで準備運動を始める。


「ハァー……ハァー……あれ?」


 朱芭さんは素振りを終えると俺に気が付いたのか、額に浮かんでいた汗をタオルで拭いながらこちらへ近づいてきた。


「澄人くんもこっちに来たの? 聖奈と話をした?」


「できてないよ。聖奈が視線を合わせてくれないんだ」


 朱芭さんは俺たちのことを心配してくれているらしく、少し不安そうな顔で話しかけてくる。


 俺が首を左右に振って答えると、残念そうな顔でため息をついた。


「そっか……だいぶ気にしていたから、澄人くんの方から話しかけてもらえるかな?」


「わかった。朱芭さんからも俺が気にしていないことを伝えてもらえる?」


「もちろん! 試合が終わったらそう伝える」


 俺が頼むと、嬉しそうにうなずいて了承してくれた。


 ただ、試合が終わるまでは聖奈と話さないからと念を押されてしまう。


 朱芭さんは、聖奈と本気で戦うために試合が決まってから距離を取っているようだ。


 二人が本気で雌雄を決するつもりなのがそれだけでわかる。


「私行くね。澄人くんと先生の戦い、楽しみにしてる」


 話が終わると、朱芭さんは俺に背を向け、競技場へ戻るために歩き出した。


「うん。ありがとう」


 その言葉だけをかけて朱芭さんを見送る。


 俺も準備運動を終え、深呼吸をして気持ちを引き締める。


(神器だけは使わない……そのルールで戦う)


 俺の剣になった草凪の剣がどれほどの威力を放つのか未知数のため、平義先生に使うのをためらう。


 それに、先輩たちが見たいのは俺と平義先生による攻防だと思われる。


 このような舞台を用意してくれた卒業生たちの願いを叶えたい。


(ステータスのポイントの振り分けの続きとスキルの練習をしておくか)


 ステータス画面を表示し、途中まで進めていた貢献ポイントの分配を再開する。


 回復薬用に百万程度のポイントを残しつつ、スキルの向上を最優先で振り分けた。


【名 前】 草凪 澄人

【神 格】 10/10

【体 力】 80,000/80,000

《+1000:500,000P》↑

【魔 力】 100,000/100,000

《+1000:1,000,000P》↑

【攻撃力】 EX

【耐久力】 SSS《1UP:10,000,000P》

【素早さ】 SSS《1UP:10,000,000P》

【知 力】 SSS《1UP:10,000,000P》

【幸 運】 S

【スキル】 フィノ召喚・メーヌ召喚

      親和性:雷S・剣B・氷B

          神器A・神性S

      鑑定  思考分析X  剣術X

      自己再生 天翔X 天翼X

      捕食(極) ワープ 永遠の闇

      グラウンド=ゼロ 神の祝福(極)

      翻訳 金剛の意思X 尽力の一撃X

      強者の威圧X 要塞の心得

      かばう 以心伝心 侵食

【従 者】 白間輝正・楠瑛・リリアン

     (3/3)

【貢献P】 1,100,000


 治癒をXまで上げたら、自己再生というスキルに変換された。


 試しに指を一本切り落としたところ、勝手に元通りになる。


(ウネウネ動いていたな……すごい……)


 再生するにしても痛みは感じるので、捨て身で戦うようなことにはならないだろう。


 俺はこのスキルに頼りすぎないようにしようと思いながら、剣を取り出す。


(剣術やスキルを……あれ? 義間先輩だ)


 赤い装飾を施された剣を構えていた時、校舎から出てきた義間先輩が俺へ手を振ってきた。


 剣を鞘に戻してから見返すと、こちらへ走ってくる。


「澄人、今、聖奈と朱芭の試合が終わった。もうそろそろだ」


「教えていただきありがとうございます……わざわざ、義間先輩が直接伝えに来てくれたんですか?」


 俺の目の前に来た義間先輩は、俺に何か用事があって来たようだ。


「澄人へ直接お礼を言いたかったからな」


「……? 大変すぎて文句しかないんじゃないですか?」


「文句はもちろんたくさんあったが……今日の対戦を見て、苦労以上の成果があったって実感できたんだ。だから……ありがとう、澄人」


 突然のお礼に驚いていると、義間先輩が俺の手を取り、力強く握りしめてくる。


 その後、少し照れくさそうにして口を開いた。


「それと……次の対戦が一番見たかった」


「そうなんですか?」


「例のジェイソン・ホワイト氏が草根高校に来ていたのに、映像でしか見られなかったからな……」


 世界ハンター会議の手伝いに駆り出されていたため、義間先輩は俺とジェイソンさんの戦いを生で見ていない。


 学校に残っていた生徒が感想を言うのを聞いて、悔しい思いをしたそうだ。


 知らなかったが、義間先輩はあのジェイソンさんのファンで、圧倒的な力を見せつける彼の姿に惹かれていたらしい。


 そんなジェイソンさんをさらに上回る力でねじ伏せた俺のことを尊敬していると言った時の義間先輩は、少年のように瞳を輝かせていた。


「そんなに楽しみにしてくれているなら、頑張らないといけませんね」


「あぁ、心から楽しみにしている」


 俺が笑顔で答えると、義間先輩も満面の笑みで答えてくれる。


「そろそろ行かないと。来賓の方へ挨拶をしてくる」


 そう言い残して、義間先輩は戻って行こうとする。


 最後に聞きたいことがあったので、呼び止めた。


「義間先輩、聖奈と朱芭さんのこ試合はどうなりました?」


「二人の試合は引き分けだった。刺し違えて両者ノックアウトさ」


 俺の質問に対して、義間先輩が振り返らずに答える。


 その表情は全くわからないけれど、声音から楽しんでいることが伝わってきた。


 それを聞いた俺は2人の無事を祈りつつ、競技場へ戻ることにした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は【本当に】未定です。

更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。

できるだけ明日からも頑張ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る